今回の釣行の同行者である中森先輩(仮)のスケジュールの都合でゴールデンウイーク後半という、渓流釣りをする日としてこの上なく悪いタイミングでの釣行となりました。
この釣りの同行者の中森くんは私に連れてこられて初めて渓流釣りを知ったにもかかわらず一投目から私より上手く、どんな環境でも私より確実に釣果を持ってくる憎き存在です(ニュージーランドでの悲劇)。
東北での釣り経験に乏しい私は、こちらに来れば魚がたくさん居るから腕の差は出ないと思い込んでいますが、そんなにうまくことが進むのでしょうか。
高速道路の速度上限が120キロになっていることに驚きつつ、花巻空港から閉伊川へと向かいます。
目次(スクロールします)
閉伊川上流松草駅近く
アクセス | 盛岡市から30分 |
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対象魚 | ヤマメ,イワナ |
遊漁券 | 年券:8,000円 日釣券:1,000円 現場売:2,000円 |
管轄漁協 | 閉伊川漁業協同組合 |
解禁 | 3月1日 |
入渓のしやすさ | ★★★★☆ |
歩きやすさ | ★★★☆☆ 危険では無いですが、河原が無いのでやや歩きにくかったです |
魚の量 | ★★★★★ |
魚のサイズ | 大きめのイワナが居たので尺イワナも狙えると思います |
道路から覗き込むと、とても平坦な川が流れていました。
夕暮れまで時間が無かったので、車内では
中森「軽く30分だけ釣って、うまいもん食べるか」
私「そうですね、ウェーダーも履かずにやりましょうか」
などと大人ぶっていたものの、川を見た途端に顔色を変えて目玉を飛び出させ、ヨダレを垂らしながら、どちらともなくそそくさとウェーダーを履いて準備万端で川に入る2人でした。
渓流釣り遠征時の初日の一投目は「とんでもない魚が釣れるんじゃないか」「俺だけ釣れないんじゃないか」など感情が入り乱れて緊張します。その結果、まだルアーを投げる前から糸が絡まっています。
ルアーを投げてもいないのに、どうして笹の葉にラインがからまっているのでしょうか?記憶がありません。
同行者の中森先輩もきっともたついているでしょう。
しゃがみこんでいる彼を見ると、なんとイワナを釣っています。
20センチくらいはありそうな、ずっしりしたイワナです。しかも彼はさも当然とでも言うように、記念すべき東北での一匹目を撮影することもなくリリースして涼しい顔をしています。
この野郎・・・。
初日にいきなり私だけボウズというわけには行きません。開始直後に極度の焦りが襲い、自分と川しか視界に入らなくなります。
彼よりどんどん先行する形でルアーを投げていると、魚が釣れていました。
中森「アタリわかった?」
私「アタリ・・・。全くわかりませんでした」
中森くんに先行して、釣り方を真似して、釣れたヤマメも顔を見るまで釣れていることに気づかなかった・・・。果たして自分で釣ったものと言えるのか怪しい釣果ですが、それでも私は大満足です。
川岸ギリギリにまで樹木が植わっている、西日本では珍しい雰囲気に惚れ惚れしつつ、川を後にしました。
初日は岩手県の三陸にある宮古市に宿泊しました。
宮古は近くに日本屈指の漁場と良港をそなえており、江戸時代前期に今の和歌山からカツオ一本釣り漁が伝わった時期から大変反映しました。江戸時代後期に財政難だった盛岡藩が献金を集めた際には盛岡藩全体のうちの約1/3の献金がこの宮古から集まったそう(「三陸海岸と浜街道」より)です。
宮古での初めての夜はそんな歴史や風土を感じることもなく、ただ渓流釣りと下ネタだけを肴にして過ぎていきました。
* * *
岩手釣行二日目は宮古市の北にある摂待川に入りました。
摂待川の中流域
アクセス | 盛岡市から2時間 |
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対象魚 | ヤマメ,イワナ |
遊漁券 | 年券:1,000円 日釣券:400円 |
管轄漁協 | 田老町河川漁業協同組合 |
入渓のしやすさ | ★★★★☆ |
歩きやすさ | ★★★★★ |
魚の量 | ★★★★★ |
魚の大きさ | 30センチクラスの魚も居るようです |
昨日入った閉伊川と違って河原があるので歩きやすく、空が開けていて散策するだけでも気持ちが良さそうな河川です。
私は車に忘れ物をしたので、同行者の中森くんに追いついてルアーを投げ込みます。ルアーを元気良く追いかけてくる魚は見かけるものの、なかなかルアーに食いつかせることが出来ません。
今日こそは一匹目を私が先に引きずり出すのだ!と意気込んでいると、
中森「まぁ俺さっき二匹釣ったけど」
と想定外の言葉を浴びせられました。
なんだと・・・。それなら顔を合わせた時に「さっき釣れたよ」と言ってくれても良いでは無いか。何事も無かったように過ごしていたのは私に対する配慮か、それともどちらが先に釣るのか競っているのは私だけなのか・・・。
「お互いまだ釣れてないよね」「俺たち、今の時間は一歩も譲らないライバル同士だよね」という雰囲気で話していたことに恥じ入りながら釣りを続けると、なんとかヤマメを一匹だけ釣り上げる事ができました。
毛針が背中に刺さっており、昨日に続いて「釣れた」と言えるのか怪しい状態ですが、気分は最高です。
気分良く釣り進んでいると、上流側に餌釣りをしているおじいちゃんがいます。おじいちゃんは遠くから見ても立派な(30センチほどありそうな)大きな魚をニコリともせず、まるでスーパーの買い物かごに食パンでも放り込むかのような無表情でタモに取り込んでいました。
どうやら大きな魚がいるようです。おじいちゃんが移動して来ないであろう上流まで移動します。
摂待川の中流域 畑地区集会施設
川床にはブナと思われる樹木が生い茂っていました。
さらに普段見かけない真っ白の石も目につきます。
石灰岩でしょうか。ここは貝やサンゴの殻が蓄積した海底だったのかもしれません(詳しくないのでよく知りませんが)。
魚の姿が普通に目に入るほど魚影が濃い河川なので、ムキになって釣りをすることなく樹木や石を愛でる余裕があります。
とは言え、うじゃうじゃ居る魚を無視し難いのもまた事実です。浮かせた毛針では釣れないので、毛針を沈めてみます。数人のフライマンに聞いたところ、毛針は浮かせるより沈めた方が「圧倒的に釣りやすい」とのことです。
餌釣りの要領で毛針を流すとヤマメが釣れました。
魚がいつ毛針に食いついたか、黄色い目印を見て判断がつきますでしょうか?
自慢ですが私には全くわからず、投げ直そうと竿を上げたら魚がぶら下がっていたという格好です。
タマタマであることは否定しがたい事実だとして、私にとってはなかなかの大物です。
しごく大事そうに魚を撮影していると、隣で同行者がイワナを釣っていました。
記念に並べたところ、同行者が釣り上げたイワナの方がふた回りくらい大きい・・・。
そう言えば、私はまだ岩手に来てからイワナを釣っていません。なんとかイワナを釣りたいと粘っていたところ、ようやくイワナが釣れました。
俺もやれば出来るじゃないか。
喜んでいたところ、隣ではやはり、もっと大きなイワナが釣られていました。
・・・。
魚を釣っていただくのは良いとして、いちいち私の隣で、私より立派な魚を釣るのをやめてもらえないでしょうか?せめて稚魚だったりカワムツだったりを釣る配慮を覚えて欲しいものです。
私がニートで自分は大手企業に勤めているから、自分の方が人間として上だと思っているのでしょうか?恐らくそうです。何かしら私の方が勝っている部分を探そうと思いましたが何一つ見つからず、みじめな想いを増幅させて次のポイントに移動します。
* * *
続いて、安家川支流の折壁川に移動します。
途中、ただならぬ気配を醸し出す民家に圧倒されます。
集落全体でテイストを統一しているわけではなく、どうやら全ていち個人の自宅と作業場のようでした。
安家川支流・折壁川
小さな滝が連続している場所に水中カメラを入れてみると、言葉通りヤマメとイワナが「無数に」群れています。
これだけの渓魚が群れているところを見たのは水族館以外では初めてです。
中森先輩なら確実に良い魚を釣ってくれるだろうと、動画を撮影させてもらったところ、狙い通りに釣ってくれました。
30センチほどのアメマスのようでした。安家川はダムが無いので海に下ったイワナも上ってくるのですね(シロザケやサクラマスものぼってくるとか)。
私も一緒になって釣り上げた気分で胸を張って動画をチェックしていましたが、そう言えば私はまだ何も安家川で釣っていません。先程の水中映像にはたくさんのヤマメやイワナが映っていたので、私でも釣り上げることはたやすいでしょう。
毛針を沈めて狙ってみますが、なかなか魚が食いついてくれません(もしくは食いついたことがわからない)。ようやく目印が横に動いたのでアワせてみると!
7センチほどの小さなヤマメでした。
あれほど大量に魚が居るのに、その中で最小サイズを釣り上げてしまうというのは、どういう神の仕打ちなのでしょうか。前世で延暦寺でも焼き討ちにしたのかもしれません。ということは前世は信長・・・ではなくその配下で乱暴狼藉すら働かせてもらえない足軽だったことでしょう。
陽が落ちてきたので釣りを終えて宿まで移動します。
ちなみに私と中森先輩はどちらも釣りは大好きですが車の運転は嫌いでお互いに押し付ける傾向があります。ここから宿までの1時間、どちらが運転するのか・・・。お互い無言のままで道具を片付けていると同行者がぼそっと
「俺さっき運転したよな・・・」
と、私に絶妙に届く声量でつぶやいて来ました。
私の大学時代の1年先輩であり、この日も私に釣り方を教えてくれた釣り師匠でありながら後輩に気を遣って「運転お願い」と言えない繊細さに何も言い返せず、私の運転で宿まで移動していきました。