安家川と漁協が無い河川で釣りを堪能した我々は、葛巻から丹藤川へと向かいました。
聖書のことばが青い空をバックにまぶしく飛び込んできます。
黒背景のこの看板を田舎の大通りでよく見かけますが、これは宮城県に本部が有る「聖書配布協力会」という団体が、家主にお願いして無料で設置しているものだそうで、家主の希望で言葉が選択されたりすることもあるのだとか。
とすれば、「死の道と命の道がある」を選んだ家主には何があったのでしょうか。
我々はこの道こそ命の道であることを願いながら、丹藤川へと向かいます。
目次(スクロールします)
岩手県岩手郡を流れる丹藤川
アクセス | 岩手県盛岡市から1時間 |
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対象魚 | ヤマメ,イワナ |
遊漁券 | 年券:6,100円 日釣券:700円 |
管轄漁協 | 上北上川漁協 0195-65-2076 |
入渓のしやすさ | ★★★★☆ |
歩きやすさ | ★★★★☆ ところどころ河原が無いところがありましたが、道路が近いので危険ではありません |
魚の量 | ★★★★☆ |
岩手県岩手郡岩手町という岩手をみっちり集めたような場所に着いて釣りの用意をしていると、「朝起きて3時間は目の調子が悪くて運転できない」と言っていた同行者の中森くんが助手席で
中森「アリがいる!車にアリがいる!」
と騒いでいます。目の調子が悪いのにアリは見える事実に驚いていると
中森「アリおらん!さっきまで居たアリがおらんくなった・・・。アリ?」
とつぶやいています。彼の表情などを観察したところ、どうやらダジャレでは無く「あれ?」が素直に「アリ?」になってしまったようです。
撮影中にルアーを投げ損なってしまい、照れてカメラに軽く笑って見せる釣り自意識過剰なYouTuberのように、一人で照れて笑っている同行者を無視して、さっさと川に降りていきます。
* * *
ルアーを投げてみると一投目から魚の反応が有りました。やはり岩手県の川はどこへ行ってもアタリくじのようです。
気分良く釣り上がって行きますが、その後一気に魚の反応がなくなりました。
普段の私であれば2時間くらいカワムツしか見なくても何の驚きもありませんが、昨日まで滞在していた楽園との落差と連日釣り続きと寝不足(昨日は7時間半も寝ましたが)で足が重くなってきました。
魚の気配は消えてしまいましたが、中森先輩は「魚が一度ルアーにあたった気がする」と言っていますし、流れがゆるいところには4センチほどのヤマメらしき魚の稚魚も見えたので、きっとヤマメが居るのでしょう。
しかし無理やり作り出した妄想を維持していくだけの材料が乏しくなると、どんどん不機嫌になり
「誰だよこんな川をチョイスしたのは!」
「言わんこっちゃない。酒を持ってくるべきだった!」
と一人で同行者に八つ当たりを始めてしまいます。
うつむいて歩いていると、二枚貝が川底に張り付いていました。
恐らくカワシンジュガイでは無いでしょうか。カワシンジュガイの幼生はヤマメやアマゴなどの鰓に寄生することによってしか成長しないので、それらの魚が居ない河川には棲息しません。
従って、カワシンジュガイが居るということは、ヤマメが居るということです。
そしてその後、太陽が顔を出したあたりから急に魚の反応が出てきたようで、中森先輩が何匹かのヤマメを釣りだしました。
彼の「魚の反応が良くなってきたな」という言葉に対して「そう、ですね・・・」
と力なく答えましたが、私は一投目にルアーを追ってきた魚を見て以来、ルアーを追いかけてきた魚すら見ていません。
その後も同行者はカツオの一本釣りのようにポンポンとヤマメを釣りあげています。
そして私に気を遣ったのでしょうか、電波の入らない川の真ん中でスマホをいじっているようです。
一方的に私だけが魚に触れていないという、またしてもこの展開です。もう何回目になるでしょうか。
焦りで手が震えてラインが絡まる、ようやく直ったと思ったらルアーを木に引っ掛ける、岩で滑ってこけそうになる・・・。
三拍子揃ったミスの後でようやく魚がルアーに掛かりましたが、それもバラしてしまってもはや半泣きになって来た頃には同行者も私に声をかけなくなってきました。
さらに疲れも重なって、釣りをしながら眠くなって来ました。
一人で車に戻って寝ようかと思いましたが、いやちょっと待てよ。これでは、自分だけ釣れないと2時間で死んだニゴイの目になる大分の武藤王子と同じです。
ブツブツとあらゆる人物や事象にまで見境なく文句を言いながらルアーを投げれていると、ようやく魚が釣れました。
この日最初に釣れた魚だったので大はしゃぎしており、同行者からも「尺あるんじゃない?」などとイジられています。
その後調子に乗って毛針釣りに変えてみたところ、イワナも釣れました。
以前、木に引っかかった毛針を外そうとして、意図せず激しく毛針で水面を叩いたところ、それをきっかけに大きなイワナが飛び出してくるということがありました。
水面に浮かんでいる毛針に気づいていない魚が居るかもしれないと、竿先で水面を叩いてみたところ今回ばかりはうまく行ったようです。
朝から竿を振り続けて二匹釣っただけなのに、童貞を遂に喪失した大学生のように大喜びです。
そう言えば同行者はヤマメを6~7匹ほど釣り上げましたが、まだイワナは釣っていないようです。
そんな彼に対して
「まだイワナ釣ってないの?」
「イワナ釣らないと岩手に来た意味ないでしょ?」
などと挑発する、高校生レベルの私でした。
* * *
その日の夜、翌日の岩手釣行をどのように過ごすのか、釣り好きの中の釣り好きである中森先輩と安い酒を飲みながら打ち合わせを行います。
私が「最終日は釣りをせずに観光でも・・・」と言い終わらないうちに
中森「あり得んわ!」
と叫ぶ始末で、同好者の相当釣りへの意欲は依然として下がっていないようです。しかし翌日、目指している閉伊川上流の天気予報を見ると朝方にはなんと気温が氷点下3度まで下がる予報になっています。朝方の気温が低ければ、朝一番で川に入っても釣果はまず見込めないでしょう。これで早起きは免れられる。
かと思いましたが、戦を前にした隣の釣り侍はその膨大なデータに基づいた最新の予報に対して
「そんなはずない。嘘や!」
という、かつての大戦における日本軍の司令部のようなことを言い出しました。事実と願望に距離がある時に、力づくで事実を願望の方に擦り寄せていくというガダルカナル敵思考を前に、こちら一兵卒はなすすべもありません。
一兵卒の9時までゆっくり睡眠プランはあっけなく退けられ、あえなく朝7時出発で戦場へと駆り出されていきました。
予報では氷点下だったはずですが、朝はそれほど寒くもありませんでした。神風が吹いたのでしょうか。
閉伊川
アクセス | 盛岡市から30分 |
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対象魚 | ヤマメ,イワナ |
遊漁券 | 年券:8,000円 日釣券:1,000円 |
管轄漁協 | 閉伊川漁業協同組合 |
入渓のしやすさ | ★★★★★ |
歩きやすさ | ★★☆☆☆ 水の勢いが強いのでやや歩きにくかったです |
魚の量 | ★★★☆☆ |
岩手に来た初日に入った閉伊川の松草駅周辺より少し下流に来ただけですが、多くの支流の合流点より下流なので水の勢いが激しいです。
流れが非常に強いので歩きにくい上に、釣るのが難しい川です。魚の姿じこそ見つけられますが、ルアーに食いつかせることが出来ません。毛針を浮かしても沈めても全然ダメです。
一方、中森先輩の方はいつもどおりに魚をコンスタントに釣りだしました。私も彼の釣り方のマネをして最終日のボウズを逃れたいとルアーロッドを持ち出した上で釣れた方法を聞いてみると、
「キラキラ光らないスプーンが良い」
とのこと。私も同じルアーを投げれば、同じように釣れるはずです。
黒の光らないスプーンを投げてみると・・・全く反応がありません。
そして私のやや下流では、私に場所を譲ってくれた同行者が同じ場所で繰り返しルアーを投げ続けています。
彼は何度もルアーを通したポイントで魚を狙うことで、釣果ではなく技術の向上を目指している様子です。さすがにそう何回も投げたところで魚が釣れないだろう・・・。そう思っていると、彼のロッドがそれまでよりも勢いよく曲がっています。
釣り上げられたヤマメの口元を見てみると・・・。
黒いスプーンを私に勧めておきながら、こっそり光るスプーンで魚を釣り上げてしまうとは、見上げた根性です。彼が釣り上げたのは魚だけでなく、私でした。魚は大物、こちらは小物。ダブルヒットです。
結局私はかろうじてイワナ一匹を釣り上げただけで、レンタカーの時間が迫ってきたので釣りを終了し、東北での釣りを終了しました。
岩手県での5日間の釣りを通して終始同行者にバカにされ続けた形にこそなりましたが、河川はどこも魚影が濃く、楽しい時間を過ごす事ができました。今回はハンデとして片目をつむって釣りをしていたので、次回は両目を使ってやりたいと思います。
2016年に岩手の花巻からスタートして渓流を行脚したときのブログ記事はこちらです。私にしては大きなイワナを釣り上げた記憶もあります。
岩手釣行で使用した主なタックル
【ロッド】バス用の安いルアー竿
【リール】2000番のリール
【ライン】PEライン0.6号(無くても大丈夫です)
【ライン(リーダー)】8ポンドのナイロンライン
【ルアー①】シルバークリークミノー50シンキング
【ルアー②】スプーン・pure3.5g
【ルアー③】スプーン・D-Sライン5g