岩手県安家川と無漁協河川でヤマメ・イワナ渓流釣り【22年岩手②】

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前日までに閉伊川と接待川で魚を釣った我々は、この日は朝から漁協が管轄していない河川に向かいます。

どちらも運転が嫌いな私と同行者の中森先輩(仮)のどちらが運転するのか・・・交渉方法を考えながら宿から車に向かうと、すでに彼は初めてのドライブの時の可愛い彼女のようにちょこんと助手席に座っています。理由を尋ねると

「起きて3時間は目の調子が悪いんよね・・・」

だそうです。起きた直後でも魚を釣り上げるのに運転は出来ないという駄々っ子を乗せて川に向かいます。

* * *

川は閉伊川や安家川とは異なり、落差が有る渓相です。木が張り出しているのでルアーや餌釣りは難しそうですが、のべ竿と短いラインを使った私が愛用するちょうちん毛針釣り向きの川です。

※漁協による放流が無い河川なのでポイントは有料記事に記載しています

中森くんから少し離れたポイントに入った私は、鼻息荒く毛針を浮かべていきます。すると開始早々にヤマメが釣れました。

 

かなり立派なヤマメです。恐らく尺ヤマメでしょう。

魚の大きさが何センチとか何匹釣ったとか、そんなことに囚われるのは釣りを楽しむ邪魔になるので数字は持ち出さないのが賢明だと思っています。

しかし山に入ると全く賢明では無い私は(では平地では賢明かと言えばそれも違います)コソコソとバッグからメジャーを持ち出して計測してみると・・・。

25センチしかありませんでした。

「いや、長さではなく引きの強さだよな」

と数値が届かなかった分を感覚的な部分でカバーしようとする、クレバーな私なのでした。

 

* * *

 

そこから短時間のうちにさらにヤマメとイワナを釣り上げたところを見ると、この河川は漁協が無い河川とは思えないほど魚影が濃いことに気づきます。これは過去最高の釣果を得られるかもしれないと気合を入れ直していると、同行者のカバンに付いている鈴の音が聞こえて車が駐車されている位置で止まりました。

まだ釣り終了の11時になっていないのに、中森くんが車に戻っているようです。どうしたのか聞いてみると、

「川幅が狭いのでルアーではやりにくいから車で休んでる」

とのこと。なんと家でキャスト練習を繰り返すほど釣り好きの男が、自分の好みの川では無いという理由から、不機嫌で男をコントロールしようとする彼女のように不貞腐れているではないですか。

さすがに不憫になり場所移動も考えましたが、これほど魚が釣りやすい環境をむざむざ見捨てられず、メンヘラ彼女は無視して釣りを継続することにしました。

 

* * *

 

川に戻ると、大きなイワナが上流に頭を向けて餌を待ってくれています。

警戒心が強い河川ではうしろから近づいただけで逃げられますが、この川の魚はそういった機微を備えていないようです。

イワナの姿を確認しながら頭上に毛針を浮かべると、何のためらいもなく毛針を丸呑みにしてくれました。狙い通りに釣れたと思いましたが私のアワセが悪かったようで、バタバタ暴れまわった直後に毛針から外れてしまいました。

・・・。

・・・?!

通常、針に一度触れた渓流魚は警戒して深いところに隠れてしまうものですが、なんとこのイワナは針に触れただけでなくしっかり針に掛かって大暴れしたにも関わらず、毎朝必ず同じ椅子に吸い寄せられるお父さんのように元のポジションに陣取り始めました。

そしてまた先程と同じように毛針を浮かべてみました。

なんと、釣れてしまいました。

人間に例えるなら、アルミホイルを噛んで歯が「イ~!!!!」となる痛みがまだ新鮮なうちに、もう一度わざわざアルミホイルを噛み締めに行くような感じでしょうか。

タイミングが良かっただけかもしれませんが、この川では釣るための方法ではなく、釣りたい方法を選ぶ権利が与えられている感覚すらあります。ここのイワナは繊細さのかけらも無く、警戒心の水準で言えばブルーギル程度でしょうか。ここで渓流釣りを始めなくて良かったと心底思いながら、車に戻ります。

※漁協による放流が無い河川なのでポイントは有料記事に記載しています

* * *

 

前日に多くのヤマメとイワナを見た安家川に向かいます。

 

安家川

先程の河川でまだ一匹も釣ってない先輩は焦っているようで、車から降りるとまるで倶利伽羅峠の戦いで斜面を猛然と突き進んだ牛のように垂直に斜面を駆け下り、敵将の首を狙う侍のような勢いで竿を振っています。

私は渓流侍の邪魔をしないように、川沿いの流れが弱いところで稚魚を見て楽しみます。

安家川 ヤマメの稚魚
稚魚の魚影も濃かったです

 

心に余裕があると釣りもうまく行くのでしょうか、ルアーを投げると苦労すること無くヤマメを釣り上げることが出来ました。

 

安家川ヤマメ・イワナ釣り

安家川は確かつり人社の雑誌で「原生林が残る奇跡的に透明度が高い河川」として紹介されていた記憶があります。透明度についてはこの日はそれほど高いとは思いませんでしたが、渓流釣りには非常に良い河川のようです。

一方の渓流侍はどうでしょうか。相変わらず剣道の稽古のように竿を賢明に振り下ろしているのでしょうか。

本日まだ魚を釣れていないという焦りと、下流から迫ってくる私の気配で手が震えてミスキャストをしていることでしょう。ラインが笹に絡まってイラついているかもしれません。ああ楽しい!友人の不幸に胸を高鳴らせ、より焦らせるために熊よけの鈴を手で振りながら近づくと、彼は川沿いでタバコをふかしています。

まさかと足元を見ると、大きなイワナが横たわっていました。

 

安家川ヤマメ・イワナ釣り

 

・・・。

初日から、いや彼を渓流に誘った5年ほど前からそうなのですが、なぜいちいち私よりも良い魚を釣るのでしょうか?私の感情に配慮して、イワナを半分に切っておいたり、握りつぶして小さくした上で見せてくれる心遣いが宿っていないのでしょうか。

それからは魚の反応が無くなってしまったので、早めに宿がある葛巻町に向かいます。

 

* * *

 

安家川上流から馬淵川源流を抜けて葛巻町に向かう未舗装の道路を抜けて分水嶺を越えると、ぐっと気温が下がっていました。後で知ったことですが岩手県を南北に貫く北上高地は西側と東側で気温差があり、葛巻町はその東の町(名前失念)より平均で3度も気温が低いそうです。

葛巻町
放牧が盛んな葛巻町

 

その寒さと平地が少ない地形が農耕に適さないことを見抜き、この地を切り開いた人々は畜産に活路を見出したのだそうです。牧草地を見て北海道に来たかのような感覚を覚えつつ、ふれあい宿舎グリーンテージという宿に到着しました。

宿に併設されているレストランで食事を摂ります。

中森先輩はメニューを見ながら、「肉の量が少ないな」と実物が来る前から文句を言う大食いっぷりを発揮していましたが、実際にはたくさん盛られいるのを見届けてニコニコと満足そうです。

 

ふれあい宿舎グリーンテージ肉の下に肉が隠されています

 

彼は研究職というややこしい仕事を離れている間、前身の全ての神経を釣りに向けている男なので、食事中もどこか遠くの世界に意識を飛ばしているような顔をしています。そんな彼が自分の食事が乗せられたお盆を虚ろな目で見ながら

中森「あ、さっきまであったにんじんが無い。ということは、俺が食べたってことやな・・・。」

とつぶやいています。

・・・?!

何ということでしょうか。

井上陽水の歌『ジェラシー』の中で

”はまゆりが咲いているところを見ると どうやら僕等は海に来ているらしい”

という一節があります。はまゆりという外形的な情報から自分の居場所を逆算して見せた作者の発想は卓越していますが、にんじんの有無から自分の過去の行動を推察するということは、もはや3歳児以下の知能では無いでしょうか。

あれほど水中での魚の摂餌行動に注意を払っているのに、自分の摂餌行動の方は観察しきれていないようです。彼が食事をしている間、食べ物を誤って鼻に入れたり、口角から味噌汁を垂れ流したりしないか注意してあげる必要があるのかもしれません。

翌日は岩手町を流れる丹藤川に入りました。

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