【椎葉の小屋場谷ヤマメ渓流釣り】適当に川に入った結果の、天国と地獄


前日に耳川本流で大きくも美しくもないヤマメを釣った私は、その夜、宿で食事を共にした釣り人から小屋場谷を教わりました。(前日についての記録はこちら)彼は朝8時半頃に釣り場に向かい、誰かが先に釣った後で糸を垂らし、毎日数十匹のヤマメを持ち帰ってくる手練だそうで、宿のご主人いわく「この宿一番の釣り名人」なのだそう。

名人「小屋場谷は良い川ですよ。でも道路から川までかなり高さがあるから、川に降りるときと道路に上がるときに、苦労するかもね」

私「体力には全く自身がありません。大丈夫でしょうか?」

私の釣り場は釣りマップでも公開していますが、誰にでも入れる、平坦かつ安全な場所でしか釣りをしたことがありません。朝5時に起きてるのにわざわざ8時半頃に出かけるという習性からも見て取れるように、明らかに一風変わったところがあるのもまた事実。私は彼の発言に従うべきか、少し心配になります。

名人「大丈夫大丈夫、若いんだから!」

まぁなんとかなるよ、くくく・・・。

と怪しく微笑んだりはしませんでしたが、名人の焼酎が先程からハイペースで減り続けていることが引っかかりながらも、言われるままに小屋場谷に入ります。

 

耳川支流・小屋場谷より

 

名人「大きな木が三本右に見えたら、そこで車を停めるんだ」

私「わかりました!」

昨晩、入渓する位置をしっかり教わったつもりでしたが、左手にビールを握った私の脳は肝心なことを押さえていません。山に入ってしまえば見渡す限り樹木しか無く、どれが大きくてどれが小さい木なのか全くわからず、私は当てずっぽうに川に入ります。

(この判断が後に私を恐怖に陥れることになります。)

 

平坦な川です耳川小屋場谷ヤマメ渓流釣り

 

キレイなヤマメが釣れました耳川小屋場谷ヤマメ渓流釣り

 

「小屋場谷の魚は、とても美しいよ」

焼酎で顔が少し赤くなっていた名人ですが、その言葉は嘘ではありませんでした。

 

きめ細かい肌のヤマメ
耳川小屋場谷ヤマメ渓流釣り

 

ピンク色の帯が入っていますが、秋にはまっ赤になるそうです。

 

 

つるつるのヤマメ

 

テンポ良く釣れるヤマメに気を良くして忘れていましたが、いくつか不安なことが頭をよぎります。昨晩名人は、

「堰堤を3つ越えたところで、川から道路に登れるよ」

と言っていましたが、私はすでに5つほど堰堤を越えてきています。川に降りる場所を間違えたのか、名人が言っていたことが間違えていたのか・・・。

 

また、3つの堰堤は「楽に越えられる」と彼は言っていましたが、今、目の前に迫る堰堤は左から巻いても右から巻いても、私のような平地専門の釣り人には簡単に登れるようには見えません。

なんとか一つ、その堰堤を越えてみると、さらに大きな堰堤が出てきました。もちろんここから車を止めている林道に出ようにも、川から林道まではかなり高さと角度があり、登ることはできません。

また、斜面は登ることより降りる方が何倍もやっかいになるため、先程登ってきた全てを降りる自信は全くありません。登るしかないのです。

 

最初はこれくらいの、低い堰堤だったのですが・・・

 

「いつになれば道路への道が見つかるのだろう」

さらに、もう一つの異変に気が付きました。体に力が入らず、軽い目まいと吐き気がある上に少し腹痛もあるようです。それほど暑さは感じないし、水も飲んでいるのですが、しばらくすると竿を出したりカメラを構える気力も無くなっていました。

笑うと体に良いと聞いたことがあるので試しに笑顔になってみました。

「ワハハ、あはは・・・。」

何の効果もありません。一人で笑った恥ずかしさを噛みしめるしかありません。

「一休みしよう」

電波は入らないので道を確認したり誰かに助けを呼ぶことも出来ず、このまま自力で川から脱出出来ない可能性も視野に入り始めました。但し、時期は7月の猛暑で夜でも凍死する可能性は低く、行き先を宿も名人も知っているので1日帰らなければ捜索隊が出動してくださると思われるので、遭難死は考えにくいでしょう。

 

そうなると心配事は「レスキューがやってきたときに、どんな顔で彼らを迎えるか」という一点です。地図も持たずに自ら遭難しに行ったようなアホなおっさんを救助しに来た地元の消防団の好青年たちは、

「大丈夫ですか」

と一応、うやうやしく迎えにきてくれるでしょう。それに対して私は

「やぁ、この暑い中、どうも」

と言うわけにはいきません。かといって、奇跡の生還を涙で表現できるほどの演技力もなく、川から村に連れ戻される間の車中、大変気まずいものになるでしょう。いっそ居直り遭難ということで

「夜通し釣り続けてただけですけど、何か?」

と宣言する案も提出されましたが、当然のように採用は見送られました。

 

写真が無いので、とりあえずチョウチョ

 

「捜索隊との気まずい空気に、俺は耐えられない」

ひと通り空想した結果、私に妙な力がみなぎって来ました。川の水をがぶ飲みし、目の前に迫るおよそ断崖絶壁(に私には見えた)につかみかかりました。しばらくこのルートを人は登っていないのか、岩の上には土と苔が覆いかぶさり、つかんだ岩はボロボロと崩れます。

気まずさプレッシャーに後押しされた不屈の私はそんな堰堤を2つ高巻きすると、道路に上がるための道のようなものが見えてきました。

「良かった・・・」

きっと沢登りに慣れている人からすれば大したものではなかったのでしょうが、もともと運動神経が鈍く、ビビリで、沢登りとか冒険という要素が微塵もない無い私としては二度と同じルートには入るまいと思いました。但し、名人の言ったとおりの正しいところから入渓していればそれほど苦労することはなかったと思われるので、沢登りに慣れている方以外は、このあたりから入られると良いと思います。

「3本の大きな木」と駐車スペースから入渓し、川に道路が近づいているところから登るルートが安全で良いかと思います。

癒やしの里に入るにも、緊張感が必要ですね。

【続き】耳川支流不土野川で大ヤマメの夢を見ました

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