前日は福岡と大分の県境にある漁協が無い河川でアマゴを釣り上げた我々は、大分にあるダム湖にバス釣りに向かいました。
幸いにも釣り場に先行者はおらず、武藤くん(仮)と二人で好きなポイントで釣ることが出来ます。
同行者と少し離れた距離感でルアーを投げ続けますが、魚の反応が全くありません。1時間ほどが経った頃、視界の端くらいに見え隠れしていた友人の動きが慌ただしくなりました。どうやらブラックバスを釣り上げたようです。
近づいて話を聞いてみると、浅いところにスピナーベイトを投げていたところ30センチほどのバスが釣れたとのこと。
彼の釣り方をそのまま真似するのは癪なので、敢えてワームを付けて沈めてみます。
こちらの方法でより大きな魚を釣り上げて精神的に大逆転・・・と考えていたところ、またしても遠くの方で何かがソワソワしてるのが目に入ります。
どうやら彼がまたしてもバスを釣った様子です。私はまだ釣れていないのに2匹も釣りやがって・・・。むしゃくしゃした気持ちを隠しきれず、彼が釣り上げたことに気付かないふりをしていましたが、今度はスマホを手にもってこちらをジロジロと見ているようです。
「スマホで写真を送ったから見て見て見て」
と言わんばかり。
無視し続けるのにも疲れてスマホを見てやると、LINEで大きなバスの写真が送られてきていました。
心を無にして「で→か→い→ね」と4つの平仮名が表示されるように指先だけを素早く動かし、釣りを再開します。
俺なら釣れていないフリをしたり、小さかったフリをするのに気のきかない奴です。
その後ランチで合流したときに「二匹も釣り上げて上手いね」と言うと
「たまたまよ~」
と言いながら、弱冠彼の小鼻が膨らんだことを見逃さない、心が小さなニートさんでした。
* * *
昼食を取って気分も一新し、私にも釣れるような気がします。
まだ釣っていないどころか魚の反応すら得ていない私がどんどん先行させてもらい、ルアーを投げます。「武藤くんのマネだけはすまい」という意地も投げ出して、スピナーベイトに最も近そうなスプーンを投げていきます。
しかしスプーンには何の反応も無く、どうしようかと頭を上げてみると、またしても遠くの方から気配を感じます。どうやらまた友人が大きなバスを持っているようです。
声を出しても絶対に届かないくらいの距離にいるので私が気付かないことも出来たはずなのに、私は何故、毎回気付いてしまうのでしょうか?
釣りをしている間もほとんど視界に居ないのに、釣れたときだけわざわざ俺の視界に入ってきていないか?
その後大満足の表情の武藤くんと合流すると、
「疲れたので車で休憩してくる」
と余裕の勝利宣言を発表して来ました。私はこの時点で魚の反応すら感じておらず、意地を張っている余裕はありません。彼の休憩に便乗して、彼が使ってバスを3匹釣り上げた道具を全て巻き上げることに成功しました。
* * *
釣るための環境は整い、全て言い訳の材料は取り払われました。もう逃げ場はありません。
彼が釣ったのは全てスピナーベイトをゆっくり巻くという方法だったので、それを恥も外聞もなくコピーします。
これで釣れると確信していましたが、いつの間にか5人連れの釣りグループが現れ、私の横でルアーを投げ始めました。しかもその中で最も熱心に釣りをしている兄ちゃんが、私と同じようにスピナーベイトを投げてゆっくり巻いています。
他のルアーに変えてくれないか・・・と見つめますが、彼もスピナーベイト以外にルアーを持っていないかのようにこだわっています。
彼と二人でほぼ漆黒の闇に包まれるまでルアーを投げ続けましたが、彼も私も魚を釣り上げることは出来ませんでした。
そしてあまりに外が暗くなっても車まで私が戻らなかったので、同行者からは
「生きてる?」
というメッセージが来ていましたが、人には物理的に釣りが出来ないような環境になってもルアーを投じ続けなければならない夜があるものだということを、彼ならばわかってくれるでしょう。
昨日は武藤くんの人格の至らなさばかりを列記しましたが、この日で私も大差無いことがはっきりいたしました。これから二人で頑固爺への道を邁進したいと思います。