前々日の芸姑さんを交えたパーティーでの悪夢を振り払うべく、この日も伊豆の漁協が無い河川に駆け込みます。
昨日訪れた生命感の無い河川と違い、ここには魚が居そうな気がします。
まずはヤマメが居るのか居ないのかを確認したいところですが、いきなり水中カメラで確認をするのも風情に欠けると意地を張り、まずは毛針を浮かせてみます。
しかし、ヤマメが居れば見ているだろうと思うポイントに毛針を何度流しても魚の反応はありません。
関西から伊豆への遠征も今日で終わりです。今日何も釣れなければ、昨日幸せな空間を自ら放り出して川に突撃してしまった理由をいよいよ見いだせなくなり、残りの半生をただ後悔して過ごすことになるでしょう。
毛針に反応が無いので、すかさずルアーを放り込みます。スケジュールの計画性だけでなく、釣り方においても節操が不足しています。
ロッドは昨年まで使っていたものを失くしてしまった(折れたのではなく)ので、新しく導入したツリモンを試します。
半年ぶりのルアーキャストで手元の具合が定まらず、岩にルアーをガンガンぶつけてしまいます。そして岩でこすれたルアーは今の私のように冴えない顔をして、やもめのままで元気無く戻ってきます。
毛針竿を持って、ルアー竿を持って、また毛針竿を持って。それでも魚の反応が得られないので、ついに水中カメラを使います。
岩に這いつくばるようにカメラを入れていると、その先で魚が泳ぐのが見えました。姿ははっきり見えませんでしたが、その動きはヤマメであることを影だけで伝えるだけのオーラを映し込んでいました。
カメラに魚が映るということは、魚が岩に隠れている状態ではなく、積極的に餌を追っているはずです。カメラをのべ竿に持ち替えると、まるでそうなることが事前に決められていたかのように、1発でヤマメが釣れました。
失敗の多い人生でしたが、予想が見事に当たることもあるのです。
完全に今の状況を理解しました。ヤマメが岩陰に隠れている時間帯は何をしても釣れませんが、これだけ外に出ているということは、餌に対して積極的になっている状態なので、何をやっても釣れるはずです。従って、どう釣るかではなく、釣りたい方法を選べば良いのです。
私は毛針に勢いよく飛び出してくるヤマメも好きですが、熟年カップルがそっと手をつなぐかのように毛針を食べに来るヤマメが、最もこの景観を壊さないと思います。
今度はヤマメがそっと毛針を食べられるように、毛針をゆっくり流していきます。
・・・。
もう一度。
・・・。
釣れません。
美学についてカマしていた30分前の自分を恥じ入ることもなく、もはや何でも良いから釣れてくれと毛針を変え、流し方を変え、やはり最終的にはまたルアーまで動員してバタバタしたあげく、結局2匹目を釣ることは出来ませんでした。
* * *
レンタカーの返却時間が迫っていたので川から上って歩いていると、デコポンらしき柑橘類が足元に転がっていました。
地面にころがっているものを割って、一つ口に入れてみます。
普段食べているみかんと比べると酸味と渋みが多いことに驚き「青空の下で食べれば何でも美味い」の法則がゆらぎます。
「俺は過去の決定に引きずられない」
そう言い張っていた男は、うっかり開けてしまったみかんを義務感だけで完食し、その後にはただ渋みだけが口に残っていました。
現地で使った毛針タックル
【竿】ダイワリバティクラブ 5.3メートル
実売価格は5,000円~8,000円程度です。安いですが全く問題なく使えます。
【ライン】実売400円の安いライン0.8号
【毛針】サイズは14番くらいを使っています
チョウチン毛針釣りの方法と道具についてはこちらでまとめています。
チョウチン毛針釣りは簡単な道具と動作で楽しめるので、ルアー、フライ、テンカラなどで行き詰まった私のような釣り人にもってこいの方法です。