陸っぱりからのビワマス釣り【2022年12月①】

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河川でのビワマス釣りが解禁になる12月1日に合わせて、滋賀県に入りました。スケジュールを3日間確保していたものの1,2日目は濁りが強すぎて釣りにならず、雨に打たれながら竿を持って虚しく散歩するだけで2日間は過ぎて行きました。

ビワマスは雨に伴う増水に合わせて琵琶湖から群れで川を遡上してくるため、3日目はたくさんのビワマスに会えるでしょう。

 

* * *

 

3日目の朝に滋賀北部の河川に入りました。昨日までの雨で水は増えていますがまだ濁りが入っている影響か、全くビワマスの姿が見えません。

釣りをするでもなく川をのぞきこんでみると、いかにも「釣りに人生を捧げています」という雰囲気の若い男性に声をかけられました。ビワマス釣り初挑戦の彼がどんな情報を頼りにここに来ているのか尋ねてみると、なんと私が昨年書いたビワマスの釣りポイントについての有料記事を見てこのポイントにたどり着いたのだとか。

私もビワマスを釣った実績は一度しか無いのですが、ぼったくり有料記事を売りつけた罪悪感に背中を押されてビワマス釣りについてご丁寧に説明して差し上げたものの、話を進めるうちにどうやら彼は名うてのトラウトルアーマンで、私が釣ったことがないようなサツキマス、本流アマゴ、巨大ニジマスまで目眩がするような釣り実績を持っているということが発覚してきました。

彼が釣っているサツキマスやダム遡上のアマゴとビワマスの間に習性の違いはほとんど無いと思われるので、私が撒き散らしたビワマスうんちく演説会は無意味どころか有害な時間であったことに自ら気付いてしまいました。

私が彼に対してビワマス釣りを教える立場として振り上げてしまった拳を、ゆっくりゆっくりとチョキにすることでなんとか誤魔化し、私が彼に教えてもらう立場に移行することに成功しました。

ルアーで遡上したトラウトを釣る方法について彼から一通り伝授を受けると、彼はこの濁りが強い川とは別の河川に移動すると言い始めました。

「一緒にどうですか」とお誘い頂きましたが、私が彼のような釣り上手と一緒に過ごすと、どのような想いを味わうか瞬間的に想像出来たので、何か深い意図があるかのような顔をして彼の行き先とは別の川に向かいます。

私が到着した川は透明度が高くビワマスが居ればすぐに発見出来そうな状態でしたが、ビワマスの姿はほとんど見えませんでした。

別の川に入っている彼の方も私と同様、きっと苦労していることでしょう。「魚、居ないですね」と連絡をしたところ

「2匹釣りました!」

というまさかの角度からカウンターパンチが浴びせられました。広島から6時間運転をした後、一睡もしていない状態でもう2匹も釣ったのか?

「やりましたね!」

とメッセージを送ったものの、私の醜い指先は大きく震えています。この私を差し置いて、なんてやつだ。

情報商材を販売した側の人間がボウズで、購入した側である彼だけが釣るなどということがあって良いのでしょうか?

私は彼の釣果に追いつこうと最もビワマスの密度が濃い河川へと移動すると、そこにはたくさんのビワマスの姿がありました。

 

これだけ魚が居れば、さすがの私でも釣れるでしょう。

ミノーを流してみると、竿先に重たい何かがもたれかかってきました。雑巾でも引っ掛けたかと思いましたが、ビクビクと魚が動いています。

やったぞ彼!釣り歴20年の釣りブロガーもやる時はやるのだと意気込みながら引き上げてきた魚の姿を見て唖然としました。

 

 

ルアーを食わせたのではなく、体に引っかかってしまっただけのようです。私のような倫理観の無い人間でも、これをさすがに喜べず、そっと川へとお返ししました。

その後も2匹、誤って体に引っ掛けてしまうという事件が起きたことに加えて、懺悔したいことがございます。なんとこの愚かなニートは「間違えてビワマスの体に針が引っかかったのではなく、見事ルアーを食わせたことに出来ないか」と考え、なんとルアーの針を外した状態でビワマスを撮影していたのです。

 

証拠を隠滅して撮影されたビワマス

 

この写真をもって「狙い通り釣り上げた、釣りが上手な俺」という嘘をねじ上げ、彼に対抗しようとしちゃってたんだな。

そんなときに彼からLINEで右ストレートが入りました。

「結局4匹釣り上げました」

釣りすぎだろ。

ビワマス初チャレンジで、しかもそんなに遡上が多い日でも無いのに4匹も釣り上げるか?私はテストでクラスの最低点を叩き出してしまった小学生のような気持ちで釣りを切り上げ、宿が有るマキノへと移動しました。

 

宿の近くにあったメタセコイア並木

 

通りには並木を見に来た老若男女が思いの外大量に集まっていました。綺麗に着飾った若い男女がニコニコと笑いながらこちらを見ていると、彼らにまで自分の今日の境遇を見透かされ、馬鹿にされているような気持ちになるので、逃げ込むようにこの場を立ち去ります。

時間は未だ17時ですが、特にやることも無いので夕食でも摂ろうと飲食店に入ります。

店は薄暗いものの「商い中」という看板がかかっていたのでのれんをくぐり「開いていますか」とご主人に声をかけます。こちらを向いた見覚えのあるおじいちゃんは渋い顔でかぶりを振られました。

「まだ。17時半から。」

私はいつものご主人の顔が見られたのが嬉しく、親切のつもりで

「表にかかっている札が商い中になっていたので、裏返しておきましょうか?」

と言うと、ご主人は下ごしらえの包丁を放り投げるようにして玄関まで出てこられました。自分で「商い中」になっている札を確認してご主人は私に礼を言うかと思いきや

「すみませんでした。私が悪うござました!」

と言ったように聞こえました。

あれ?私の親切に対して返す日本語としてはおかしいぞ。そう思った私はくるりと振り返り、彼の口の動きを過たず見守ると、やはり彼は

「私が / 悪う / 御座いました!」

と、もう一度ハッキリと口にしていました。

ここでご主人をフォローしておくと、ご主人は私が過去にこの店に来たことがある客であることをおそらく認識しておらず、そのため笑顔で「裏返しておきましょうか?」と投げかけた質問が「裏返ってましたよ?どういうつもりですか?」に聞こえてしまった可能性が・・・。

無いか・・・。

フォローしようとしたものの、あえなく失敗してしまいました。

過日、京都の美山で散々な扱いを受けた宿の名前を伏せましたが、このお店はもともと気に入っているところなので、なおさら公開するわけにはいきません。良識ある大人として、ご主人が裏返した後の準備中の札の写真を掲載するにとどめたいと思います。

 

 

 

その後、お宿に向かいます。住所の記載通り現地に着きましたが、宿の看板が見当たりません。宿と思われるポイントは車一台しか通れない細道で車を寄せるスペースも無く、切り返すのも民家の駐車場を使わないといけない状態です。

前後から車が来ていないことを確認し、目の前にある観光客目当ての売店の人に声を掛けると、なんとこのお店が宿になっているようです。「ようこそ!」という顔で迎えてくれたのは良いのですが、看板が無いことには民宿を長年運営していて気が付かないのでしょうか。

チェックインのときに看板がなぜ無いのかを聞いてみると

「看板をつけないとと思っている間に、時間が過ぎてしまい・・・」

とのこと。昨日予約の電話のときに一言フォローをしてくれても良い気がしましたが、特に説明はありませんでした。

「何か重大なご事情があって、看板をあえて隠しておられるのですか?」

と真顔で聞いてみたものの「いえ、そういうことではなく(笑)。すみません」と軽い笑顔で返答されてしまいました。私の嫌味が上品に過ぎて、彼には全く届いていないようです。

翌日は別の河川でビワマスを狙いました。

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読む価値は無いが