前日、斜里川の上流でオショロコマを初めて釣った我々は、翌朝は常呂の海岸でシロザケを狙いました。
私はシロザケ釣りにそれほど興味がありませんでしたが、一度くらいは釣ってみようかと、この日だけはシロザケ釣りに同行することにしました。
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常呂の海岸でアキアジ釣り
※知人の知人から教わったポイントでブログへの許可を取っていないので、詳細な釣り場はぼかしております
今回のわたしの同行者は釣り人に典型的なおおげさタイプで、
「今海に行けば大物がたくさん釣れるよ!行こう!!」と彼にそそのかされてボウズを食らった経験は3度や4度ではなく、その予測確率の低さには定評があります。
案の定、合流後にシロザケの状況を聞いてみると、
彼「今、常呂の海岸に行けばシロザケがお祭り騒ぎらしいよ。」
私「お祭り騒ぎって、どんな?」
彼「リオのカーニバルくらいのお祭りだよ!」
シロザケ釣りは朝の4時半~7時くらいがピークらしいのですが、興奮した彼は2時半起きで3時半には竿を出したいと行って聞きません。
* * *
翌朝というのか夜というのか、定職についたことがほとんどないため目覚ましを鳴らすことが無い私としては異例の2時半に目覚ましを鳴らし、2時55分に車に飛び乗りました。
朝はまだまだ遠く、漆黒の闇に浮かぶカーナビに「2:55」という見たことが無い数字が並んでいます。
北海道のサケ釣りは場所の取り合いが激しく、木の棒で殴り合ったというニュースで賑わったのもわずか1週間ほど前の話です。
すでに人が入っているかと思いきや、マイナーポイントであったことと、時間が早すぎたために誰もいません。
暗闇の中、同行者がヘッドライド一つで作業をする様はさながら死体遺棄現場です。
50号ほどのおもりにイカとサンマを餌にして釣る「ぶっこみ釣り」で狙います。
シロザケはルアー釣りで狙う人も多いようですが、ルアーは投げて巻くを繰り返すのが忙しいので、彼は投げて待つだけのぶっこみ釣りをチョイスしたそうです。
竿を3本出して、祈るように竿先をにらむしかありません。
釣り現場には3時半に到着しましたが、寒さのせいで4時には飽きてきました。
どこがリオのカーニバルなのか?リオのカーニバルはこんなにも孤独で寒いものなのか。釣れないのはまだしも、誰も釣り場に来ないではないか!
4時半頃に一人のおじいちゃんが現場に到着しました。
我々が3時半から釣っているというと半笑いで「ご苦労さま」言い残し、そそくさを竿を準備します。
彼は手慣れた様子で8本の竿を並べると、4時半ころにそのうちの一本の竿がしなっていました。
シロザケの引きは非常に強く、巻き上げるときにバタバタするくらいだと同行者が言っていたのと比べると、おじいちゃんの表情は妙に落ち着いており、その表情たるや、彼が普段おしっこをしているときと同じ無表情です(見たことはないですが)。
外道でも掛かったのかなと見ていると、波打ち際で白い大きなシロザケがバタバタしています。
初めて見る生きたシロザケに驚いている私をよそに、おじいちゃんは木の棒で「コーン」とシロザケの頭を一発殴ると、歯を磨いた後でうがいをするかのような、無感動かつスムーズな動きで釣り針に餌を付け出しました。
群れが来ているのかもしれないと大騒ぎして待っていると、竿が大きくしなっています。
顔をしかめながら彼がリールを巻き上げると、キラキラ輝くシロザケかかっていました。
眉目秀麗でパワフルさも兼ね備えるシロザケの姿に大感動です。
まだまだ釣れるかも知れないと期待しながら待っていると、同時に2本の竿が倒れています。
そのうち一本の巻き上げを担当し、生まれてはじめてシロザケと竿と糸を通してやり取りしましたが、その力強さというか必死さというか、これまで私が釣ってきた数多のカワムツやアブラハヤとは明らかに違うパワーを感じることが出来ました(←当たり前)。
落ち着いて周囲を見渡すと、この近くでは我々を含めた4組が釣りをしています。我々は4組のうち右から2番目で釣っていますが、釣れているのは我々とその右のおじいちゃんだけで、左の2組のおじいちゃん達はまだ釣れていません。
さらに我々の右のおじいちゃんは、サビキでアジでも釣るようにバンバンサケを釣り上げています。
その後我々の竿にもう一匹が掛かり、2人で合計4匹を釣り上げる事ができました。
ちなみに私の同行者は大学時代の同級生です。彼は医学部でもない、東大や京大でも無い普通の大学に3年も浪人をしてやってきた要領の悪い人物で、その点で私とは同じような人種です。
北海道にシロザケ釣りをしに行くと知人に言うと、
「場所取りが激しくて全然おもしろくないよ」
「その時期はシロザケなんか釣れないよ。もう半月早く行かないと」
など誰一人として前向きなコメントをくれませんでしたが、なんと初日だけで4匹のシロザケを釣ることが出来、俺らもやればできるもんだな、ガハハ!と高笑いをしていましたが、そう言えば、私が投げた竿には一匹もシロザケが掛かっていないことに気づきます。
先程僕が上げたシロザケも、投げたのは友人なので、私は回収代行をしたに過ぎないとも言えます。
悔しくなったので私も投げさせてもらいますが、みんなが軽く投げて届くポイントに、私だけが全く届きません。
「最後までオモリを意識して、ふわ~んと投げてみて」
という同行者のアドバイスに従って投げてみますが、先ほどと同じようなところに落ちています。竿を使わず、オモリをどっこいしょと投げても同じところに落とせるのではと思うほどです。
いつも以上に不出来な自分に改めてふてくされ、スマホをいじりだす私でした。
ところで北海道でのアキアジ釣りと言えば場所取りに労するエネルギーの膨大さで知られており、場所を確保するために釣り場で寝泊まりする人、荷物や杭を打ち込んでテリトリーを主張する人などで溢れています。
さらにラインが絡まって流木で殴るというニュースも見かけました。
【北海道サケ釣り事情】
釣り場で糸が絡まった相手を流木で殴るという、低偏差値のニュースで盛り上がっているようです。来月は私も北海道でサケ釣り予定なので、竿だけでなく流木も用意しておこうと思います。https://t.co/4mqzdtThcy
— 釣れないニートの渓流釣りとほほ録 (@tsurenai_neet) September 29, 2020
今回私が訪れた常呂の海岸は釣り人が少なかったため争いもなく非常に平和で、初対面同士の4組で積極的に情報交換を行っていました。
また、これまで場所取りに躍起になっているじいさんたちを正直バカにしていましたが、私もとなりのじいさんが正面ではなく少しこちらに向かって投げていることに気づいたときに
「正面にまっすぐ投げてくれよ」
と思ったので、縄張り意識については場所取りじいさんと同じレベルでした。
その後海岸を散歩してみると、縄文人のセカンドハウスのようなものを発見。
シロザケ釣りの拠点であることは間違い無いでしょう。
サケ釣りの場所取りが醜いという議論もありますが、ここまでくれば立派なものと言えるのではないでしょうか。
その後は残念ながらシロザケの反応はなく、結局4本を釣り上げたところで終了となりました。
シロザケは釣った後のリリースが難しく(周囲の釣り人から怒られることが多いようです)彼は自宅や実家、奥さんの実家にまでヤマト運輸で送りつけていましたが、岸の近くまで寄ってきているシロザケの栄養はほとんど身から精巣や卵に移っているため、極論すれば美味しい部分はいくらだけです。
身はシチューで食べないと美味しくないくらいにパサパサしているらしいので、彼の自宅の冷蔵庫はサケの切り身でパンパンになり、それを処理するために要領の良さと思いやりを備えていない男と結婚してしまった嫁と娘はサケのシチューを食べさせられることになるのでしょう。
私はサケ離婚は回避したいので、サケの持ち帰りについてはお断りさせていただきました。
ちなみにこの周囲のヤマト運輸はサケの発送には慣れているらしく、サケをそのままの姿で渡せば梱包してクール宅急便で送ってくれます。
常呂川 北見の中ノ島公園
シロザケ釣りは朝の8時で切り上げ、その後は私の希望でニジマスを狙いに川に入ります。
同行者はそれほど興味が無さそうですが、ものは試しとルアー竿を持って川に入ってきました。
川は幅が広く単調に流れているので、2人でルアー釣りで挑みます。
釣れない私をよそに、同行者がすぐにアメマスを釣り上げていました。
さすがに私の主戦場でも先に釣られるというのは解しがたい状況です。
確かに障害物の周りにはアメマスが潜んでいるようですが、私は釣りたいのはあくまでニジマスだ。ニジマスは障害物の周りよりも開けた場所にいるので(?)私はあえて障害物の周りには投げない、だから釣れていないだけなんだ。
そのように同行者と自分自身に言い聞かせて、流れ込みで深くなっている部分を中心にルアーを投げます。
しかし、一向に魚の反応がありません。
一方、同行者は一匹釣って満足したようで「車で寝てくる」と言い残し、車に戻ってしまいました。
残された私は、意地でも大物を釣ってやると、気配の無い川に向かってルアーを投げ続けます。
すると、川底に大きな生物が蠢いているのが目に入りました。
写真の真ん中やや左に、背中の白いサケの姿が見えるでしょうか?
そう言えば三重県でアマゴ釣りをした際に、大きな魚が遡上して来るとそれ以外の魚は隠れていなくなるという話を思い出しました。
サケはこの場所だけでも10匹近く目にしており、周辺から魚が散っていると考えたほうが良いのかもしれません。
こうなると大きなニジマスを狙うなどという偉そうなことは言っていられません。とにかく一匹だけでも魚を釣りたい。
さきほど彼がやっていたように、障害物の上流に立ち、ルアーを流れに乗せて送り込んで、引っ張ってくる釣りをします。
これならアメマスくらいは私でも釣れるでしょう。
ところが川釣りにほとんど慣れていない、普段要領が悪いだの天然だのと言ってバカにしていた友人が簡単に釣ったアメマスまでもが、私には全く釣れてきません。
徐々に夕暮れが近づいてきます。市街に近い場所といえども一人での川釣りは心細く、一頭の熊が7人を殺した三毛別羆事件や福岡大学ワンゲル部事件などの歴史的な熊被害を思い出してしまいます。
そろそろ納竿かという時間帯に、対岸の茂みを狙ってルアーを投げてみると、予想外に上手に投げることができました。しかし良いところに投げても魚の反応は無いんだろうなと、淡々とリールを巻いていると、銀色にきらめく魚がルアーに食いついてきました。
サイズはそれほど大きくありませんが、最後の最後に魚の姿が見られるのは気持ちが良いものです。
ニジマスでしょうか、アメマスでしょうか。
なんと、ウグイです。
多くの鱒ファンにつきまとう憂鬱であり、釣りを食料調達と割り切る方々からも決して重宝されることが無い、ウグイ。
本州でも最近は見かけていなかったウグイさんの御尊顔を拝めるとは、思いがけぬことです。
ここで本日の釣りを諦めて、車に戻ります。
とぼとぼと下を向いて歩いていたおかげで、ルアーを拾えたことがこの日唯一の収穫となりました。