東京の中森くん(仮)と仙台で合流し、蔵王方面に向かいます。中森くんはいつも私より良い魚を大量に釣り上げていくことで、私の釣り下手ブログに花を添えてくれる存在です。
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激安レンタカーのキャバクラ応対
仙台駅近くの激安レンタカーで車を借ります。レンタカー屋では保険に入っていない場合、車を傷つけると修理代などを請求されますが、時に親切な店員さんが
「ぶっちゃけ、多少なら傷つけても大丈夫ですよ」
「店長が居なければ、小キズなら見逃せます」
などと言ってくれるお店もあります。
しかしこのお店の若い女性担当者は、そんな配慮を2ランクほど上回っていました。
担当「古い車なので、傷つけても全然平気ですよ~。」
私「どれくらいの傷なら大丈夫ですか?」
担当「そうですねー。ミラーが取れてたりガラスが割れてたり、警察に止められるほどの事故で無ければ大丈夫です(^^)」
車のミラーが取れるほどの事故を起こしてここに戻ってきた時には修理代どころの騒ぎでは無い気がしますが、彼女の謎のホスピタリティ(?)に衝撃を受けます。
さらにカーナビをレンタルし忘れていたことに気が付き、今から追加で設置してもらえるかと聞いたところ、無料で貸し出しますとのこと。「もう古いので、後でクレーム付けられるほうが面倒なので」と言っていましたが、データは5年前のものなので極端に古いわけではなく、十分使えるものです。消費者として嬉しい反面、運営側はこの資本主義1年生のようなゆるい対応を知っているのかが心配になります。
スタッフさんはよほどの事故で無ければOKという宣言を出し、無料でカーナビを設定してくれたあげくに
「行ってらっしゃ~い♡」
と、テーマパークのスタッフも顔負けの笑顔で手を振って見送ってくれました。接客力次第で報酬が増やせるタイプのお店に勤めれば高い報酬を得られそうなものですが、なぜ激安レンタカー屋に勤めているのか、不思議な気持ちで川へと向かいました。
澄川ゆと森倶楽部近く
アクセス | 宮城県仙台市から1時間 山形市から1時間 米沢市から1.5時間 |
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対象魚 | ヤマメ,イワナ |
遊漁券 | 年券:4,800円 日釣券:900円 |
管轄漁協 | 蔵王非出資漁業協同組合 |
入渓のしやすさ | ★★★★★ |
歩きやすさ | ★★☆☆☆ |
釣り可能期間 | 3月1日から9月30日 |
白石川水系の澄川に入ります。中森くんとは川に入る前に昨年訪れた岩手の魚影の濃さについて思い出話をしていたせいで、東北に来さえすればすぐに鱒が釣れることを想定してしまっていたようです。わずか1時間、2時間と魚の反応が無かっただけで
「魚が居ないんじゃないのか」
「仙台はダメだ」
と不満を漏らし始めました。まだ時間はお昼の2時を回ったところですが、我々の口から発せられる話題の過半数は魚ではなくおやつで占められ、中森くんからはいつもの魚に対する情熱が既に消失してしまっています。
釣りの成績が芳しくない一方、この河川は味わうに足る地形をしており、見上げると危ういジェンガのように石が積み上がっていました。
一つ岩を抜けば周辺の地形が変わりそうなほどの不安定感です。直径10~100センチくらいの岩がランダムに高く積み上げられているこの地形がどのような過程で形成されたのかをじっくり考えてみましたが、何一つそれらしい答えは出てきませんでした。
「今日は早めに釣りを終わろうか」
そんなことを話していると、中森くんのルアーに魚が当たったと。そんなバカなと睨みつけていると、次のキャストでは20センチほどの綺麗なイワナを釣り上げてしまいました。
またしてもやられました。彼は「やべー、全然テスト勉強してねー」と言う広告を打ち出すことで周囲の点数を下げ、結果として自らの偏差値を上げるという姑息な寸法で生きていることが、一緒に釣りをして5年目にしてようやく判明しました。
さてここからは何度と無く繰り返してきた、私の醜い釣り欲がっぷり四つ組みタイムが始まります。ふたり揃ってボウズは慰めようがありますが、自分だけボウズでは収まりがつきません。一匹釣った後は釣りに飽きて車に戻った同行者を無視してどんどん進みます。こうなれば地層も植物もへったくれもありません。
河川にはあいにく魚が居ないわけでも活性が低いわけでもなく、毛針を流せば一定の反応が得られます。しかしどういう理由か、魚が毛針に掛かる度にラインが切れてしまいます。
結び直しては切れて、また結び直してはまた切れて・・・。渓流釣り歴はいよいよ20年になると言われていますが、何の原因も思い当たりません。きっと私ではなく神が悪いのでしょう。
とりあえず同じように結び直して毛針を流すと、今度はどういうわけか釣れました。
先日、知人から友達の数を聞かれた時に「0.5人」と答えました。失敗はすべて神の責任にし、ただのラッキーは自分の実力だと言い張ってこれまで生きてきた成果がこの人生だと言うことでしょうか。
【当日のお宿】蔵王の隠れ家ペンション・Dari
仙台の国分寺で飲食店を4店舗経営していたというオーナーが、引退してこのペンションを運営されているのだそうです。コレクターとしてウイスキーやワインを大量に揃えてあり、つい先日も泥棒に狙われたのだそうです(無事逮捕)。
出てきた料理の丁寧さから察するに、元々料理人だったのでしょう。特に根菜の味噌汁が絶品でした。
オーナーさんご自身も旅人らしいので、周囲でおすすめの宿について聞きます。すると、それまで多くを語らないタイプに見えた宿のオーナーが突然前のめりになって、「鎌倉温泉」という古い温泉宿について語りだしました。
そこは山に囲まれた谷底のような場所にひっそり佇む大正時代に建てられた温泉宿で、アトピーにも効くという良質な温泉で人気があるとのことでした。宿は川に囲まれていて「温泉に浸かりながら釣りができる」環境で、一泊二食6,500円という安さです。
「ただし・・・この世のものでは無い方々もたくさんおられます・・・。」
と、途端に声のトーンを変えて語りだしました。この地域は古くはとても貧しい地域で、過剰に生まれてきた赤ん坊を川に流すようなことは普通に行われていたのだそうで、それらの霊がこの館にたくさんたむろしているのだそうです。
「先日訪れた日には私以外は宿泊していかったのですが・・・明らかに子供の声が聞こえるんです。」
「誰も歩くはずの無い廊下が・・・徒歩のリズムで軋んでいるんです。」
声の抑揚をつけたり表情を突然曇らせたり目を見開いたり、稲川淳二師匠を思わせる抑揚と表情で語りかけてきます。
当初は温泉効能が高く風情のある「良い宿」だと言っていた鎌倉温泉ですが、最終的には霊を唯一にして最大の強みとして押し出している高純度のお化け屋敷に設定が切り替わり、無口に見えたオーナーは半笑いでお化け屋敷を斡旋してきます。
「二度と出来ない経験ができるんだけどな~♪」
「良い霊に憑いてもらえるかもしれないんだけどな~♪」
霊に遭遇した場合の対処方法まで教わった我々ですがやはり恐怖心には勝てず、鎌倉温泉を予約する度胸はありませんでした。※このお宿のページはこちら