私を差し置いて魚を釣り続ける配慮の無い同行者と解散し、この日は一人で漁協が無い河川で魚を探します。知らない地域の、しかも放流が無い河川なので、渓魚を釣ることが出来なくてもヤマメやイワナが生息していることがわかるだけでも大きな感動があるでしょう。
その河川にはかつてはトラウトが居たような話を聞いたことがありますが、下流側をのぞいてみたところ、魚が住めるような水量では有りません。
ここ数日雨が降っていないのかもしれませんが、この水量の河川の上流でヤマメが生息しているとすれば、そのヤマメは頭を半分水から出して肺呼吸をし、霞を食って生きているに違いありません。
昨日解散した同行者に無漁協河川での魚探しの楽しさと、それを放棄して自ら選んだ大好きな会社に通うために帰宅することに嫌味を言い放ち続けた私ですが、最終日に魚探しすら始めないままに寂しくレンタカーを返しに行くのでしょうか。
それではあんまりなので、一応上流の方をのぞいてみると、先程より少しだけ水量が増えたようです。ヤマメが生息するには不足と言う他無いですが、かと言って他にやることもないのでとりあえず竿とカメラでトラウト探しです。
釣りで狙うべき水量があるポイントがほとんど見当たりませんが、水深20センチに満たないわずかな流れ込みに毛針を浮かべると、黄色いお腹の魚が食ってきました。
知人からもこの河川に居る可能性がある魚はヤマメだと聞いていたので、イワナが釣れたことに驚きます。釣れたイワナを浅瀬に置いて撮影しようとしたところ、イワナが逃げ出して小さな水たまりに入ってしまいました。
逃げ出したイワナが岩の隙間に入ったので捕まえようと指を滑り込ませると、魚が2匹うねうねと動いています。釣ったイワナは1匹だったので、もう1匹何かが隠れていたことになります。
追い回されたイワナは岩盤の下から出たものの他に隠れるところもなく、結局またその岩盤の下に入ったのが見えました。
昨日のカジカに引き続き、人生で2度目の魚手づかみをしたこと以上に、流れがほとんど入っていない、水深わずか10センチくらいの浅瀬にイワナがひっそり隠れていたことに驚きました。
今までヤマメやイワナは膝下の水深のところには生息が難しいと信じてきたので、大変な驚きでした。
さらにその後はイワナだけでなくヤマメも釣れ、結局2時間で7匹ほどの鱒と出会うことが出来ました。
魚が居ないどころか、ヤマメもイワナも豊富に生息している河川のようでした。
大満足の体験が出来たので、昼過ぎには川を出てゆっくりランチを楽しみます。
そう言えば昨夜、釣りに同行していた中森くんがネットで見つけた記事について教えてくれました。その記事には貯金し過ぎることのデメリットが記載されており、「体験にはお金がかかるが、その体験の思い出話をすることでその後大きなリターンを得られる」「リターンを得る期間を長くするために、若いうちにいろんな体験をした方が良い」という類のものだったように思います。
なるほど。
私はなけなしの金をはたいて仙台まで来て、さらに友人よりも1日だけ長く滞在することで、大きな体験をすることが出来ました。
私は
- 水が無いように見える川でイワナとヤマメが釣れたこと
- 水深10センチのところにイワナが居たこと
- イワナを手づかみしたこと
を早速中森くんに報告しようと思いましたが、しませんでした。
魚のサイズや魚種など、他の人にも理解される価値を求める彼にはこの喜びはほとんど理解出来ないでしょう。
思い出話によるリターンが得られなくても、他人と比較しなくても、それでも尚自分にとって固有の価値がある体験こそ本当の価値と言えるような気がしました。
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この日筆者がチョウチン毛針釣りで使った道具です。
実績が乏しい釣り人ですので、あまり参考にされない方がよろしいかと思います。
【竿】シマノ天平
【ライン】実売400円の安いライン0.8号
【毛針】サイズは14番くらいを使っています
チョウチン毛針釣りの方法と道具についてはこちらでまとめています。
チョウチン毛針釣りは簡単な道具と動作で楽しめるので、ルアー、フライ、テンカラなどで行き詰まった私のような釣り人にもってこいの方法です。