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渓流キャンプの前に知っておきたいこと
趣味の登山・渓流釣りと、登山用品販売の経験から得た知識を基に、キャンプにおける自然公園法の基本的なところから、安全に楽しむための注意点、留意点と、自然のために守りたい行動を解説します。
渓流釣りキャンプの魅力
渓流釣りキャンプの魅力といえば、せせらぎや沢の音、新鮮な空気と爽やかな風を感じながら過ごす時間でしょう。
また、川に近いがゆえに移動の苦労もなく朝マズメを狙えたり、ゆっくりと夕マズメに備えたり出来る点も釣り人にとってはメリットです。
とはいえそこは大自然の中。
日常の生活圏とは異なる事も多く、自然環境に必要以上のダメージを与えない行動や知識、マナーが存在します。
普段とは違う環境ゆえの思わぬけがや事故なども起こしやすい事があるのも事実。きちんとリスクを知ったうえで、安全に、かつ快適に過ごすための知識を得て、自然の中での渓流キャンプに挑戦してみましょう。
基本的なルール
「自然公園法」に則って
渓流釣りキャンプのイメージは、河原に自由にテントを張って泊まるシーンでしょうか。
でも実は、日本の主な渓流では自由にテントを張る事は出来ません。それは多くの渓流が「〇〇国立公園」の中にあり、環境省の「自然公園法」により指定地域のキャンプ場以外でのキャンプが原則禁止されているからです。
「原則」と書きましたが、例えば何かアクシデントがあり緊急回避的にキャンプをする場合や、具体的に言えば黒部渓谷など、山深く入りキャンプ指定地が無い場所ではやむを得ないとされています。
基本的には一般的な渓流では自由なキャンプは出来ない。と心得ていた方が無用なトラブルを作らないでしょう。(奥深く分け入った場合での場所選定のコツと注意点は後述します)
土壌保護と火災防止のために
焚火も渓流泊の醍醐味の一つですが、自然保護の観点から直火はやめましょう。
一般的なキャンプ場でも直火が禁止されてきていますが、自然の中でなら尚更のこと。極力自然環境へのダメージ(植生や景観)を無くすことが、対象魚である渓流の魚を守ることになります。
勿論、火の管理は気を使いすぎるほど厳重に。毎年通常の登山でもバーナーから下草へ引火。山火事へと発展し貴重な高山植物を焼失してしまう事例が発生しています。
特殊な環境ゆえ、回復まで10年以上かかることもあります。また、植物に限らず野生動物や他の方々の生命を危険にさらす事になりますので、焚火もバーナーの火も、気を抜かずに管理する必要があります。
自然環境を維持するために
調理器具などを渓流で洗うのは厳禁。ご飯のこびりつきはお湯を注いでふやかしてお粥のように飲んだり、少量のお湯でふき取るのみで済ませる様にします。紅茶を飲んだ時にはティーパックで拭くなどの方法もあります。
一泊程度であればそのまま持ち帰って自宅で洗うのが一番だと思いますが、今後連泊する知識として留めて頂けたらと思います。
ゴミになったパッケージはもちろん、食べ物の残りも持ち帰ります。微生物の分解にも限界があり、また人の食事は塩分が濃く、環境負荷を与えます。
源流部であればそれが下流に流れていくことも意識をして、自分たちの住む下界の環境を源流から汚さない意識が大切になります。
難しそうに書いてきましたが・・・
ことだけ意識しておけば十分だと思います。
必要な知識
渓流独特の危険
基本的にはキャンプ場での幕営となりますが、それでも渓流に近い場所でのキャンプでは高原などのキャンプとは環境が違うので、渓流キャンプなりの違う注意点があります。
注意すべき増水
一番の違いは川に近い事で生じる危険です。
河川の増水による危険は渓流では特に危険で、山間部に降った雨が短時間で集中するため「鉄砲水」と呼ばれる非常に急激な増水が発生する場合があります。
雷雨などの短時間だけでも降水量が多い場合には急激に水かさが上がることもあります。天候や降水確率だけではなく、雷雨情報など気象状況の把握はとても重要なことです。
アブ・ブユ・ブヨ・ヤマビルなど
高原ではあまり見ず、渓流でよく見るのがアブです。山でも小型のアブは見ますが、渓流で見かけるのが親指くらいの大型のアブです。毒はないのですが、噛まれるととても痛くて腫れる時もあります。
ブユやブヨは小型で、しかも刺されると一週間以上痒みがぶり返し、体質によっては熱を持ち腫れます。厄介なのが、刺される時は気が付きにくいというところです。
ちなみに、ブユ・ブヨは虫除けがある程度効きますが、アブは全くと言っていいほど効きません。ハッカ系の虫除けがやや効くという程度です。
ヤマビルは生息エリアが比較的偏在しているのですが、鹿などの野生生物によって生息地域が広がりつつあります。噛まれても痒みはないものの血を固まりにくくするため、出血が止まりにくいのと、その容貌も忌避対象そのものです。
対策は、「ヤマビルファイター」などの忌避剤を使用し、衣服の隙間などに注意する他ありません。
そのほかマダニ、蜂、蛇などの毒虫、危険生物などに気を付ける点は通常キャンプと同じです。
キャンプ地の選定
基本的にはキャンプ指定地以外のキャンプは出来ませんが、それでも快適で、安全に過ごすための場所選びというのがあります。
まずは危険を回避するための、避けるべき地形を見ていきます。
崖の間近は避ける
崖は常に落石の危険があります。そして増水時の逃げ場がありません。
特に斜面の上に大岩が上に見える場所や、真新しい落石がみられる場所はいつ崩落してもおかしくありませんので、例えその場所が平らであっても絶対に避けます。
それでもスペースや移動時間が無いなどのやむを得ない場合はできるだけ崖から距離を取り、周囲を観察して真新しい落石の痕跡がない場所を目安にします。
木の真下は避ける
立地上の制約もありますが、出来れば木立の真下などは避けるべきでしょう。
山間部は温度差によって夜露が発生しやすく、木の葉にもびっしょりと露が付く場合があります。夜間に露が滴ってテントに当たると思いのほか気になって寝付けなかったり、寝ていても起こされる事があります。
また、夜間の急な雷雨などでは樹木への落雷の危険もあり、あまり立ち木に寄り添ってテントは張らない方がいいでしょう。
増水を想定する
もしも水位が上がっても安全な場所を選ぶ。
これは通常の増水位を予測してそれより高いところにテントを張るのですが、まず雑草が生えているくらいの場所が安全圏でしょう。
常に水が流れているところは雑草が根付きにくく、河原が発達します。
特に天候が不安定な場合や夕立が予想される時は安全マージンを多く取るように意識します。
また、「中州」と呼ばれる、川の中に存在している島状の地形でのキャンプも避けましょう。
▼中洲の例
中流域に発達した中洲
川辺では最も危険な場所です。増水に気が付いた場合の逃げ道がなくなり、過去には何度も事故が起きている地形です。
たとえ天候が安定していて増水の危険が無くても、暗くなってからの川の渡渉はかなり危険で、何かあっても容易に岸に戻れなくなってしまいます。
キャンプ地からの緊急撤収
最終的なテントを張る場所の決め手として、緊急時の退避場所がある事。
それと、渓流沿いに移動できないほどの増水時に撤収をして登山道などに移動できることが挙げられます。
事前にキャンプ地を決められれば安全ですが現地で決める事になる方が多いので、地形図を見て現在地を把握し、エスケープルートを確認しておく事が最終的に身を守る事になります。
常にその場所での危険、リスクを意識して想像すると危険度レベルを管理できます。
出来れば経験者と一緒に行動して教えてもらえると、その場所でのリスクマネージメントを学べると思いますが、日帰りで釣りをしながらでも意識を持つことでリスク管理の感覚を磨いていけると思います。
渓流キャンプ適地のヒント
キャンプ指定地では多くが上記の項目をクリアしているのですが、それでも意識して場所を選ぶ癖を付けておくと、実際渓流でキャンプをする場合に知見として役に立ちます。
高原でのキャンプと同じで平坦で水はけがいい場所が最良になります。特に渓流では平らな場所探しが快適なキャンプの肝といえるでしょう。
平坦な芝地、もしくは砂地が最良で、なるべく石が無い場所、ゴツゴツしていない場所です。
そういった地形を具体的にご紹介します。
地形を読み解く
実際の渓流では地形は様々なので臨機応変にとなりますが、安全な地形の代表的なものは、河川カーブの内側、河川の合流地の上流側尾根末端などです。
河川カーブの内側は砂が溜まりやすく、川の流れも緩やかで、増水してきても一気に流される危険は減ります。
水が緩やかになるので砂が溜まりやすく、小石がゴロゴロとした場所よりも格段に平らにしやすく寝やすい場所です。
河川合流部の上流側
河川合流部上流は砂が溜まりやすく、通常は河川より高い位置まで土砂が溜まっています。尾根末端部が緩やかであれば増水時に尾根を上がって尾根の上に避難ができます。
必要な道具
一般的なキャンプ道具と渓流ならではの道具
通常の釣り道具に加えて、一般的なテント装備が必要になります。
一般的なテント装備
- テント
- 寝袋
- エアマット
- ヘッドライト
- ランタン
- バーナー
- コッヘル(携帯小型鍋)
- 魔法瓶
- ファーストエイドキット(絆創膏・消毒薬・エマージェンシーシート・ホイッスル・ポズンリムーバ等)
さらに、有ると便利なものは
- 細引き
- タープ
- 洗濯ばさみ
- つま先が保護されているサンダル
- 替え下着
上記のものは渓流釣りでの濡れを乾かすなど、渓流独特の環境を意識したものになります。
ウェーダーを使用していれば濡れは最小限で済みますが、それでも万一濡れてしまった場合に乾かせる装備があった方がよく、濡れによる冷えは体調悪化の要因になったりしますので着替えは持つようにします。
特に細引きは5mから10m程度のものがお勧めで、補助ロープにも使えるのが理想です。
足回りも渓流足袋など濡れたものをずっと履いている訳にもいかないので、軽量でかさ張らない替えのものを準備しましょう。
タープに関しては小さいものでも構わず、干したものが夜露に当たらないようにできる程度で構いません。
テント内でも干せるのですが、テント内に湿気が溜まると寝袋も湿気ってしまい、快適な睡眠を妨げます。
以上が渓流キャンプの注意点となります。
渓流キャンプの注意点とまとめ
・渓流独特の危険を意識する(増水・落石)
・万一のために撤収ルートを考えておく
・装備が多くなる(釣り道具に加えてテント装備など)
渓流キャンプという独特な環境になるので、事前の気象情報を入手したり衛生面の管理など、注意すべき点や装備は多くなりますが、それだけに普段とは違った世界を味わえます。
きちんとリスクを把握・管理しさえすれば、早朝の美しい渓流の景色を眺めたり、川の音を聞きながら寝入り・目覚めたりと、水辺ならではの雰囲気をたのしめますので、是非安全に留意して渓流キャンプを楽しんで頂きたいと思います。
渓流キャンプに使える!代表的な商品をピックアップ
渓流キャンプの道具特選
渓流キャンプ専用の用品はありませんが、渓流でも使いやすそうな道具の紹介です。
MSR ハバ NX バックパッキングテント 1人用
超軽量、本体メッシュで快適
- 本体メッシュで通気性もよく蒸れずに快適
- 超軽量な最小重量(フライ/本体/ポール)1120g
- ドアパネルが広く取れる長面出入り口でテントの出入りが楽
参考価格 | 58,300円程度 |
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定員 | 1名 |
収納サイズ | 46×15cm |
重量(収納袋も含) | 1290g |
イスカ(ISUKA) アルファライト 300X
水辺のテント泊に最適な保温力
- 水濡れや湿気に強い化学繊維の保温材「Micro Lite」
- 平均重量 670g 収納サイズ φ14×27cmとコンパクトで軽量
- つま先が窮屈にならない逆台形形状で足元がゆったり
参考価格 | 13,200円程度 |
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保温材 | 1.5Dのマイクロ繊維と3Dと4Dの中空ポリエステルを組み合わせた保温材「Micro Lite」ダブル構造 |
収納サイズ | φ14×27cm |
重量 | 670g |
NEMO(ニーモ・イクイップメント) ゾア 20S
コンパクト・軽量な半身マット
- 重量:275g で超軽量なシュラフマット
- 収納サイズ:18xφ10cm とコンパクトで、省スペースパッキング
- フォーム縦横2方向の肉抜き加工で軽量。十分な保温性も維持
参考価格 | 10,500円程度 |
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保温材 | フォームに縦横2方向の肉抜き加工(2アクシスコアリング) |
収納サイズ | 18xφ10cm |
重量 | 275g |
ブラックダイヤモンド コズモ
小型で高い防水性、十分な明るさを持つ
- 最大250ルーメンの高輝度LED
- 重量:83g(電池込)の軽量性で携行も装着もストレスなし
- IPX8:水深1.1mに30分耐えうる高度な防水性
参考価格 | 3,700円程度 |
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全光束 | 250ルーメン |
電池 | 単4アルカリ×3本(付属) |
重量 | 83g(電池込) |
BLACK DIAMOND ブラックダイアモンド APOLLO アポロ
多機能で効率良く広範囲を照らすためデザイン
- パワーサプライとして小型電子機器の充電も出来るマルチモデル
- ストロボ、ディミング(増/減光)機能
- 全光束225ルーメン
参考価格 | 7,900円程度 |
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全光束 | 225ルーメン |
電池 | 電池リチウムイオン(2600mAh)内蔵、単3アルカリ×3本 |
重量 | 350g(電池込) |
イワタニ ジュニアコンパクトバーナー
燃料はカセットガスで超お手軽なバーナー
- 高熱効率バーナーで1リットルの水を沸騰させるのに約4分
- 連続燃焼時間: 約120分(イワタニカセットガス使用時)
- コンビニでも入手可能なカセットガスを利用
参考価格 | 3,700円程度 |
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連続燃焼時間 | 約120分(イワタニカセットガス使用時) |
収納サイズ | 82(幅)×68(奥行)×109(高さ)mm |
重量 | 約274g |
primus(プリムス) イージークックNS・ソロセットM
内側ノンスティック加工の軽量ソロクッカー
- 内側ノンスティック加工済で焦げ付きもなく手入れも簡単
- 軽量な重量:250g
- P-250サイズのガスカートリッジが収納可能
参考価格 | 3,600円程度 |
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製品仕様 | ハードアノダイズド加工済みアルミ製 内側ノンスティック加工 |
収納サイズ | Φ12.5×15cm |
重量 | 250g |
THERMOS(サーモス) 山専ステンレスボトル クリアステンレス(CS) 0.5L
抜群の保温力と実績と安心の耐久性
- 保温力・耐久性を高めた「山専用ボトル」
- しっかり握れるボディリングに、衝撃に強い底カバー
- 本体重量:280g
参考価格 | 5,000円程度 |
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保冷力:保温力 | 6h10℃以下 : 6h77℃以上 |
本体寸法 | 7×7×23.5cm |
重量 | 280g |
渓流キャンプ・推奨道具特選
必携ではないけれど、あれば快適、あれば役立つ道具特選
ファイントラック ゴージュバッグ15
濡れものの乾燥にも、万一の時にも頼りになる
- 合成繊維最高レベルの強度を誇る超高強力ポリエチレン
- 水に浮き、強度を高めながらもロープ径を細く、軽量化を実現
- クイックレスキューベルトを使用すれば、腰に常時携帯できます
参考価格 | 10,500円程度 |
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素材 | 中芯/超高強力ポリエチレン(イザナス®) : 表皮/ポリプロピレン |
寸法 | バッグ12×4×19 : フローティングロープφ6.5×15m |
重量 | 330g |
finetrack(ファイントラック) ゴージュタープ
夏の暑い時にはテントのフライ代わりにも使える
- 大型サイズながら、490gという群を抜く軽さ
- ダイニーマ[R]テープ使用で、テンションをしっかり掛けて張れる
- 屋根型、小屋掛け、シェルター型など多彩な張り方が可能
参考価格 | 27,500円程度 |
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素材 | 15d 66ナイロンリップストップ100% |
寸法 | 360cm×280cm(収納時6×11×19cm) |
重量 | 490g |
KEEN キーン ニューポート エイチツー サンダル NEWPORT H2
渓流サンダルはつま先の保護がキーポイント
- 耐摩耗性とグリップ性に優れたノンマーキングラバーアウトソール
- 軽量で劣化しにくく衝撃吸収に優れた圧縮成型EVAミッドソール
- ラバープロテクションが河原での小石などからつま先をしっかりと保護
参考価格 | 14,300円程度 |
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素材 | アッパー:合成繊維・合成皮革 / アウトソール:ラバー |
重量 | 片足:US7.5(25.5cm)約366g |
特選道具の選定基準とまとめ
- テント道具を担いで渓流を移動するので軽さが第一
- 素材は水濡れしても乾きやすい化学繊維のもの
アウトドア用品店で14年間、販売員をしておりました竹内と申します。現在は長野でフリーのカメラマンをしております。店頭だけでは商品選びやその良さを伝えきれないという思いがいつもあったので、このサイト上で思い切り書かせて頂きます!
フライフィッシングは1985年から続けており、2017年からはテンカラもたしなんでおります。