最上川水系でつまらない釣りをした我々はこの日、広瀬川でまたしてもくだらない釣りを展開することになります。
目次(スクロールします)
広瀬川支流・新川川の作並
アクセス | 仙台市から40分 大崎市から1時間強 石巻市から1.5時間 |
---|---|
対象魚 | ヤマメ,イワナ |
遊漁券 | 年券:4,000円 日釣券:1,500円 |
管轄漁協 | 広瀬名取川漁業協同組合 |
入渓のしやすさ | ★★★★☆ |
歩きやすさ | ★★★★★ |
釣り可能期間 | 3月1日~9月30日 |
この日が中森くんと釣りをする最終日です。緻密な釣りをする彼は裏を返せば妙な心配性です。
車を駐車した地点が斜面になっているのが気になったのか、ストッパーとしてわざわざ石を挟む念の入れようです。
ストッパーに値する、見事な形の石です。
* * *
2人でルアーを投げながら進みます。彼にとっての仙台最終日だからと言って魚が気を利かせてくれるわけもなく、やはり魚の反応が得られません。
しかし顔を川から上げれば普段は見ることの出来ない絶景が広がっていました。
巨人のカプセルホテルのように、浅い横穴が連続する見事な地形です。かつての人類がこのようなものを見かけた時に、何か人知を超えた存在に思いを巡らせるのはとても自然なことに思えます。
水たまりを覗くとヤマメやイワナと思われる魚の稚魚は見かけますが、釣り上げられるサイズの魚にはなかなかお目にかかれません。
同行者も過去最速で泣き言を言いだし、未だ12時にならないうちにおにぎりを頬張り出します。
一方の私も釣りをすることを諦め、面白い形の石を探しだしました。
こんなに綺麗な形の石とはなかなか出会えないものです。崩れやすい堆積岩が一箇所でぐるぐると回り続けて完成したのでは無いでしょうか。
あまりに綺麗だったので持って帰ろうかと思いましたが、これを見た時の家族の表情が容易に思い浮かんだので、その場に捨てておきました。
魚が釣れない時間でさえ石ころを楽しめる自分は、渓流釣りは初心者だが人生の上級者だな・・・と悦に入っていると、私の後方から大きな声が聞こえます。
中森くんが私に対する感謝を突然大声で述べ出したとは到底思えません。嫌な予感で振り返ると、立派なヤマメがネットの中で蠢いています。
やりやがりました。大物では有りませんが、ヒレ、色、体の厚みなどどれをとってもパーフェクトに美しいヤマメです。
一人で釣りをしているときに魚が釣れなくても
「今日、この場所の魚は釣れないモードなんだな」
と納得することが出来ますが、隣りにいる同じ状況の人間が釣ってしまうと、その言い訳は封じられてしまいます。
チンパンジーが飼育員からキュウリを与えられると喜んで食べますが、隣のチンパンジーがバナナをもらっているのを見ると強烈に怒り出すという話を聞いたことがあります。つまり私もチンパンジーも、自分の純粋な満足度を感じているのではなく、隣に居る同類との比較によって満足度を決められる脳の構造を持っているということです。
それを踏まえて、彼にはせめて釣れなかったフリをするとか、針先を付け替えて「体に引っかかっていただけ」と謙遜するとか、そういった配慮が欲しいものです。
一方的な劣等感に踊らされて、ここからは石など視界に入れることもなく釣りを続けましたが、殺気立った私の釣り針に魚が掛かることはありませんでした。
広瀬川本流
中森くんの新幹線の時間に合わせて、仙台駅までアクセスの良いポイントで時間を潰します。
自分の母親の顔面のようにのっぺりした川で、ヤマメという雰囲気ではありません。
私の方はやる気なくただ漫然と竿を振り回していますが、中森くんはこんな時でも必ず魚を釣り上げてくる奴だよな・・・と思っていると、彼が釣りをしている方向からまたしても大きな声が聞こえました。
まさか突然、彼が持っている大きく値上がりした自社株を私にプレゼントすると言い出したわけでは無いでしょう。振り返るとやはり、ヤマメを持って両手を上げてこちらにアピールしています。
これでまた、私がヤマメを釣る義務「感」が発生してしまいました。
ムキになってルアーを投げていると、それをあざ笑うかのように小さなヤマメが釣れました。
このサイズのいわゆる「新子(しんこ)」が大量に河川を埋め尽くしているようで、投げても投げても金太郎飴のように同じような小さなヤマメが釣れてきます。
顔を下に向けながら駐車場へと戻ろうとすると、何かが足元で動きました。
可愛いではありませんか。
かつてはヤマメやイワナ以外には興味がありませんでしたが、最近は他の魚の面白さにも目が行くようになりました。(毛針をヌメヌメにするアブラハヤを除く)これを成長と言うのか、軽度の倦怠というのかはわかりません。
この日で中森くんとは解散し、翌日は一人で漁協が無い河川でヤマメを狙いました。