前日、アマゴの背中に毛針が引っかかってくれたおかげでボウズを逃れた私は、この日からは1人で川に入ります。
この日も熊本の漁協が管理していないエリアで釣りをします。前日までの雨の影響でどこもひどく濁っている状態でしたが、かろうじて釣りができそうな河川を見つけました。
川は両サイドがしっかりコンクリートで護岸されており、ヤマメやアマゴが生息している可能性は低いようにも思え、実際にルアーを投げてみても魚が追いかけてくる様子も、私の姿に驚いて逃げる姿も見られません。
河川はコンクリートで覆われているばかりではなく、一部は赤や黄色の地盤がむき出しになっています。
これらの岩盤は見ているだけなら美しくて楽しいですが、歩こうとすると引っ掛かりがなく滑りやすい傾向があります。
と思いつつ歩いていると・・・
足を滑らせて水中にダイブしてしまいました。
肩からかけているポシェットやカメラは水中に浸かり、左手の肘から先もびっしょり濡れてしまいました。
川で足を滑らせて水没した上に、
「この無様な姿を誰かから見られていまいか」
と、起き上がってすぐにキョロキョロと周囲を確認する様が、ますます1人のおじさんの生きざまを悲しく浮き立たせるのでした。
* * *
胸まであるウェーダーを着ていたので胴体は濡れずに済みましたが、左腕と右手が水中に入ってしまったため体感温度が10度ほど下がってしまったようです。
釣りに対するモチベーションを冷たい風に奪われそうになりつつも流れ込みにスプーンを投げ込んで引いてきた時、スプーンのすぐ脇で何かがギラっと光りました。
まさか、こんなコンクリートに囲まれた川に大きな魚が生息しているはずがありません。しかし30センチくらいの何かがギラっと光ったのは間違いなく、たまたま魚サイズの包丁が流れて来たとも思えません。
突然体感温度が20度くらい上がったかのように、体がカッカと火照りだしました。
もう一度同じ場所にルアーを投げたものの反応が無かったので、似たような流れ込みを見つけながらルアーを投げ続けます。
しかしそれ以降、全く魚らしき反応は得られませんでした。
振り返れば、一度何かがギラっとしたというだけで妄想を膨らませてルアーを投げ続けたというのは、賢明な判断だったのでしょうか。水だけが入ったプールに脳内でマグロを描き出し、勝手にドキドキしながらバカみたいに袖を濡らしながら竿を振り続けていたとも言えます。
ムダな水中でのきらめきを見てしまったためむやみに釣りを長引かせてしまった自分にも腹立たしさが募り、釣り道具を仕舞いながら言いようの無い感情が襲ってきます。
わが衣手を濡らしていたのは果たして、川の水だけだったのでしょうか。
* * *
服を車のエアコンで乾燥させながら、別の漁協が管理していない河川に移動します。
ルアーではなく毛針を浮かべてみると、なんと最初のポイントで毛針に魚が飛びついてきました。針には掛かりませんでしたが、動きの鋭さからトラウトであることは間違い無さそうでした。
最初のポイントで毛針に反応が合ったということは、苦労することなく簡単に釣れそうです。
釣れることを前提にして、動画を撮影しながら竿を出していきますが、魚の反応がありません。しかし最初の成功体験(?)が忘れられず、他の釣り方に変える勇気も持てません。
しかし少し薄暗くなり、本格的にボウズが見えてきたのでルアーに変更します。
するとここから、自分の人生でも珍しいくらいにポンポンとヤマメが釣れてきました。
これまでルアーに魚が食いついてきても5回のうち4回ほどはバラしていた印象ですが、アドバイス通りにフックを研いだところ全くバラすことがありません。
短時間に10匹ほど釣り上げられて大満足・・・。と思っていましたが、いま改めてスマホのフォルダに収められているヤマメの数をどう数えても5匹でした。
昔から正確に数を数えるのが苦手でしたが、まさか倍で計測してしまうほど精度が低いとは思いませんでした。
自分の新たな一面に気付けたことに喜びつつ、熊本での釣りを終えました。
【ロッド】安くてコンパクトなルアー竿
2023年以降は↓を使っています。
【リール】2000番のリール
【ライン】PEライン0.6号(無くても大丈夫です)
【ライン(リーダー)】8ポンドのナイロンライン
【ルアー①】シルバークリークミノー50シンキング
【ルアー②】スプーン・pure3.5g
【ルアー③】スプーン・D-Sライン5g