渓流に同行してくれた女性に恥ずかしいところだけを見せ続けた私はこの日からは一人で三重県内の漁協が無い河川に入ります。
初日に魚が釣れたことに大興奮するという、ガイド役としてあるまじき姿を見せながら折ってしまった竿先の修理も完了し、延竿2本とルアー竿で川に入ります。
※漁協による放流が無い河川なのでポイントは有料記事に記載しています
この河川も放流が無いので渓流魚が居ない可能性も考えながら「もし釣れなかったらすぐに場所を変えよう」と弱腰で釣りを開始します。
すると、最初の流れ込みでルアーに魚が食いつきました。
三重県内ではどちらかと言うとアマゴが多く、イワナは珍しい印象のため、釣れてきた魚がイワナであったことに驚きました。
気を良くして上流へと向かいますが、そこからなかなか魚が釣れません。ルアーがダメなら毛針を投げ込み、それでもダメならルアーに戻し、またルアーを変えて・・・と工夫しますが、それらの小細工をあざ笑うかのように魚はそっぽを向き続けています。
しかしやや大きな流れ込みに差し掛かった時に、魚が二匹、流れ出しの部分に浮かんでいるのが見えました。積極的に餌を待っている状態のイワナだと思われます。この河川は透明度が高いのでのべ竿で近づけば私の姿が魚の目に入って、すぐに警戒されるでしょう。しかしルアーを投げるとすれば、どのルアーを投げれば良いのか・・・。
そんなことを立ち止まって考えていると、上流で
「カサカサ」
という音が聞こえました。どうやら小さな野生動物がこちらに気づかず、移動しているようです。
後で調べてみたところ、ニホンリスと思われます。
普段見かけない野生動物に大興奮し、こっそり近付いてみましたが、彼らの天敵に対する感覚はあまりに鋭く、あっけなく逃げられてしまいました。
それでもこの動物に出会えた奇跡を喜びつつ、ふと我に帰ると、なんと先程二匹の魚を見つけた流れ込みのまさに真横に自分が立っているのに気付きました。
しまった・・・。当然、先程まで優雅に餌を待っていた二匹の美しい魚は、ノシノシと川沿いを行く異様な存在に気づいて姿を消しており、ルアーを投げても当然何の反応もありません。
クソ、あのリスめ・・・。
先程まで出会いに感謝していた野生動物にまで愚痴をこぼしてしまう私なのでした。
* * *
上流に向かって進んでいくと、岩がゴロゴロと大きいエリアに入りました。岩を乗り越えるときに両腕を使う必要があります。岩の表面も滑らかで足を引っ掛けにくいので、慎重に進む必要があります。
修理してやる気満々の竿を岩の上に置いて、両手でしっかり岩をつかんで足を上げようとしたところ、竿がコロコロとおむすびのように転がって、小さな滝壺に落下していきました。
・・・。
一昨日、宿に入って酒で朦朧とした意識の中で必死になって接着剤で修理した竿が・・・。水中にgoproを突っ込んで必死の捜索に当たりましたが、結局この竿は修理後に一匹として魚を連れてくることなくお別れとなってしまいました。
次に来たどこかの釣り人が拾ってくれますように。でもリスを追いかけるのにムキになって魚を釣り逃しますように。
上流に進むと、間違いなく魚が居そうな大きな堰堤にぶつかりました。夕暮れも迫ってきたのでこれが最後のポイントになるでしょう。
ルアーを投げ込むと一匹だけ魚がルアーを見に来ましたが、その魚とルアーとの距離は私と私の家族の心より遠く、食いつく気配が見えません。ルアーやルアーのカラーを変えても魚の気配はせず、万策尽きたので、竿をバンバン連続で煽りながらミノーを泳がせてみました。
風呂上がりに扇風機で頭を乾かしながらスマホで買い物をするタイプのせっかちな私はそもそもゆっくりリールを巻いたりルアーが沈むのを待ったりするのも嫌いで、本当はバンバン竿を煽りながら、ルアーを踊らせたいのです。なんだったら私も踊りたいのです。
すると先程までほとんど反応しなかったイワナが食いついてきました。
まさかと思いながらもう一度同じように竿を激しく煽りながらルアーを引いてくると(連続トゥイッチというのでしょうか)、またもイワナが掛かりました。
ルアーの動かし方ひとつで魚が釣れたり釣れなかったりするんですね・・・。今日初めて知りました。
この成功体験に酔いしれて明日からはバカの一つ覚えで朝から晩までルアーを踊り狂わせそうな予感を覚えつつ、最終日は別の無漁協河川でアマゴを狙いました。