滋賀県米原市の天野川で釣り上げたイワナが珍しい外観をしていました。
その特徴は以下の3点です。
- 完全な成魚にも関わらずパーマークが明確
- そのパーマークがいびつに崩れている
- 背中が異様に盛り上がっている
下手くそと言えどもこれまで10年ほど渓流釣りをしてきて、このようなイワナを見たことが有りません。
「これは大変貴重な一匹を釣り上げてしまった」
そう感じた私は、すぐに水族館に勤務する友人に、このイワナがどのような分類になる可能性があるのか確認してみました。
俺は淡水魚は詳しくないけど、ヤマメとの交雑か、もしくはF2(2世代目)かもしれんな。でもヤマメとイワナは同属異種だから、F2は現れにくいかも。詳しくは札幌市豊平川さけ科学館に聞いてみると良いよ。
明確な答えは出てきませんでしたが、たしかに珍しいイワナであることに間違いは無さそうです。さっそく「さけ科学館」に連絡します。
私「特徴的なイワナが釣れたのですが、他の魚との交雑でしょうか。それとも新種を発見してしまったのでしょうか?」
さけ科学館担当「写真を確認させていただきました。普通のイワナです。」
普通の、イワナ・・・?
さけ科学館担当「はい。普通のイワナです。」
私「・・・。」
さけ科学館担当「はい、交雑魚ではありません。このサイズでもパーマークがあるのは普通に見られます。
天然魚かもしれませんね、という一言で私を慰めようとしてくれた研究者の優しさに甘えることが出来ず、私はしつこく粘ります。
私「パーマークが流れているとのことですが、これは「ナガレモンイワナ」と呼ばれるイワナではなく、ニッコウイワナの異型、という見方で間違いなさそうでしょうか?」
さけ科学館担当「異型ではなく、
普通のイワナ
です。多少パーマークが流れていますが、特に珍しいほどではないので、異型という程のものでもないように思います。」
「異型」や「ナガレモンイワナ」などのやや専門的な言葉を使うことで、小鼻を膨らませて報告してしまった恥をなんとか塗りつぶそうと奮闘してみましたが、それらの言葉も虚しく宙に浮くだけでした。
きっとこの研究者さんは
「こいつは何を言ってるんだ?」
「イワナを釣ったことが無いのか?」
などと思いながら対応されていたことでしょう。
私「あ、ありがとうございます。改めてイワナや魚類の分類に興味が湧いてまいりました!」
八つ当たりしそうな心をなんとか抑えて、わずかに残った人間としての尊厳だけは死守出来たと思います。
これまで人よりも多めに恥をかき続けてきた人生ですが、まだ恥を塗りつける余白が私にもあったのかと驚いた次第です。