前日に湧別川でニジマスを釣った我々は翌日、大きなニジマスが釣れると聞いて早起きをして川に入りました。
しかしいつも通りの展開で、小さなニジマスがたまに釣れるだけです。
河川には海から遡上してきたサケとサクラマスの姿が見えており、ニジマスは彼らの登場を嫌って隠れている可能性がありそうです。
サケが入っていないポイントまで移動するしか無いと上流に向けて動いていると、同行者がふいに足を止め、ほとんど流れの無い深場にルアーを入れました。
(そんなところにニジマスは居ないだろう)
と思いましたが口には出さず彼を無視して先を急ぐと、後方から派手なドラグ音が響いてきました。慌てて振り返ると、同行者の竿が大きくしなっています。
ついに彼はサケを釣ってしまったのか。河川での鮭釣りは違法になるのでこの様子をバッチリ撮影して警察につまみだしてやろうではないですか。
楽しみに上がってくる魚体を待っていると、ネットに入ったのは見事なイトウでした。
羨ましい・・・。
私が同行者に対して優位に立てる点、それは私がかつて一度だけイトウを釣り上げたことがあるというその一点だけでした。
私のその頼りない自尊心を、彼は8lbというか細いラインで引き裂いてしまったのです。
今日は大きなニジマスを狙う方針でしたが、撤回です。もうイトウのことしか考えられなくなりました。
同行者がイトウを釣り上げた方法を真似して、ゆったりした流れにスプーンを入れて跳ねさせますが、なかなか魚の反応がありません。しかしイトウを釣るというのはそういうものでしょう。
「ゴツ」
突然訪れた重い感触に大きくアワセを入れましたが、岩でした。
同行者はイトウを釣り、私は地球を釣り上げました。
端からスケールが違うのである。
その日の夜は上川にある池乃家旅館で夜を過ごしました。
宿:池乃屋旅館
宿はおじいちゃんとおばあちゃんの2人で運営されているようで、おじいちゃんがチェックイン手続きをしてくれました。個室二部屋で8,400円ということだったので、私が10,500円を手渡すと、おじいちゃんは500円を私に返却してきました。
???
わざわざここに記載する必要もありませんが、10,000円支払いの場合お釣りは1,600円なので小銭は2枚増えますが、10,500円支払いの場合、小銭は1枚渡して1枚返却されるので差し引き0枚です。2枚の小銭を許せない心の狭い私と、簡単な計算が出来ない爺さんの間を3往復ほどし続けた500円玉は最終的に爺さんの手にしぶしぶ引き取られ、私がお教えした通りのおつりが戻ってきました。
この計算が彼にはシュレーディンガー方程式を解くかのように難解な数学だったようで、もし私が「お釣りは4,100円ですね」などと言えばその通り持ってきたのでは無いかと怖くなりました。
さらに恐ろしいことに、この宿は全てで6部屋ほどありますが各個室には鍵も貴重品入れもありません。安宿なので当然、私を含めて客層が良いとは言えず、当日残りの部屋は現場仕事の男たちで埋め尽くされていました。
爺「これ、どうぞ」
爺さんはうやうやしくマスクをプレゼントしてくれましたが、重要なのはそっちじゃないぞ、爺さん。
翌日は石狩川支流・留辺志部川とニセイチャロマップ川でニジマス・オショロコマを釣りました。