大分でかろうじてヤマメを釣り上げた私はAIのように心を失くしてしまった友人と別れて小倉に移動します。
小倉と言えば九州の田園調布と呼ばれるほどお行儀が良い教育タウンです。レンタカーで道を進むと、マリオカートかと見紛うアクロバティックなジグザグ運転の車にどんどん抜かされて行きます。
学研都市で生きる人たちは多忙ですから、時間が惜しいのでしょう。
少しお腹がすいたので、小倉名物のゆるふわ麺のうどん店・資さんうどんに入ります。まだ時間は朝の10時半だというのに20人ほどが店内に座っています。富裕層の彼らにとって朝ごはんは家で用意する物ではなく、買う物です。さっと食べられて美味しいうどんはもってこいということでしょう。
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チョウチン毛針釣法で水面に毛針を浮かべると浮かべた毛針に魚が飛びついてきましたが、針には掛かりませんでした。何の魚かはっきり確認は出来ませんでしたが、キラっとする食いつき方や、逃げていく素早さを見る限りヤマメだろうと思います。
それから2時間ほど経過した頃、ようやく魚が掛かりました。
ありがとう、ヤマメさん・・・。
カワムツです。
お金持ちの集まりにうっかり顔を出してしまったニートのように、呼ばれても無いのに登場して勝手に照れている、そんな存在がカワムツです。
遠目で見ればヤマメと大差が無いように見えますが、日本人が好きな魚ランキングで言うとゴンズイのひとつ上、サカナくんの3つ下くらいの評価では無いでしょうか。
ちなみにここで「一匹目のカワムツを釣るまでに2時間」と平気で書いており、その時の私からするとほんの一瞬の出来事ですが、釣りをしない人からすれば途方もない時間でしょう。
2時間もあれば映画を一本楽しむことが出来ますし、元気が良い男性なら2人くらいは子供を作ることが出来るかもしれません。
そして私がこの2時間、水の流れと向き合うことで重大な何かをつかんだということは無く、ただ体力を消耗し、血が混じったおしっこを野に解き放っただけです。
しかし立ちションをした後で洗ったかどうか定かでは無い我が手で、ついにヤマメを釣り上げる事ができました。
※漁協が無い河川なので、釣れたポイントは有料記事に記載しています
なんと美しい魚なのでしょうか。
この後突然ヤマメが湧いてきたようで、15センチ以下の小さなヤマメを立て続けに釣ることが出来ました。
ところで、釣ったヤマメを川に逃しているということを人に伝えると
「なんで食べないの?」
と聞かれることがあります。理由は簡単で、ヤマメを舌で味わうよりも、目で味わった方が美味しいと思っているからです。逆にあれですか、食べられるものは全部食べたいと思うあなたは、競走馬を見ては馬刺しを連想し、野ウサギを見れば煮込みたいと思うんですか。
八つ当たりをしてしまい、失礼しました。