鹿児島霧島で無料ヤマメ渓流釣り&民宿女将のロボット対応に困惑

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鹿児島県の温泉地である霧島にも2010年頃までは霧島のいくつかの河川にヤマメが自然繁殖していたようですが、最近は死滅したのではと見られているようです。火山活動が活発になり、水温上昇と水質の変化が原因だとか。

ふふ、素人め・・・。

ヤマメの数百万年?と言われる歴史をたかだか人間の一生という、ヤマメに言わせればウグイの脱糞のような短い時間軸で捉えるのはあまりに浅はかというものでしょう。水温が上がらなかった支流や噴火の影響を免れた最上流にある深場で息を殺して生き延び、そしてまた拡散していくのです。

多分・・・。

山に入ってみると、想像通りに十分な水が流れており、本州であれば間違いなくヤマメやイワナが棲息している環境です。

大きな違いがあるとすると、温泉水が流れ込み過ぎているということです。もちろん温泉が流れ込んでいるからトラウトが生きられないわけではないですが、湯量の多さが想像を絶しており、石は鉄が酸化して真っ赤です。

霧島の渓流
石が赤いのは水に大量の鉄が溶けているのが原因だとか

 

確かに厳しい環境には違いないですが、それでも彼らが生き抜いているポイントはあると考えて標高500mほどのポイントに入ってみます。

ゲートの横に立っている看板は実際には立入禁止と書かれていたのですが、山奥でよくある「車の侵入だけが禁止」の看板だと勝手に思い込み先に進みます。すると、林道を歩いているだけなのになぜか頭がクラクラしてきました。

少し疲れているのでしょうか。

あるいは旅先で寝不足になっているのかもしれません。

色彩が薄くなり、視界もぼやけているようです。以前真夏に脱水症状を起こしたときもこんな感覚だったな。夢を見ているような酔っ払っているような感覚ですが、きっと川のあたりから吹き出しているガスが影響しているのでしょう。

それでも引き返すことは無く川に降りて水に手を入れてみると水温ははっきりと温かく、足湯に最適な「湯加減」です。これではヤマメどころかコイ科の魚すら棲息できないでしょう。意識が朦朧としていることは何とか自覚出来ているので、急いで車に引き返します。

その間もどんどん脳みそが溶けるような感覚で意識は一方的に遠のいていきます。これは急いで川から逃げた方が良いのではと考えますが、走れば余計に毒がまわるのかなと、同じペースで歩き続けます。というか自分の意思とは関係ない区、独立して足だけが一定のリズムを刻みながら勝手に動いているような感覚です。

急に家族のことが頭をよぎります。私が死ねば悲しむだろうか・・・いや、思い出のぬいぐるみをなくしたくらいには悲しむだろうけど、3年後には命日すら思い出さないでしょう。むしろ私が死んでしまったほうが子どもたちにも良いのでは・・・。

と思っていると、何とか倒れること無く車に辿り着き、この看板を読みます。

 

湯の川温泉立入禁止

 

地中から吹き出している硫化水素をたくさん吸い込んでしまったようです。

 

硫化水素中毒って?
硫化水素ガスは嗅覚の麻痺や眼の損傷、呼吸障害、肺水腫を引き起こし、死に至る場合もあります。(厚労省

 

霧島の火山活動が活発であることに加えて、雨天時には河川の周囲に硫化水素が溜まるのでかなり危険だった様子です。少しずつ意識を取り戻しながら今宵の宿に移動します。

 

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不思議女将の民宿

この宿を紹介するパンフレットでは「心が通い合うお宿」というようなことが書かれていたはずで、実家に帰るような気分で民宿に向かいます。

駐車場から荷物を運び入れようとすると、スロープのど真ん中を立派なサボテンが防衛しています。

民宿のサボテン

 

もし車椅子の人が宿に入る場合、サボテンに刺されながらチェックインすることになるのでしょうか。この時点で通い合いそうな心が有るように見えませんが、どんな方が運営しているのでしょうか。

迎えてくれたのは少し気難しそうな70歳ほどの女性です。年をとって頭が呆けてニコニコするお年寄りが居ますがそれとは逆で、良くない方向に冴えて神経質になっていそうな雰囲気が顔からにじみ出ています。

WEBサイトでは洗濯機が使えると記載されていたので、洗濯物を部屋で乾かそうかと扇風機の有無を確認したところ

ありません。コインランドリーに行ってください!」

と、リアル婆さん顔のペッパー君と話しているのではと勘違いしてしまいそうな冷たい返答が返ってきました。我々は資本主義や都市化の悪口を言いたい人々からの洗脳で「田舎の人は心優しい」と思い込まされていますが、以前私が宿泊した京都の安宿の陰湿な夫婦を例にあげるまでもなく、心の淀んだ人間は田舎でも都会でも似たような濃度で汚れているようです。

女将さんも周辺の川にヤマメが居たことは知っているようだったので「こうも温泉水が川に入るとヤマメがボイルになりますね」と軽くボケてみると、ホホホとお上品に笑っておられます。これで少し良い関係になれたでしょうか。

部屋で荷物をまとめた後、洗濯機を使わせてくださいと声をかけると

「洗濯機?早めに使ってくださいね!」

と、先程より共感性能が落ちたペッパー君から返答が浴びせられます。ヤマメボイル案件で少しは打ち解けたかと思いましたが、5分で関係もゼロに戻る設定なのでしょうか。

そういえばこのお宿はビールが1本プレゼントしてもらえるとWEBサイトに記載されてました。チェックイン時に女将が書いていた手書きの伝票にも「ビール」とわざわざ書かれていましたが、ここまで女将はそのそぶりすら見せていません。

もしここで規約通りにビールを要求しようものなら、両目を見据えて

「嫌です」

と突き放されるか、お上品な嫌味とともにぬるいビールを手渡されるのでしょうか。ロビーにある冷蔵庫には大量にビールが置かれているので、勝手に持って行った方がお互いの心の平穏のためかなと思いつつ、でも勝手に持って行ったことを目ざとく見つけられた後の方が始末が悪いと思い、直接声をかけることにします。

ものを頼む時にはまず御礼から・・・と事前に戦略を練り、洗濯機を使わせていただいたお礼からお願いに移ることで良い流れを作ろうと準備しつつ声をかけると

婆「ハイハ~イ♪」

と、好きなアイドルに握手してもらった直後かのように目にハートを浮かべて登場しました。ビールの件もなんなくOKでむしろ「発泡酒でごめんなさいね・・・。」などと、唐突に人間の心がわかるかのようなことを言いだしました。何があったのかは不明ですが、この30分で突然共感能力が向上しています。

安定して機嫌が悪い人より感情ガチャ型の方が恐ろしいというのは盲点でした。

さらに宿を物色していると、恐らくあの女将さんの娘と思われる方の仕事の広告チラシが置かれていました。30歳ほどの娘さんは近いところで保険のセールスをしている様子。自分の性格や、転職して保険の営業になった経緯などが書かれています。あの女将の娘なので恐る恐るプロフィールに目を通してみると、気になる箇所を見つけました。

 

性格 母も驚く行動力
家族 子供4歳と1歳。
離婚ほやほやのシングルマザー。
特技 深く物事を考えられること

・・・?

ロボ母にどの程度の行動力があるのか、という問題はここではいったん置いておきます。

シングルマザーを選択することも一つの立派な判断だとして、1歳の子を持つ離婚ほやほやシンママという家族構成と並べて掲載する特技が「思慮深さ」というのは、少し破天荒過ぎはしないでしょうか。

もしかして、このプロフィールを書く時に特技欄で日をまたいでしまい、それまでの人格が母親譲りでゼロリセットされたのかもしれません。

 

霧島の河川へ

昨日とは別の霧島の河川に入ります。ここには注意を呼びかけるような看板は出ていなかったのでウキウキ気分で川に入りますが、やはり硫化水素が濃いのか、ぼんやりと意識が遠ざかっていきます。昨日は看板を見ずに川に突進してしまったことを後悔しましたが、看板が無ければ安全ということでは無さそうです。

水温も高くヤマメの気配も無いので、大きく移動して別の山に移動します。

今年最後の渓流釣りのポイントとして9月末に鹿児島までわざわざ来たのにヤマメを釣ることはおろか、死骸の姿すら見かけずに引き返すのでしょうか。最後の釣り場の候補地は道路の両側から草が飛び出す未舗装のガタガタ道の先で、気にせず進んでしまってレンタカー屋さんに怒られる自分の姿が具体的に想像できてしまいますが、そんな理性とは反対にアクセルを踏み込んでしまいます。

細道を抜けてなんとか川に降り立ってみると、どうやらここには温泉水は湧いていないようです。川沿いで二桁の引き算でも出来そうなほど意識がはっきりしているのは鹿児島に来て初めてかもしれません。

しかし9月末とは思えない猛暑のせいか、水温はやはりぼんやりとぬるく、毛針を流してもカワムツしか釣れません。

レンタカーを借りた駅が辺鄙なところなので早く釣りを終わっても移動する電車が無く、惰性で毛針を流していると魚が掛かりました。

ヤマメでありますように!

 

霧島のヤマメ2

ヤマメ!!!

胸鰭や腹鰭のなんと美しいことでしょう。

普段とても理性的で、ものごとを深く考えられることで知られる私も大興奮です。スピードスケートで優勝した選手にでもなった気分か、両手を天にかざし、神に祈ったりしながら嬉しさのあまり叫びます。

【有料記事】鹿児島近隣で無料でヤマメが釣れるポイント

 

今年もひどい渓流シーズンでしたが、こんな良い終わり方もあるのですね。日頃の行いとしては、80歳近い父親に悪態をついたり見知らぬビジネスウーマンのプロフィールにケチをつけたりとロクなことをしませんでしたが、神はそれほど気にしていないようで大助かりです。

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