この日は目上の方を愛知川にご案内することになりました。必ずや釣っていただかなくてはいけません。
愛知川支流の茶屋川
茶屋川は濁りが出にくいので、万が一雨が降った後でも良い場所だと考えていました。
ここではたくさんの動物達にも出会えました。こちらはヤマカガシでしょうか。
こちらはマムシですね。
先生と自然の中で、動物の話をするのはとても幸せな時間でした。
結局初日は釣れませんでしたが、翌日の夜まで釣りを出来る時間はあります。釣れない時間こそ最高のスパイス。私と先生との一泊2日の釣り旅行は、希望に満ちていました。
【当日のお宿】1泊2食6,000円で料理が絶品のかわきや
仕出し屋さんも営まれているだけあり、料理は完璧でした。アユの塩焼き、イワナのフライ、永源寺こんにゃく、丁字麩というこの地方の珍しいお麩など、地元感を感じられる工夫も素晴らしかったです。
きっとアユもイワナも養魚場で育てられたもので「目の前の、その川で捕れた」なんていうのはちょっとした言葉の綾ではないかと思いますが、そんな細かいことも気にならないくらいの味でした。※かわきやの住所・電話番号はこちらです。
愛知川支流の御池川・帰雲寺あたり
2日目は朝5時にふとんから飛び出し、御池川に向かいました。ここは比較的開けた川なのでフライフィッシングをされる先生に楽しんでもらえるのではとの私の配慮を感じて頂けましたでしょうか。え、自分で言わなくても良い?そういうものですか、失礼いたしました。
結局朝6時から12時まで、6時間も時間を費やしましたが、最後まで我々の針に魚が掛かることはありませんでした。
それでも先生は「素晴らしい景観で釣りが出来て、幸せですよ」と仰ってくださいました。そんなお優しいお言葉に私は救われている場合ではありません。そろそろ釣ってもらわないとさすがにマズいと焦りだした午後でした。残る時間は半日です。
御池川の上流域から
こんなに変化の無い川に魚などいるのだろうか、と疑っている私に先生が声をかけてくださいました。
「釣れない君、その壁沿いに魚がいるかもしれないよ」
見ると、何の変哲もない流れでした。大変失礼ながら、私はあらぬ疑いを持ってしまいました。きっと先生はその先の良いポイントで釣りたいから、私をこんなどうしようもないポイントに縛り付けて置く気では無いか、と・・・。
先生に教わったところに毛鉤を浮かべてみると、あら不思議、イワナが釣れてしまいました。
先生「やったじゃないか!」
釣れない男「釣れましたよ、先生」
先生「嬉しいねえ、釣れない君。良かったねえ」
先生はまるで我が事のように喜んでくださいました。2日目の夕方にようやく1匹釣れて気分は最高・・・いや、ちょっと待て。
私が釣っている場合ではないぞ。
しかも教えてもらったポイントで。
それまで先生を差し置いて良いポイントを全て自分で叩いてしまっていたことに、その瞬間気が付きました。それからはわざとらしく先に先生に釣ってもらうようにしたものの、時すでにオソシ。
結局最後まで先生の竿先に木の枝以外の何かが掛かることはありませんでした。こんなことなら私も釣れなければ良かったと悔やんでおります。ほんとうです。
いや、ちょっとウソです。
先生は2時間もかけてやってきた川で、2日続けて丸坊主。しかもガイド役の小僧は自分だけ釣って大喜び。
先生の「素晴らしい釣り旅行を企画してくれてありがとう、釣れない君」
という言葉に私の心はチクチクと痛むのでした。