岐阜県揖斐川支流坂内川でイワナ渓流釣り

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岐阜県揖斐川支流坂内川

アクセス 大垣から1時間強(高速)
岐阜市から1時間20分
長浜から45分
彦根から1時間
対象魚 イワナ
遊漁券 年券:4,000円
日釣券:1,000円
管轄漁協 揖斐川上流漁協
入渓のしやすさ ★★★☆☆
斜面を降りるので要注意です
歩きやすさ ★★★★★
魚の量 ★★★★★
魚のサイズ 平均20㎝、最大30cm

 

この日は友人で渓流釣り2回目の友永さん(仮)を連れ立って揖斐川の支流に入りました。

友「見ましたよニートさん。金持ち向けのガイドサービスをしているらしいですね。」

私が2年ほど前に冗談で立ち上げた資産家限定のガイドサービスのことを仰っているようです。

私「えぇ、まぁ。15万円をドブに捨てられるレベルのお金持ちが来たら面白いなと思いまして。」

このガイドサービスはツイッターでプチ炎上を見せてくれただけで、一向に資産家からの問合せが入る気配はありません。しかし今日は1日で15万円を請求するガイドの腕前を見せなければいけません。

* * *

 

午前10時頃に川に到着し、駐車場から川の方を見下ろしてみます。道路からは生い茂った草で川が遮られており、水量や川の雰囲気が見えません。

私「斜面を降って川まで降りましょう」

そう言い残すと、私は3メートルほどの斜面を猛スピードで川に降りて行きました。すると後ろから、斜面をゆっくり降っている同行者の声が聞こえました。

友「ところでニートさん。ネットにアップロードされている、人が山から滑落して死ぬ動画って見たことありますか」

私「見たことないですね。You Tubeに出てるんですか?」

友「いえ、ニコニコ動画ですガガガガガガ」

異音に気がついて振り返ると、彼は狙った以上の速度で斜面を滑り落ちてしまったようで、手を軽く負傷してしまったようでした。

揖斐川坂内川イワナ渓流釣り

・・・。

2ヶ月前の徳島でも渓流釣り初トライの人に急斜面を歩かせて膝を打撲させてしまいましたが、今回も同じ失敗をさせてしまいました。

水面に夢中だったあの時を振り返ってみると、彼が斜面を下りながらなぜ唐突に滑落死の話をしだしたのかを考えるべきでした。

「安全」という、ガイドが意識すべき最優先事項すらすぐに忘れるくせに、金持ち向けにガイドをしようという了見が我ながら不明です。

* * *

 

釣り方は延べ竿に短い糸と毛針を結びつけたチョウチン毛針釣りです。

「一投目で釣れちゃうことがあるんですよね」と言いながらまずは私が毛針を浮かべると本当に魚が食いついてきました。

なぜ一投目を投げているのがガイドである私なのかはさておき、いきなりの魚の反応に大慌てでアワセたので、逃げられてしまいました。

「魚が水面を意識しているようですね、今日はたくさん釣れますよ」

と竿を友永さんにお渡しすると、開始10分で1匹目の釣果を得て頂きました。

私のほうが大興奮で「おっきぃにゃあ!!」と言っているのが恥ずかしいです。

揖斐川坂内川イワナ渓流釣り

予想が当たったことがまるで無い私の人生では珍しく、予告通りに釣って頂くことができ、ガイドである私もご満悦です。

以前、友永さんが渓流釣り初挑戦の際にも同行させてもらいましたが、そのときもしっかりアマゴを釣っておられました。私に似てセンスが良いのでしょう。

そう言えば前回の釣りでは彼だけが魚を釣り上げ、ガイド役の私はボウズでした。

 

今回は魚を釣れる私の姿も見せねばばらぬと、彼の竿を奪って必死に毛針を浮かべてなんとかイワナを釣ることができました。

揖斐川坂内川イワナ渓流釣り

二人ともに釣果が出れば、精神的な余裕が生まれてきます。

友「とりあえずこれで満足ですよね。あとは適当に遊びながら、釣れたら釣るという感じで」

私「ですね」

次は彼に竿を出してもらいます。

同行者は普通にイワナを釣ることには飽きたのか、毛針を虫のように動かして魚に食いつかせようとしています。

針には掛かりませんでしたが、魚が飛び上がってきたのを見て大盛りあがりです。

その後は毛針を跳ねさせたり自然に流してみたり。魚の反応は次々と見られるのですが、一向に針にかかりません。

その後ようやく、毛針に魚が掛かりました。

釣り上げる前に逃げられてしまいました。

友「アワセのやり方がマズイんですかね。」

私「うーん、どうなんですかね・・・。気にせず続けましょう。」

またも毛針にイワナが飛びついてきましたが・・・やはり針に掛かりません。

釣りガイドとしてはアワセのタイミングや強弱について何かしら言わないといけないと思いますが、私には正直なところ、何の問題も無いアワセに見えました。

「今ので、良いと思うんですけどね~」

と、素人丸出しのヘナヘナの感想を述べることしか出来ませんでした。

「二人共が釣果を得たのだからこれ以上釣れなくても良いよね」という合意を得たはずなのに、ガイドである私の方が「絶対もう一匹釣らせる」とムキになり、

「ほらあそこ、あそこに毛針落として!」

などと極めて曖昧な指示を送り続けて同行者から白い目を向けられるばかり。私がもし資産家なら、こんなガイドのためには1分たりとも使いたくないでしょう。

こんな客目線ゼロのガイドが、すでに飽きているであろう同行者を無理やり急き立てて釣りを続けさせていると、明らかにイワナが潜んでいそうなポイントに到着しました。

イワナが飛び出してきました。動画ではわかりにくいですが、我々には果てしなく大きくそれまで目にしていたイワナとは違う魚にすら見えました。

 

結局この大イワナも2度と毛針を見に来ること無く、夕方が近づいてきたので釣りを終了し、近くを観光することになりました。

* * *

 

土倉炭鉱の選鉱場跡へ

釣り場近くに、廃墟として有名な土倉炭鉱があったので、立ち寄ってみたところ、我々以外にも2人の訪問者がありました。

友永さんは豊富な知識と教養を武器に他の訪問者と難しい話をしているようなので、私は写真を撮影するフリをして1人その場を離れます。

土倉炭鉱

 

ここでは1910年(明治43年)から1965年(昭和40年)まで銅や硫化鉄などの鉱石が採掘されており、写真の施設はその鉱石の純度を上げる「選鉱場」として使われていたものです。

採掘が始まった明治後半、日本は産業育成のために多くの物資を海外からの輸入に頼っており、その原資となっていた輸出品が銅でした。輸出品のメインキャストであった銅は、明治後半には算出量の約8割が輸出に回されています。

しかし海外での銅の産出量が増えて価格が下がったことや、足尾銅山鉱毒事件で有名な公害事件もあり、昭和半ばに土倉鉱山は閉山となっています。閉山の8年前に行われた調査レポートがネットに上がっていましたが「魚類を致死せしめることはないが生息に適しない程度に汚濁している」と、その影響に言及されています。

などと、知ったようなことを書きましたが全てZ会さんの子供向けの説明を丸写ししただけです。てへへ。

土倉炭鉱

鉱夫達の仕事は危険な重労働だったでしょうから、給料は悪くなかったでしょう。最も多い時期には鉱夫とその家族1,000人が近くの集落である金井原に住んでおり、商店や銭湯だけでなく映画館まであり、まさに今で言う新宿のように賑わっていたことでしょう。

この鉱山が閉ざされた1965年のまだ雪が残る3月、鉱夫やその妻はどんな表情で最後の宴に参加したのでしょうか。

* * *

炭鉱跡ウォッチングに大満足の帰り道に本日の釣果をよく思い出してみると、2人で2匹しか釣り上げられていません。

一投目でイワナが飛び出してきた時に

「今日はたくさん釣れますよ」

と満面の笑みで言い放ったガイド役は、一体誰だったでしょうか。

車で私の隣に座る方がガイドのあの脳天気な発言を忘れていてくれますように・・・そう祈りながら山を後にしました。

御慈悲の心で「いいね!」
してやってください

読む価値は無いが