「大きなニジマスを釣るなら阿寒川しかないですね」
「5メートルおきにニジマスが目視できるんです」
「40センチ以下は、まず釣れませんよ」
そう北海道の知人の言葉に焚き付けられて、九州から私が、もう1人が東京からまんまと阿寒川にやってきました。ここは釧路空港から車で1時間ほどのところにあるキャッチアンドリリース区間で、1日1,500円の日釣り券が必要です。>>公式サイトはこちら
ラビスタ阿寒川近くの釣り人専用駐車場
放流されているのでニジマスの美しさは保証しないが、デカさと釣れることだけは確かとのこと。現地の釣り人専用駐車場に到着すると、どこから現れたのか、気色の悪いじいさんがぶつぶつ独り言を言いながら近づいて来ました。
「死ぬかとおもたー」
「死ぬかとおもたー」
すでに死んでいるのではと半ば疑いましたが、かろうじて生きているじいさんは釣り券の確認に登場した様子。近くに潜んで釣り車が現れるのをじっと監視しているらしい。
初対面の人間同士としての挨拶くらい普通に出来ないのかと思いましたが、釣り券の監視をするじいさんの接客レベルなどこの程度でも許されるのでしょう。釣券のチェックだけすばやく終わらせると、目を合わせないように川へ逃げます。
川はラビスタ阿寒川という高級宿の脇にも流れ込んでいますが、渓相は豊かで変化に富み、それでいて歩行はしやすいように整備されています。3人でルアーを投げまくりますが、一向に反応がありません。
北「減水で反応が悪いのかもしれませんね」
阿寒川に私と友人の2人を誘った北海道在住のルアーマンの顔が焦りだします。
北「しかし、釣れれば大きいのは間違いありません」
彼の言葉通り、眼の前には大きなニジマスが泳いでいるのが見えますが、当然ルアーには見向きもしません。というか人間の姿を見ても驚きもせず逃げもせず、川に泳いでいる鯉のようです。
諦めずにルアーを投げていると、魚が掛かりました。巨大ニジマスの予感!
どこかで見たような、というか、どこでも見かけることが可能なサイズのヤマメでした。どこかから登ってきたのでしょうか、うろこが剥げていました。
北「こんなはずじゃなかったんですが・・・」
おそらく、こんなはずだったのでしょう。
北「もう少し頑張りましょう!」
この北海道さん、自らを「先導役」と称して遠方から来た我々よりも前で釣りをするという真性のご都合主義釣りガイドで、我々にポイントを譲ることがないことは当然のこと、私が少しでも前に入り込むと容赦なく追い抜いていくという前のめり具合なのです。
従って、我々遠方から旅行者はガイド殿が入念に叩いた直後のハイプレッシャーな環境で釣りをするという、修行的な環境を頂戴することになりました。
ブツブツと文句を言いながら釣り続けると、2人の釣り人と遭遇します。全く釣れていない我々に反して、彼らは大きなニジマスを何匹か釣っているとのこと。減水とか何だとか、環境に原因を押し付けていたことを反省し、釣りを続けると本州から来た友人が大きなニジマスを釣りました。
その後も彼は3匹ほど大きなニジマスを掛け、釣り上げたりバラしたりしていましたが後半は釣り堀のような気分に飽きているようでした。勝手に飽きられては困るとのことで、釣り方を教えてもらうことに。
本州「光らない色のスプーンを流芯に投げて、ゆっくりゆっくり巻いて」
私 「承知しました」
人の釣り方をなぞる形でしか魚を得られない私も、彼の真似をして釣ることが出来ました。
7g~10gほどの、真っ黒のスプーンが良さそうとのことでした。
恥ずかしいのでこっそりメジャーを持ち出して長さをはかると、50センチちょうど。阿寒川のアベレージサイズ、私にとっては巨大ニジマスとなり、札内川や音更川に期待を高めるのでした。

100円ロッカーではついつい忘れ物の小銭を探してしまう親父譲りの貧乏性で、極端に安物の釣り道具を愛用しています。また生まれながらの不器用のため、難しい動き無しで渓流魚が釣れるチョウチン毛針釣りを愛用。大した魚を釣ったことがあるわけでもないので釣れたポイントは全て公開しています。
「大物が釣れた感動で膝が震える」経験をしたことはなく、疲労と栄養失調でいつも小刻みに震えています。