湖北でビワマスジャンプを見た私は、この日こそビワマスの産卵現場を見ようと滋賀県の姉川に向かいました。
今回は私のファンを自称する方とビワマス観察に同行です(ファンを自称しているのでは彼ではなく私)。
私の釣りブログにはクレームが入ることは多々あれど、応援して頂けるメッセージを頂くことはほとんどありません。そんな中、数年前に彼から頂いたメッセージはとても印象的でした。
メッセージを頂いた当時、彼にとって大事な方が長い闘病の末に息を引き取ったそうです。そのことが原因で気が滅入り「命と狩猟について考えるうちに」私のブログを見つけてくださったのだとか。
「釣れないニートさんの文章を読んでいると少しの間現実を忘れ、背中を押してもらえるような気持ちになりました」
と書いて頂いていました。
私のブログをどう読むと、どこに背中を押されるのか一切わかりませんでしたが、こんな温かいメールを送ってくださる彼を、私のファン第一号に勝手に認定いたしました。
* * *
そんな彼と命について学ぶべく、産卵に臨むビワマスが遡上する姉川にやってきました。
姉川緑地公園から川に降り、川沿いを散策すると、弱ったビワマスを見つけました。
恐らく産卵後のビワマスでしょう。
ビワマスのメスは産卵後、体力の続く限り産卵場所を見張ると聞いたことがあるので、この近くに産卵床があるのでしょうか。(これがメスかオスかは私には不明ですが)
この日は産卵現場のビワマスを観察するのが目的でしたが、この現場では産卵後のビワマスを2匹見ただけでした。場所を変えてみようと川から道路に上がってみると、期せずして同行者のご両親が散歩をしているのに遭遇しました。
ご両親との感動の対面
先述の通り、彼は私のファンであり、もう少し思い切った表現をすれば、彼は私のブログを糧に立ち直って今があるのです(あぁ、思い切り過ぎた)。
そんな私との対面を、きっと彼のご両親も喜ばれるでしょう。10メートルほど先に見えたご両親に向かって私は
「いつもお世話になっております。」
と、いつもより声を張り、人格的にも立派な恩人たるに相応しい風格を崩さずにご挨拶します。
すると、ニッコリ笑って私との初対面を喜んでくださるだろうという予想に反して、ご両親は首を4度ほど曲げただけのハトの首振りのように軽い挨拶と同時に「あぁ・・・。」という挨拶とも取れない小声を残しただけで、スタスタと去っていかれました。
(散歩ペースにしては、少しスピードが速いような・・・。私から逃げておられるのか?)
いぶかる私に同行者の彼は「息子に気を遣って、干渉せずに去ってくれたのでしょう。」と両親と私を同時にフォローしてくれていましたが、私としてはご両親がなぜ足早に去って行ったのかが気になります。
そこで、前日の彼と親御さんとの会話を勝手に想像してみました。
彼「明日、友達とビワマス見に行くねん」
親「友達って、誰なん?」
彼「俺が読んでる釣りブログを書いてはる人」
親「釣りブログ?なんやそれ。その人、本業は何してはんの?」
彼「定職にはついてないみたいやけど。」
親「・・・。」
彼「明日、父ちゃん母ちゃんのいつもの散歩コースの近くに俺らも居るから、顔を合わせるかもしれへんな」
親「・・・。」
私は無言で歩くご両親の背中を見ながら、お母さんが子供に「たけし君と仲良くしちゃダメよ」と注意喚起するドラマのシーンをイメージしていました。
* * *
続いて、姉川古戦場へ向かいます。
橋からのぞき込むと、産卵後のビワマス死体が見えました。
目を凝らすと白くなっているビワマスが10体以上、川底に沈んでいるのが見えます。
棒のように見えるものは全てビワマスの死骸です。
姉川でもかなりの数のビワマスが産卵に参加しているようです。
メスの死骸のお腹を見てみると、卵が少し残っているようでした。産卵でも出しきれない卵があるのでしょうか。
せっかくなので、残った卵を取り出して、川底に置いて撮影させてもらいます。
こういう写真があれば「ビワマスの卵発見」というニセ写真で使えるかも!などとふざけている私と違い、彼は
「偶然にもこの卵に精子がかかって、受精する可能性だってゼロでは無いですから」と真剣な顔で卵を取り出し、丁寧に水の底に並べて行きます。
ふざけてしまい、すみませんでした。どうかご両親にこのことは伝えないでください。
* * *
翌日は彼は別の用事があるとのことだったので、一人で姉川の「虎姫やな」近くに入りました。
ここでは、産卵前のビワマスの群れを見つけることができました。
撮影が下手くそなのでビワマスの姿が見にくいですが、ご容赦ください。本当はこんな風に撮りたいのですが・・・。
何が違うのでしょうか。
せっかくなので動画だけでなく、静止画でも撮影を試みます。
何が写っているのか、撮影した自分でもわからないくらいの完成度です。
ちなみに、撮影を続ける中でもっとも綺麗に写ったのは、ふいに流れてきた葉物野菜のような草でした。
その後もこの群れが産卵に移動するのをじっと待ちたいと思いましたが、持ち前のせっかちが起動してさっさと川を去ってしまい、結局今回もビワマスの産卵現場を見ることはできませんでした。
* * *
帰り際、昨日姉川に同行してくれた方に挨拶をしにいきました。
実は数年前に彼から頂いたお礼のメッセージに私はとても感謝しており、それを一言伝えたいと思ったからです。
先程せっかちだった私ですが、ここでは照れ屋な部分が出てきてしまい、彼に向かってお礼を言うどころか当時頂いたメッセージの話すら出来ず「では、また」と言い残しだだけで、彼の両親のように足早に去ってしまいました。
・・・。
そうか。
彼の両親が足早に去った理由は、私を不憫に思ってのことではなく、私の圧倒的なオーラに「照れて」去って行かれたのかもしれません。
「うちの息子が辛かった時期を乗り越えられたのは貴方のブログのおかげです」
なんてなかなか言えないですもんね。その気持、とくと伝わりましたよ、お父さん。お母さん。