25年7月北海道渓流釣り②謎の巨大魚と遭遇

記事内の商品にPRを含むことが有ります。

 

道の駅の店員と醜く争った翌日も近いエリアで釣りをします。前夜の打ち合わせでは朝4時に宿の前に集合(北海道ではすでに明るい)することで合意していますが、朝3時55分になってもダニエル(仮)が居る隣の部屋から物音がしません。壁を強めに蹴飛ばすと、

「んぁ~い」

という声が聞こえました。合流後に「寝てました?」と尋ねると

「半分起きてました」

と回答してくれました。それは起きていないということだぞ!なぜかちょっとだけ誤魔化そうとする可愛いダニエルさんでした。

私「今日もどうせダメやろうな~」
ダニ「いいえ、58センチのニジマスが釣れますよ」
私「すぐバレるやろうな~」
ダニ「とんでもないダッシュを繰り返しますが、無事に穫れます」

私は「今日もどうせ駄目だ」と自分に言い聞かせることで落ち込まないための防衛戦を丁寧に張っていくタイプです。また九州の武藤くんなどは自分だけ釣れないとすぐさま面倒くさい彼女モードに豹変しますが、ダニエルは釣る前も、そして釣りをした後は釣れても釣れなくても常にご機嫌です。

入念に備えた始めての司法試験の受験日を「うっかり間違えて」1年浪人した翌年に一発で合格する特大の才能を見せつける一方、釣り場では必ず持ち物を失くし、さらに川原に落ちている鹿の角や黒曜石などの余計なものを収集せずにいられないという、付き合っていてどこまでも飽きない人物です。

 

* * *

 

朝一番に釣り場に入っているので魚の活性も高いだろうと、目立つ色のミノーを中心に投げていきますが全く反応がありません。その後ミノーのカラーを変えてもスプーンを投げても反応が無いので、最後の切り札の黒スプーンを投げてみました。

 

 

大物とは言えないサイズなのでうっかりはしゃいだりしないようにと思っていましたが、その後のダニエルとの会話で少し口数が多くなっていることに気づき、一人照れてしまいます。

しかし全体を通してみればこの日も30度近い猛暑の影響か魚の反応は少なく、朝の7時半には既に昼ごはんのことしか考えられない状態です。

その後ダニエルがミノーを投げていると、かなり大きいニジマスが追いかけてきたとのことでした。節操の無い私はすぐに釣り方を真似してミノーを下流に投げて引っ張る釣り方をしたところ、1頭目で対岸の根に引っ掛けてしまいました。

・・・。

400円のスプーンではなく、手持ちの中で最も高価なミノーを失くしてしまいました。

created by Rinker
スミス(SMITH)
¥1,784 (2025/08/10 00:38:57時点 Amazon調べ-詳細)

俺の1,800円・・・。もしかすると私の1日の労働で生み出し得る価値よりも高いのでは無いでしょうか。ルアーをなくすのは仕方が無いことなので、いつも高価なルアーを買うときには「そのルアーを投げるにふさわしい、大物が期待出来るシチュエーションに限って使うぞ」と心に誓っているのですが、私の眼の前に広がるのはあまりにそれにふさわしくない凡庸な景色です。

強い後悔からその後は安いルアーをチマチマ投げ、そして当然のように魚も釣れませんでした

 

* * *

 

今日も釣り場ではダニエルのご配慮で自分が先行させていただく時間が長いのですが、たまに後ろを振り返ると同行者が足元から何かを拾い上げています。なんと、今日も例の収集癖が顔を出してしまっているようです。

彼が拾い上げて自宅に飾っていた鹿の角や黒曜石は全て奥様に廃棄されているということを先ほど車中でもしていたのに、まだ拾っているとは・・・。

この暑さゆえ、ただでさえ荷物を少なくしたい渓流釣りの最中に、合計3キロ以上と見られる黒曜石を拾い集め、それを見ては少しだけ微笑んでいるようです。

彼は仕事で非行に走った少年の弁護を担当することも有るそうですが、そんな時にも子どもたちを侮らず、人間は変われるはずだと信じて正面から話をし続けているそうで、非行少年と街角で再会し

「先生、俺あれから更生してなんとかやってるよ」

と挨拶されたこともあるのだとか。彼は微かな笑顔で石ころの向こうに何を見ているのでしょうか。きっと彼がおじいちゃんになってボケが始まったら、石ころを拾いあげては

「見かけによらず芯が強いタイプじゃな」

などと話しかける、近所で有名な石ころ鑑定士になることでしょう。奥様、どうぞ彼を捨て石にはされぬよう、よろしくお願いします。

 

* * *

 

その後釣りを再開したダニエルが竿をしならせているのを見て近づくと、やはり40センチサイズのニジマスが釣れていました。自分が釣ったニジマスより明らかに綺麗なので、悔しさを忘れて自分のランディングネットに魚を移して眺めたり写真を撮ったりして楽しみます。

あぁ楽しかった・・・。と自分が釣ったわけでもないのに妙な満足感を得て車に戻った時、自分が先程の現場にランディングネットを忘れて来てしまったことに気が付きました。取りに戻れば往復で1時間ほど、さらにどこに置いたのかも定かではないので諦めるしかありません。

ダニエルを「失くしものが多い奴」呼ばわりした私自身が釣り場にデカいサイズのランディングネットを、しかも他人の釣果を撮影するためという理由としても0点の理由で失くしてしまうとは・・・。安物のランディングネットとはいえ、あの高級ルアー3つ分くらいの価格でしょう。

釣果とは関係が無い部分でうなだれながら、昨日とは別の道の駅に入ります。充電が出来そうな電源口が見られますが、うっかり充電して嫌味を言われないとも限りません。愛想の良い女性店員に確認をしたところ

「こっそりと、であれば大丈夫ですよ」

との返答が。道の駅で充電の可否が確認方式になっているのは昨日のお店だけでは無いようです。北海道の道の駅は充電に対して地域で共有されるほどのトラウマがあるのでしょうか?

 

* * *

 

近くの支流に入り、少しだけ涼しくなった風を浴びながら川底を見つめていると、下流から50~60センチほどの魚が流心に沿って川底を這って近づいて来ました。

心臓をバクバクさせてミノーを投げてみると、ルアーを見ながらゆったりと逃げるように下流の方へと消えていきました。彼が言っていた通りの58センチのニジマスか・・・。

呆気に取られていると、今度は同じようなサイズの大きな魚が川の端っこを、底をついばむようにしながらこちらに近づいて来ました。長竿があればつつけるくらいの距離に居ながらその魚は目と鼻の先の距離にいる私の存在を無視するかのように、執拗に川底の何かを探しています。本州であればコイだと納得してその場を去るところですが、北海道の渓流に居るということは・・・アメマスかイトウでしょうか?

俄然釣れるイメージを持ってしまった我々は鼻息荒く上流を目指しますが、ダニエルがすぐに引き換えしてきました。

「熊の足跡が・・・。」

先ほどまで勇敢に先を急いでいた私は熊とダニエルの竿先で猛烈に揺れているルアーに怯えながら、先ほどの倍速で車へと駆け込むのでした。

明日は一人での釣りになるのでダニエルにレンタカー屋まで送ってもらいますが、時間を気にしていなかったのでうっかり遅刻しそうになってしまいます。するとダニエルから「レンタカーの時間をお忘れだったんですね。前にもブログでそんなこと書かれていませんでしたか?」と、法定で見せる冷徹な表情で追い込んで来ます。えぇ、前科は数え切れないほどに・・・。

ちなみに中途半端な釣果に終わったこの日、知人に聞くところによると、渓流ルアーマンとして有名な方もかなり近いポイントに入り、そちらは苦戦しながらも50アップのニジマスを釣り上げていたそうです。こちらに配慮して釣れなかったことにしてくれても良いのに・・・。

さらに知能は高いけれどうっかりした奴と認定してしまっていたダニエルが実は完璧な釣り場をチョイスしてくれていたことが分かり、さらに気分が滅入ります。

レンタカー屋に到着すると、丁寧な男性が接客してくれました。ここはガソリンスタンドが併設されているのでガソリンスタンドの店員さんが接客してくれていますが、ここ10年くらいでガソリンスタンドの接客レベルは平均して上がっていると気がします。丁寧で介護士のように柔らかい雰囲気の彼に「カーナビの自宅ボタンはこの住所に設定されていますか?」と問うと

「確認してみます」

とカーナビをいじくりだしました。その後先ほどよりニコニコ度を増した男性が車から登場すると

「確認しましたが、おそらくされていると思います。もし違っていたらこの旭川の住所を・・・」

と説明しだしました。土地勘が無い人間が返却間際にそれを回避するために言うてるんじゃい!と言いそうになりましたが、彼の戦略的な笑顔の前で何も言えず、結局うやむやの状態でレンタカーを発進させ、旭川近くのP−DASH GARDENに宿泊しました。

 

* * *

3日目・忠別川の東神橋

快晴で暑かった昨日と打って変わって今日は曇り空の涼しい日になりそうです。昨日解散したダニエルからも

「今日はチャンスが有りますよ」

とプレッシャーをかけられます。彼は猛暑でも大雪でもチャンスを見出してしまうポジティブ人間ではありますが、今回はあながち間違いではないでしょう。

スプーンを流すとニジマスが食いつきました。

 

確かに活性は低く無いようで、小さいニジマスが調子よく飛び出してきます。しかし10回掛けても手元にくるのは2回か3回、これで50センチのニジマスが掛かったとしてあげられる確率は10%もあるのでしょうか。

また、このように小型のニジマスがどんどん出てくるシチュエーションでは大物は釣れないと判断すべきなのでしょうか、それとも釣り方次第でチャンスがあるということでしょうか?現地から誰かに質問したいなと思いますが、平日の早朝から川の前で悩んでいるニートに付き合ってくれる人はいないでしょう。無策のままルアーを投げては小さなニジマスをバラし続けます。

さらに私の想像を越えた形状に地球が隆起してしまっていたのか、ルアーを根掛かりで3つも失くしてしまいました。合計で2,500円くらいと換算すると、鰻の成瀬で上位クラスのうな重が食べられる計算です。でもうなぎチェーンで食うくらいなら大自然と対峙している方が楽しいし・・・と折り合いをつけることに成功しました。

川から上がってみると、ウェーダーの中まで水がびっちょりで染み込んでいます。アマゾンで1年前に1万円ほどで購入し、その後パンク修理キットで7箇所ほど補修したものの、水圧がかかると隙間からじわじわと水が漏れ出てきます。

やむを得ず現地にあったモンベルに駆け込むと、33,000円で軽量のウェーダーが販売されていました。サイズ感も良かったので購入しようかと店長さんに声を掛けると、郵便局員のような穏やかな雰囲気で

「私も3年ほどハードに使っていますが、今のところ故障はありません」
「歩きやすさも含めて、この価格帯としては十分なクオリティがあると思います」

と、柔らかいけれど自信のある雰囲気で接客してくれます。現代の販売とは煽ったり媚びたりするのではなくお客さんの判断を邪魔せずに背中を押して上げるのが良いのかなと思いますが、そのお手本のような素晴らしい接客です。

まんまと購入した私は人生で初めての3万円のウェーダーにウキウキして川へと向かい、試しに深いところに足を入れてみます

(じわ・・・じわわ・・・。)

嫌な予感・・・ではなく実感として足に冷たい感触が伝わります。まさか3万円のウェーダーで最初から穴が空いているなどということは無いだろうと、しばらくはなかったことにしようと思いましたが中でぐっちょり濡れている靴下に嘘をつくことは出来ません。

すぐにモンベルに連絡すると着払いで送ってくれとのことでしたが古いウェーダーを捨ててしまったので北海道遠征中はこのウェーダーを使わせていただくことになりました。

【続き】翌日は道北の河川と朱鞠内湖でイトウを狙いました。

慈悲の心で「いいね!」
頂いております

渓流での「ボヤキ」を