高価なカメラも技術も無い僕のようなカメラ素人でも渓流釣りシーンで楽しく撮影する方法を学ぶべく、プロカメラマンの廣田さんに渓流の現場でレクチャーして頂きました。
廣田利之氏プロフィール
友人から手渡された求人広告をきっかけに雑誌社・週刊釣りサンデーに入社、その後廣田写真事務所の代表として独立。現在は雑誌・新聞・釣り番組・釣り具メーカーへの素材提供を手掛ける「釣り写真の生き字引」で、琵琶湖博物館やNHKへのビワマス写真の提供でも活躍するビワマスブームの火付け役の1人。
日本広告写真家協会APA所属
廣田利之氏公式Facebookページはこちら
釣れないニート(以下ニート)ーーまずはカメラの選び方から教えて下さい!
目次(スクロールします)
渓流釣り写真のカメラ選び
スマホも立派なカメラです!
ニートーーやはりカメラは専用のものを購入したほうが良いでしょうか?
廣田カメラマンーーいいえ、まずは手持ちのスマートフォンで十分だと思います。釣り人の最優先は釣りを楽しみ安全に帰ってくることですので、道具は少なく軽いほうが良いでしょう。
私も普段の撮影でスマホはよく使っていますよ。
ニートーープロでもスマホカメラを使うんですね。
廣田カメラマンーーポスターなど大きなサイズに写真を引き伸ばすことがあるプロカメラマンを除けば、あえてスマホ以外のカメラを持ち運ぶ必要はそれほど無いと思いますよ。スマホを馬鹿にするカメラマンもいますが、私はスマホも立派なカメラだと思っています。
これはスマホでアマゴを撮影したものですよ。
ニートーースマホでこんな写真が撮れるんですね。
廣田カメラマンーースマホなら撮影した写真を切り取ったり色を補正するのも簡単ですから。
スマホはiPhone XRを使っていますが簡単な防水機能も付いているので釣りでの撮影にもおすすめです。
ニートーー私のAndroid、防水ではないのですが・・・。
廣田カメラマンーー専用の防水バッグやジップロックに入れる方法がありますが、ボタンが反応しにくいので面倒かもしれませんね。
もし防水のカメラを1つ用意したいという場合は、多少値が張りますがオリンパスのTGシリーズかリコーのWGシリーズがおすすめです。
多くのカメラでは対象に近付き過ぎると焦点が合わないのですが、この2機種であれば触れるくらいまで近づけるので撮影の幅を広げることが出来ますよ。
動画撮影ならGopro
廣田カメラマンーー動画撮影をメインにするならGoproがおすすめです。Goproはコンパクトなので水流の影響を受けにくいので水中撮影がやりやすく、魚にも近づけやすいのが魅力です。
ニートーーGoproは一般向けだと思っていたのですが、プロでも使うんですね。
廣田カメラマンーー一眼レフをハウジング(防水のため箱に入れる)することもあるのですが、カメラ自体が大きすぎるので魚が怖がって逃げてしまうことが多いんですよね。なので水中撮影でもGoproは活躍していますよ。
ただしオリンパスのTGシリーズのように対象に寄れないことと、ピント合わせが出来ないので写真撮影としてはGoproは弱いです。とはいえ一眼レフなどと比べるとデータ量も小さいので撮影の後処理も楽ですし、売れているのでアクセサリが豊富なのも良いですね。
ニートーーGoproは私も使っていますが、体に装着して釣り記録を残しておくこともできるので面白いです。私の場合は根がかりの映像ばかりが積み上がっていきますが・・・。
渓流釣り撮影でのカメラ選びのポイント
- カメラはスマホで十分
- 防水カメラが必要ならオリンパスTGシリーズ
- 動画中心ならGopro
渓流での撮影方法
植物の撮影
撮影するテーマを絞り込む
ニートーー続いて具体的な撮影方法を教えて下さい。私はとりあえず川も木も全部入れて撮ってしまうのですが・・・
廣田カメラマンーー釣り場の説明としての写真であれば、あれこれ入れるのは良いと思いますよ。一方で、見た人を驚かせたり楽しんでもらうためには、何か自分の目に止まったものに的を絞りこんで、近づいて撮影すると良いでしょう。
光と影を味方にする
ニートーー川沿いを歩いてみましょう。アジサイが咲いていますね、スマホで撮影をお願いできますか?
廣田カメラマンーーやってみましょう。遠くから花をまとめて撮るより、花びらに寄って撮影したほうが上手に撮りやすいです。
周辺よりも明るくなっているアジサイを探してください。花に光が当たっているか、逆に周辺が影になっているものでも良いでしょう。
次に、ぐっとアジサイに近づいてみましょう。これで対象を際立たせることが出来ます。
廣田カメラマンーーそのまま撮影しても良いのですが、さらに撮影者の意思である「アジサイを際立たせたい」を伝えるために、「露出」を変えてみましょう。
ニートーー露出ってなんですか?
廣田カメラマンーー明るさのことで、+ー(プラスマイナス)で表示されます。
ピントを合わせたいところをタップすると、太陽マークが出てきます。それをスライドすると明るさを変更できますよ。
廣田カメラマンーー露出を落としたほうが花が引き立つ事が多いです。
ニートーー私の写真の下手さが際立ちますね。
廣田カメラマンーー光があたって周囲より明るくなっている花を選べると、鮮やかに見せられると思います。
「光と影を味方にする」を意識して頂くと良いと思いますよ。そのために、天気が良い日の撮影が好ましいですね。
ニートーーどんどん歩きましょう!やはり川は良いですね。
廣田カメラマンーーその前に、苔の上に葉っぱが落ちて綺麗ですね。
ニートーー気づきませんでした。
廣田カメラマンーーこの場合もしゃがみこんで、ぐっと近づきます。
目線を下げることで先程の「対象に近づく」が出来ます。また、上から撮ると地面ばかり撮影することになりますが、目線を下げることで遠くまで写すことも出来ます。
ニートーーもう忘れたのですが、植物撮影のコツって何でしたっけ?
廣田カメラマンーーここまででお伝えしたことはこの4点です。
植物撮影のポイント
- 撮りたいテーマを絞る
- 対象に近づく(時にはしゃがむ)
- 明るくなっている対象を探す
- 露出(明るさ)を操作する
動物の撮影
ニートーー続いて動物や昆虫の撮影について教えて下さい。鳥はどう撮れば良いんですか?
廣田カメラマンーー鳥は習性を把握していないと撮れないので、一般の方は狙わない方が良いと思います。
ニートーー私はわかっていてもカメラを向けてしまい、その度に逃げられています・・・。
廣田カメラマンーー逆に、動きがゆっくりで近づきやすい昆虫は鳥と比べると撮影がしやすいです。
ニートーーチョウチョが飛んでますね。
廣田カメラマンーーじっとしていればどこかに止まると思いますよ。ホラ止まった!そのまましゃがみこんで、拡大します。
植物と同じように、チョウチョの奥側が暗くなっている角度を選んで、チョウチョを際立たせます。
ニートーー光と影ですね。チョウチョに気を取られて、忘れていました。
廣田カメラマンーー普通に動画を撮影するのも良いですが、スローモーションで撮影するのも面白いですよ。
ニートーー僕のスマホにはそんな機能・・・ありました!私のAndroidでは「その他」ボタンを押すと「スロー」撮影が出てきました。
廣田カメラマンがスマホで撮影したスロー映像
ニートーーうぉおおっ!!チョウチョがこんなに大きく羽を動かしていると知りませんでした。
廣田カメラマンーースローで見ると、当たり前の景色が違って見えますね。
動物撮影のポイント
- 基本は植物撮影と同じ
- 鳥より虫の方が撮影しやすい
- 動き出しをスローで動画撮影
水の撮影
ニートーー続いて川の流れを撮影するコツを教えて下さい。
廣田カメラマンーーカメラ(スマホ)が濡れることを恐れず、水や流れと友だちになることです。
そして川にある様々な対象を撮影するよりは、やはりターゲットを何かに絞り込んで撮影すると良いと思います。
ニートーー水の流れを見ても、どれも同じように見えます。
廣田カメラマンーー例えば岩肌を水が滑りつつ、しぶきを立てているところなどは綺麗ですよ。
ダイナミックな水の動きはぐっと近づいて撮影すると綺麗です。
ニートーーやはり周辺が影になっていたりするとさらに良いというわけですね。
廣田カメラマンーーはい、やはり基本は動植物と同じです。
ニートーー大迫力ですね!釣りをしていると見逃してしまうポイントでした。
廣田カメラマンーー流れを撮るコツとしては、シャッターが開いている時間である「シャッター速度」を調整すると綺麗に撮りやすいですよ。
スマホでも、古いものでなければ出来ますよ。シャッター速度を上げればシャッターが開いている時間を短く出来るので、しぶきがはっきり見えます。
ニートーー私のAndroidでは「その他」から「プロモード」を選ぶと、シャッター速度を変えられました。
ニートーー数字を小さくすれば、シャッターが開いている時間が短くなるんですね。
廣田カメラマンーー逆にシャッターが開いている時間を長くするとこのように見えます。
廣田カメラマンーーしかしスマホカメラでは光が入りすぎて真っ白になるので、無料アプリを使うことをおすすめします。
- iPhone用無料アプリ→Blendeo
- Android用無料アプリ→Long Exposure Camera 2
廣田カメラマンーーこれらのソフトを利用すれば、水の流れに変化を付けた写真撮影を楽しめますよ。
また、流れの撮影時には先程チョウチョの時に使ったスローモーション撮影も良いですよ。
廣田カメラマンーーこういった映像を釣り動画に挟めば良いアクセントになります。
ニートーーうっかり川に座り込んでしまいましたが、お尻が濡れて気持ち悪いです・・・。
廣田カメラマンーー私は躊躇なく浅瀬に座り込めるように、常に水に濡れないウェーダーを履いてフィールドに出かけています。夏場は暑くて蒸れますが、撮影のしやすさを優先しています。
川の撮影のコツ
- 基本は植物撮影と同じ
- シャッター速度を上げて水しぶきを撮影
- シルキーに撮影するなら無料アプリを利用
- スローモーション撮影も効果的
釣り人の撮影
ニートーー知らない間にこんな写真を撮って頂いていたのですね。
廣田カメラマンーー自分の釣り姿を綺麗に撮影してもらう機会は意外と少ないので、プレゼントすると喜ばれますよ。
先程の写真では下流側から撮影しましたが、可能な限り人物の前から撮影することを意識してください。この時、釣り場を荒らさないように回り込んであげると良いでしょう。
ニートーー大事な配慮ですね。
廣田カメラマンーーさらに、釣り人の川での動きを注視してください。釣り人が渓流で過ごす喜びや失敗など、表情の動きを切り取ると良いです。過去の写真をお見せしますね。
ニートーーよく見ると美しいヤマメにわずかに頬が緩んでいますね。この方が本当に釣り好きであることがわかります!
廣田カメラマンーー竿のあるところが明るく、その奥側が暗いところを選べば竿を動かした瞬間の動きを捉える事もできます。
ニートーー動きが出て面白いですね。
- 釣り場を荒らさないように上流側に回り込む
- 釣り人の動きをよく観察する
- 動く瞬間や表情の変化を捉える
泳いでいる魚の撮影
ニートーー魚はどう撮れば良いんですか?
廣田カメラマンーー水中の魚の撮影は非常に高度ですから、最初は狙わない方が良いかもしれません。
まずは動画でしなやかな動きを追うところから始めてみてください。
その前に、水中の様子を普通のレンズで移すと、水面が反射してほとんど何も見えません。ですので、水面の反射を抑えられるPL(偏光)フィルターを使う必要があります。
これは水中の撮影だけでなく、釣れた魚の写真にも使えますよ。
釣れた魚の撮影
ニートーー釣れた魚の撮影について学びたく思いますので、まずは一匹釣ってみてください。
廣田カメラマンーーわかりました!
廣田カメラマンが水面を這うように毛針を動かすと、何度かアマゴらしき魚が反応してくれますが、残念ながら針には掛かりませんでした。
廣田カメラマンーーダメです・・・。せ、選手交代!汗
続いて私が竿を譲り受けたものの魚の反応すら見ることが出来ませんでした。
というわけで、非常に大事な場面で魚が釣れないという、釣れないニートにはよくある事態が発生しました(でも今朝までは絶対釣れると信じていた)が、魚無しで釣れた魚の撮影方法を教わることにします。
* * *
ニートーー釣れた魚はどのように撮影すると良いのでしょうか?
廣田カメラマンーー乾いた地面に置いてしまうと魚が痛みますし、水中に入れれば逃げてしまいますので、体が半分ほど水面から出る程度に、浅くなっているところに置きます。
ニートーーちょうど良い浅瀬って無いものですね。
廣田カメラマンーーその場合は石を並べて浅瀬を作って、濁りが消えるのを待ちます。
水上から見ると水中はキラキラ光ってしまって水中に沈めた魚の模様が写せなくなりますが、角度によって水中が見えやすい角度もありますので、水面が反射しにくい角度を探してみてください。
廣田カメラマンーー先程ご紹介したPL(偏光)フィルターがあると撮影がしやすいです。水の反射も良いアクセントになりますよ。
ニートーー魚を置く浅瀬は、流れがあるところの方が良いのでしょうか?
廣田カメラマンーーどちらでも構いません。流れがあれば水のキラキラを活かすことが出来ますし、無ければ魚の模様がよく見えます。
何枚か撮影してみて、魚はブラさず、水面だけが揺れて光っているものを選ぶと良いと思います。
釣れた魚の撮影のポイント
- 浅瀬に魚を置く
- 魚へのダメージを抑えるため、体の半分は水中に入れる
- 水中が反射しにくい角度を探す
- PL(偏光)フィルターがあると便利
- 魚がブレないように腕を固定して撮影
ニートーー本日はお付き合い頂き有難うございました。これで釣れなくても渓流を楽しめそうです!
渓流釣り撮影を終えて
この度は廣田カメラマンと渓流で貴重な1日を過ごさせて頂きました。
廣田さんの行動を追っていると、釣りの対象である魚だけでなく、葉っぱの水面への映り込みや水しぶきなど、私なら見落としてしまうような「美しいもの」を「光の強弱」を絡めて常に探しておられるようでした。
また、
「写真は仕事であり、趣味ですから」
との言葉通り、心の底からそれを楽しんでいるようでした。また、もちろん魚釣りも大好きで、車中でも食事中でも世界中での釣り及び撮影の体験を語ってくれ、自然への底知れない好奇心を垣間見ることが出来ました。
廣田プロへのお仕事のご依頼
今回のニートのように、廣田カメラマンに写真撮影方法を教えて欲しい方や、自分のSNS等で使える釣り姿の写真撮影をお願いしたい方は、下記のお問合わせフォームからご連絡ください。
内容 | ご依頼者様の釣りに同行し、撮影方法のアドバイスやご依頼者様の写真を撮影 |
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料金 | 1日同行で40,000円~(1人当たり) |
対応地域 | 関西周辺 |
交通手段 | 1人であれば廣田カメラマンの車で送迎可能 |