あるイワナ・ヤマメの研究をされている方から
「滋賀のこの川に調査に行ってくれ」
と依頼が来ました。こちらも暇でどこにも行く宛が無く、また家に居ても家族から露骨に冷たい視線を浴びるので好機到来と、社内にいると居心地が悪いので無理やり懇意の客に無意味なアポを入れて出かける営業マンのごとく、身を屈めながら川へと出かけていきました。
川は京都市からも40分ほどで到着するアクセスが良い場所にありました。
水量は少なく地形の変化にも乏しいため、アマゴやイワナが生息しているような雰囲気は感じられません。
こんなとこに魚が居るのか疑問を抱きながらルアーや毛針を投げてみますが、やはり反応がありません。そして釣りをしながら、車に忘れ物をしたことに気が付きました。
魚が釣れた場合、魚にダメージが無いアブラビレ(背びれと尾びれの間にあるトラウト特有の小さなヒレ)を切り取って研究者さんにお送りする必要があるのですが、そのケースを持たずに川まで来てしまったようです。
車から川までそれほど高低差は無いものの、少し藪をかき分ける必要があるので億劫でしたが、トラウトが居る漁協が無い河川の情報だけ聞いておいてサンプルも持たずに帰れば、ニートの風上にも置けないとう誹りは免れ得ないでしょう。
汗をかきながら車まで戻り、トランクを漁りますが、サンプル便がありません。その瞬間に冷たい風が吹き込んできました。そういえば、釣りに行く前にサンプル便をリュックに入れたのでは無いだろうか。そう思ってリュックを探ると・・・サンプル便が出番を待ち構えているかのようにどっしりと有りました。
さて、私は何をしに車まで戻ったのでしょうか?他に何か車に忘れ物をしていれば報われるところでしたが、こういうときに限って完璧な準備が出来ている自分を恨みつつ、再度川へと戻りました。
* * *
川はアーケードのように樹木が覆っているのでそれをかき分けながら上流へ進みつつルアーを投げていくと、魚が釣れました。
こんな河川にもアマゴが居るのかと驚きつつ釣り進むと、さらに2匹のアマゴが釣れました。
どれも小さくアマゴと言うのもはばかられるサイズですが、それでも歴としたアマゴです。
この日はたった2時間しか釣りが出来る時間が無かったのですが、短時間でこの河川で3匹を釣り上げたのは私にとっては上出来でしょう。
見事狙い通りに結果を出すことが出来、手練れた釣り師の雰囲気を携えて研究者に連絡を入れます。
私「アマゴが釣れましたよ、3匹も!」
研「イワナはどうだった?」
私「イワナは釣れませんでした」
研「そうですか、残念だったね」
残念・・・だったのか。
追われるように出かけた得意先で上司が喜ぶ商材を見事販売し、限られた時間と環境で仕事をやり抜いた気持ちで帰社したものの、そこで見たのは上司の笑顔ではなくがっくりうなだれたうなじでした。
営業部のアイドルであるリカさんは迷い込んできた蜘蛛でも見るかのように、こちらを一瞥してすぐにPCに目をやります。どこにも居場所なんてありません。
「次はもっと上流に行ってみてね」
という研究者の声に従うしかなく、翌日はイワナを探しに同じ河川の上流に入りました。
【ロッド】安くてコンパクトなルアー竿
2023年以降は↓を使っています。
【リール】2000番のリール
【ライン】PEライン0.6号(無くても大丈夫です)
【ライン(リーダー)】8ポンドのナイロンライン
【ルアー①】シルバークリークミノー50シンキング
【ルアー②】スプーン・pure3.5g
【ルアー③】スプーン・D-Sライン5g