前日に渓流釣りと鯉釣りを楽しんだ我々は、滋賀県北部に位置する石田川に到着しました。
石田川上流を管轄していた三谷漁協はすでに解散しており、無料でアマゴを釣ることができます。遊漁料無料の河川の紹介はクレーム対策として有料記事で公開していますが、他のブログでも紹介されている河川なので、このブログでも無料でポイントをえいやと公開することにしました。
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近江今津駅方面から北上し、細道を進んでいきます。
地図で見ても大きなカーブが多いことがわかっていましたが、まさかカーブミラーが全く仕事をしていないとは思っていませんでした。
このミラーはまだ良い方で、中には試合が気になって後ろを向いてしまっているスタジアムの警備員のように、完全に道路の反対側を向いている職場放棄型のミラーもありました。
しかし、そのうちいくつかは洗面台のようにミラーがまっすぐこちらを向いていることもあり、それに映りこんだ自分の車を対向車と間違えて「あぶなーい!!」と2人で声を揃えて叫ぶこと数度、ようやく現地に到着しました。
この分岐点に車を停められました。
※赤マーク地点で西への道路がゲートで封鎖されていますが、現地の方がゲートを開けて通るのでその前には駐車しない方が良さそうです
現地のハンターの方がおられたので話を聞いてみると、「1ヶ月に一度熊を見る」くらいにはツキノワグマが生息しているらしく、この木も熊に削られたものだとか。
彼は猟銃を背負って山に鹿や猪を駆除しに行くのだとか。
「山に向けて発砲するので、心配は要りませんよ」
と昭和の俳優を思わせるような力強い目で言い切ってくれましたが、「こっちが駆除されるんじゃないか」と一抹の不安を覚えながら川へ降りて行きます。
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川に降り、チョウチン毛針方式で毛針を水面に浮かべます。
毛針を見に来る魚や、私の姿に驚いて逃げる魚の姿は見られるものの、水面に浮かんだ毛針に飛び出してくれません。
しかし1時間ほど経過したところで、毛針めがけて大きな魚が飛びかかってきました。完全に気を抜いていたので魚の反応にビックリしてしまい、仰天するように全身でアワせてしまい、ぷっつりと糸が切れてしまいました。
「下手くそ。口に毛針を残される魚が可愛そうやぞ。」
同行者になじられるも、全く反論できません。
その後、アマゴが毛針に派手に飛び出しました。
「これ食べますか?」と言っていますが、この日はテント泊で焚き火もするので釣れたうちの何匹かはキープして塩焼きにしようと考えていました。
普段釣れた魚をリリースする理由は「渓流魚を増やしたい」「次の釣り人にも釣って頂きたい」などという利他的なものではなく「食べるのが面倒だから」というあくまでこちらの都合であり、この日は焼ける体制にあるので焼いてしまおうと、生簀を作って生かしておきます。
生簀のアマゴは帰りに回収しようと話しながら上流に向かうと、同行者がルアーで美しいアマゴを釣り上げていました。
このアマゴを引っさげて先程の生簀にアマゴを回収に行くと、すでにアマゴの姿はありませんでした。
見事に逃げ切ったのでしょうか。
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釣りを終えると、焚き火の準備をしながら缶ビールで乾杯です。
同行者がキャンプ慣れしているので私は初めてアウトドアに参加した彼女よろしく、火を起こしてもらうのをちょこんと眺めます(実際には薄汚いヒゲヅラですが)。
雨続きだったので薪が湿っており「火がつくか心配」言っていた同行者ですが、まるでベテラン縄文人のように軽々と火を起こし、アマゴを焼き上げてしまいました。
アマゴは良い具合に薫香をまとい、焼きすぎて身が硬くなっていた分を差し引いても120点の味です。さらに焚き火で温めた石で焼いた肉や野菜で酒が進む夜を過ごしました。
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山の夜は寒いという常識を忘れて薄着で過ごした結果、寒すぎて朝6時に目を覚ましました。
テントから出ると、そこにはなんと川が流れています。川沿いにテントを張ったのでそれも当然のことなのですが、人生で初めて川沿いに寝泊まりしたため、目が覚めたら即渓流が有ることに心底驚いてしまいました。
目覚めのお茶を飲むでも顔を洗うでもなく、何を思ったか寝ぼけ眼で釣り竿を握りしめ、昨日結んだままだった毛針を川に投げ込みます。
視界も虚ろで足元もフラフラの状態でしたが朝一番で魚の状態も良かったのか、テントのすぐ目の前でアマゴを釣り上げることが出来ました。
釣りは昨日ある程度楽しめたので、この日は水中を動画撮影して楽しみます。
漁協が閉鎖している夏の川とは思えないほどアマゴの魚影は濃く、堰堤の下には一度に6匹のアマゴを同時に見られました。
日中の水温が22度ほどと暑かったので、空中の酸素が供給される白泡の下に集まっているのでしょうか。
下の動画では4:26時点から、アマゴ同士でポジション争いをしています。
アマゴ観察を終えると、テント場での最後の食事です。同行者が素麺を用意してくれていました。
私は昨日と同じく、箸を持って待つだけです。
子供の頃、夏に母親が嬉々として出してきた素麺の安定したまずさには毎度うんざりしていましたが、大人になって、屋外で頂く伸びに伸びてブヨブヨの素麺が思いの外美味しかったことに驚きました。
後片付けをして、街へと戻ります。
帰り道で道路脇から見た高島市今津町の景色で、左に竹生島が見えます。
今津は若狭街道などの陸上交通と、京都へつながる湖上交通の要であり、自動車輸送が一般的になるまでは大変栄えたところだそうで、町中にはヴォーリズさんという建築家がデザインした瀟洒な建物が並びます。
歴史ある街を横目に満足して帰路につきます。渓流の横で寝泊まりするという経験に大満足していましたが、慣れない過ごし方を体は拒否していたのか、帰宅して久々に放出したう●このせいで、盛大に切れ痔をやらかすのでした。