三重中部の無漁協河川でアマゴ釣り①【24年4月】

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以前三重県の知人のご自宅にワインを持ち込んで恥をさらした苦い記憶をブログにしたためましたが、その時私を笑顔で丁寧に地獄に突き落とした今田さん(仮名)と渓流へ向かいます。

彼はバス釣りの経験はあるとのことですが、渓流釣りは大人になってからは初めてだとか。

歴史ある企業を束ねる彼は客観的に人間を評価できる要素において私よりすべての面で上回っていますが、山に入れば平地での立場など関係がありません。

今田「軽いルアーを投げるのって難しそうですね」
私「はい、特にショートキャストが難しいんですよね。まぁ慣れです。」

あくまで渓流釣りの先輩である私が先輩風を吹かしていきます。

今田さんには今回の釣行をきっかけに渓流釣りを好きになって欲しいですが、しかし私を差し置いて勝手に釣るというのは先生の本望ではありません。なので今日はトラウトの気配を感じて期待をさせつつ、しかし釣れるのは私だけ、やはり先生はすごい、お金払うので教えて下さい!という展開に持ち込みたいと思います。そして

私「上手く行かないことがあるから人生は面白いんですよ」

と、言い放つのです。

* * *

この日は彼のご自宅から近く、漁協が管轄していないので無料で渓流釣りが出来るポイントへとご案内します。

私の趣味はトラウトが生息しているか居ないか不明なところでトラウトを発見するのが趣味であり、また有料記事で販売しているので仕事の一部にもなっています。

しかしまさか初めてのアマゴを楽しみにしている方に「魚が一匹たりとも生息していない可能性がある場所に行きましょう」とは言えず、アマゴが生息しているのを知っているような顔をして川へ連行します。

自宅でルアーをセットして車に持ち込んでしまうほどこの日を待ちわびていた彼が急ぎ足でルアーを投げると、1投目でアマゴが追いかけてきたようです。

(本当にアマゴが居たのか!)と驚いていることは隠しつつ、彼にルアーの動かし方をアドバイス・・・するのが本当のガイドでしょうが、私はそのような理性を装備した人間ではありません。

※釣れたポイントは有料記事で公開しております

彼のルアーに被せるようにルアーを入れ、横取りを狙います。

今田「なるほど、そんな風に細かく竿先を動かすんですね・・・」

感心させたことに調子に乗ってもう一度投げると、途端に肩に力が入ったのか、大きく投げすぎて枝に引っかかってしまいました。

・・・。

昔ソフトボールをやっていた頃、無邪気に調子良く打っていたところ「打率がチームで1位になっている」と告げられた瞬間から成績はどんどん下降線をたどり、最後は目も当てられないような微妙な数字を叩き出したことを思い出しました。

 

* * *

 

今田くんの動きをよく見ていると、軽いミノーをバックハンドで投げたりフリッピング(と言うのか?)を使ったり、器用に思ったところにルアーを落としています。きっとセンスが良いのでしょう。「軽いルアーをショートキャスト云々」などと言ってしまったことを後悔し始めました。

しかし彼が見事投じたミノーの方を見ると、きちんと泳いでいません。

彼が投げたミノーは最初の0.5秒ほどは普通のルアーのフリをして泳いでくれますが、その後はヒルナンデスを見ている専業主婦のようにダラダラと寝転んでしまい、二度と起き上がる気配は無く、途中まで追いかけてきたアマゴも皆気まずそうに引き返していきます。

金持ちの彼としてはあろうことか、5個で1,600円という激安のミノーを使っています。恐らく流れの中で使うことを想定して作られたルアーを使えばたちまち釣ってしまうでしょう。

僕が使っているシルバークリークミノーを渡せば問題の10割は解決してしまいますが、彼はそれを借りようとはしません。

きっと私から借りたルアーを失くしたり傷つけた場合に、ショッピングセンターでウォーターサーバーを売りつけるために風船片手に子供を釣り出そうとニヤついてくる兄ちゃんよろしく、ニヤニヤしながら弁償だとふっかけてくる未来を確信しているのでしょう。

その町では多少知られた資産家として、出自の怪しい私に対して警戒をするのは今田一族の帝王学に沿った正しい反応と言えます。

最初のポイントでルアーを失くして意気消沈してからは竿を出さずに大人しくしていた私ですが、川を目の前にして空だけを見つめているわけにはいきません。ルアーでは釣りにくそうなポイントで容赦なく釣ってやろうと、のべ竿に毛針を結んだ仕掛けに持ち替えます。

同行者に釣らせる予定を忘れて我先に釣ろうとするという、身に覚えの有りすぎる展開になりました。そしてドン引きする彼に構わず、目の前で容赦なく釣ってやりました。

※釣れたポイントは有料記事で公開しております

毛針が体に掛かっていますが「これはスレでは無い」と、親のお金を盗もうとしたのがバレそうになって必死に言い訳をする子供のような勢いでまくしたてています。

 

毛針がアマゴの体に堂々と掛かっています

 

しかしその主張が正しいとしても、なぜアマゴが水面に飛び出した時に

「食った。」

と釣り番組に出演するプロを気取って少し抑えめの声を発したのかへの回答にはなっていません。

しかし他の誰でもなく、この私が一匹釣ったことに安堵します。

その後彼もさすがに専業主婦ミノーに参ったようで、うちの一軍選手であるシルバークリークミノーをレンタルすることに。

今田「もしルアー無くしたら、焼肉屋で上タン奢りますので・・・」

私「望むところです。気前よく失くしてください。」

先程まで彼が使っていたルアーとの違いは明らかで、魚の反応が一気に増えました。すると、自分の会社や一族について「冷徹」と言えるほど俯瞰出来る彼が、初めてスーパーボールを弾ませた5歳児のように客観的な視点を放棄して喜んでいます。

 

本当に釣りやがりました。

 

 

初めての一匹に立ち会えるというのは素晴らしいもので、大学生の頃、夕暮れ近くまで粘りに粘って友人との集合時間を無視してまで釣った最初のヤマメを思い出しました。

しかしもし、私がこの日一匹も釣っていなかったら、同じように喜べたかどうかは疑わしいと言えるでしょう。

 

* * *

 

二人ともが目標であった魚を釣り上げたのでゆっくりお茶を飲みます。

一人なら間違いなく漆黒の闇の中、社会生活を丸投げにして釣りをしてしまうところでしたが、釣りに頭から足の先まで沼っている人間を蔑んでいる可能性がある彼に同調することで、同じ派閥の人間であるかのように振る舞います。

彼は苦いコーヒーを、私は甘い甘い紅茶を飲みます。二人の人生を映し出すような飲み物っぷりです。

翌日は一人で別の無漁協河川で釣りをしました。

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