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北海道の河川でのサクラマス・サケ釣りは違法
北海道のさけ・ます釣りに関する規制では、河川での下記のサケ・マスの採捕を禁止しています。
- サケ(シロザケ)
- サクラマス
- カラフトマス
- ベニマス
- ギンマス
- マスノスケ
逆に言うと
- アメマス
- ニジナス
- ブラウントラウト
- ヤマメ
- イワナ
は、違法にはならないということです(禁漁期間有り)。これは、法的には北海道内水面漁業調整規則で裏付けられており、「サケ・マスを狙って採捕した場合は、リリースしても犯罪となります。」
と北海道のフィッシングルールのページに記載されています。
罰則は最大10万円+懲役6ヶ月
「これに違反した場合は最大で6月以下の懲役と10万円以下の罰金」があわせて課される可能性があります。
河川でのサケ・マス釣りの「違法」のライン
河川でのサクラマス・サケ釣りでどこからが違法になるのか、弁護士さんに解説してもらいました。
水産資源保護に関する法制上,採捕は釣りで言うと針に魚をかけた時点で採捕とされているようです。ただ,サクラマスが釣れるとは知らずに針にかけたとしても,“サクラマスを採捕”したという故意がないので,犯罪が成立しません。
そのため,犯罪が成立するとすれば,①サクラマスがいることを分かっていてサクラマスを針にかけた時点(サクラマスだけを狙う,というのではなく,サクラマスもいると認識している場合も含むと思います。)②ランディングした結果,サクラマス(サクラマスっぽい)と認識した時点でサクラマスを採捕した罪が成立すると思われます。
要するによほど知識に乏しいアングラーでない限りサクラマスをランディングした時点で一応犯罪は成立するわけですが,法律の世界には可罰的違法性という考え方があり,犯罪として成立しなくはないかな,という程度であれば罰するだけの違法性がない,という考え方をします。ですので,サクラマスが釣れ,すぐにリリースをすれば犯罪が成立したとしても一瞬かつ微妙なもので,すぐに放したのであれば罰する必要もないでしょう,ということになります。
しかし,釣れた後に撮影をした,となると,一定期間支配下においている分違法性は高まると思われるので,法律上NG,ということになってくると思われます。
簡単にポイントをまとめてみます。
- その場所にサケ・サクラマスがいると知っていて、サケ・サクラマスを釣り、ランディングした→違法
- ただし、すぐにリリースした場合には違法にならない可能性が高い
- ただし、写真や動画撮影をすると違法となる可能性が高い
ということになりますが、前提になっている「知っているかどうか」を、他人が脳内を覗いて知ることは出来ず「知りませんでした」と言い逃れが出来る以上、法律として不格好な面は否定できません。
海でのサクラマス釣りはOK
海であればサケ・マス釣りが可能なので、浜辺からルアーで狙っている人が多いです。
盛期でも1日釣りして1匹釣れれば良いという確率の低い釣りのようで、私には絶対に真似できません。
北海道の河川でのサクラマス釣りの実態
かつてタクシーの運転手さんとこのような会話をしました。本州から釣りに来ていた我々は、釣れた魚がサクラマスだとわからなかったので、タクシーの運転手に聞くことにしました。
その夜、旭川市内でタクシーの運転手と会話したときの出来事です。
僕ら 「妙な魚が釣れたのですが、見てもらえますか。」
写真を見せる。
タク 「ああ、サクラマスだね。名寄川はサクラマスがのぼってくるからね。でもこの時期のはブナってて不味いだろうね」
僕ら 「不味いってまさか、食べてるんですか?」
タク 「いや、そんなこと・・・。この時期のサクラマスは餌を食わないから、威嚇でとびかかって来たんだろうね。やっぱり3・4月くらいの上りたてで餌を食べてる時期のサクラマスが最高に美味いんだよな~」
僕ら 「美味いってやっぱり、食べてるんですか?」
タク 「ははは、まあ、なんと言うか・・・。ほら、あれですよ。あ~サクラマスが食いたい!」
元のページはこちらです。
このときは「変わったおじさんなんだな」と思った程度でしたが、現在では彼のような釣り人は少なくないことがわかってきました。
私が北海道のトラウトアングラーに聞いた範囲での少ないデータですが、北海道のトラウトアングラーが10人いれば、そのうち8人が河川でサクラマスを釣ってしまった経験が有り、そのうち5人はそれを食べたことがあると話していました。
では全員に常習性があるかというとそうではなく、ほとんどは「記念に一度食べた」というレベルのようです。やはりタクシー運転手が言っていたように、海のサクラマスの方が圧倒的に美味しいからだそうです。
彼らはサクラマス釣りが違法であることは知っており、狙って釣ったわけではなく誰もが「たまたま釣れた」と話していました。(「食べた」と正直に言ってしまう人たちなので、狙っていたとすればそのように答える可能性が高いとすれば、本当に狙ってはいなかったと考えて良いでしょう。)
優等生を演じる人たち
こっそり食べている人がいる一方で、ネット上やSNSでは過剰な「優等生ごっこ」「違反者潰し」が繰り広げられています。
2020年に十勝川水系で釣れたサクラマスの動画がアップされていましたが、批判のコメントや評価がたくさん入っており、Twitterでも炎上したようです。
撮影者が狙って釣ったとすれば確かにルール違反ですが、そうでないとすれば罰則の対象にならない可能性が高いです(動画をアップし続けているとすれば法に抵触する可能性)。
また実際、撮影者はサクラマスをその場でリリースしており、サクラマスの生存に与えた影響もそこまで大きなものなのかは疑問です。
「この動画を見て十勝川にサクラマス釣りの人が増えたらどうするんだ」
という意見があるのであれば、河口で釣れたサクラマスの情報も一切禁止しなければいけません(河口まで来ているということは、川に上るということ)。
この動画に対してSNSで苦情を申し立てている人は、
「俺は釣ったサクラマスをSNSで自慢せず、真面目に耐えたのに」
という嫉妬心で発言しているように見受けられます。
ただし、彼らのように法律の背景や価値を考えることなく「意味はわからないけど、違法なものは違法です!」と叫ぶタイプの人がいるからこそ、河川でサクラマスを釣る人が限定的になっていると考えることも出来ます。
法律の問題点
①目的に添った法律なのか?
河川でのサクラマスの釣りが禁止されているのは、水産資源保護を通じて漁業者を守るためです。では、河川でのサクラマス釣りをリリースも含めて禁止することが、サクラマスの漁獲量を増やすことにどの程度寄与しているのでしょうか。
少し調査してみたのですが、この点がわかりませんでした。
本州では「15センチ以下のヤマメはリリース」「産卵期にあたる10月以降は釣り禁止」などの決まりがある地域がほとんどです。
一方、北海道ではヤマメが海に降る4~6月頃を禁漁にしている河川はありますが、それ以外は自由なので、10センチ以下の小さなヤマメや産卵直前のヤマメを大量に持ち帰ることも自由です(それが悪いとは思いません)。
サクラマスの子供だけがサクラマスになるのではなく、ヤマメとサクラマスは一緒に産卵行動を行うので、サクラマス保護を目的とするのであれば、サクラマスと同時にヤマメの個体数も重要になってくるはずです。
しかしヤマメの大量の捕獲は法律で制限せず、サクラマスの捕獲にだけ注目して「リリースしても、釣り針に掛けただけでも違法」とするのは、果たして水産資源保護の観点からどのような価値があるのでしょうか。
②限りなく広いグレーゾーン
規則で「サケ・マスを狙って採捕した場合は、リリースしても犯罪」と書かれていますが、問題になる点が2点あります。
採捕とは?
どこからどこまでが「採捕」になるのでしょうか。
「採捕」とは、「水産動植物を自らの支配下に置く行為」を指します。「支配下に置く行為」には、魚篭に入れる行為はもちろん、針に掛ける行為も含みます。
「北海道のフィシングルール」によると、サクラマスを釣り上げることはおろか、針に掛けるだけでも違法と書かれています。
では、国語辞典はどのように定義しているのでしょうか。小学館では「自然界の動植物をとること」大辞林では「(略)採取したり生け捕りにしたりすること。」と書かれており、
「北海道のフィシングルール」の「サクラマスを針にかけただけで採捕」という捉え方と辞書の意味である「生け捕り」とはかけ離れており、あまりに拡大解釈が過ぎるのでは無いでしょうか。
(自慢になりませんが、私は針にかかった状態の魚の80%をバラして逃がしています。)
「狙って(故意に)」とは?
では「狙って」「故意に」釣るとはどういうことでしょうか。
サクラマスの釣り方ですが、河川での釣りの対象であるニジマス、アメマス、イトウなどとほぼ同じような釣り方で釣れるようです。
実際私やその友人も、ニジマスやアメマスを狙っていて事故のようにサクラマスが釣れたことがあります。
従って、道具を見たときにサクラマスを狙っているのか、ニジマスを狙っているのかは誰にも判断がつかないと考えて良いと思います。
つまり、「狙って」という文言が入っている以上、誰もが言い逃れが出来る条文になってしまっているということです。
道具で狙っているかどうか判断出来ないとすれば、あとは場所と時期で絞り込むしか無いでしょう。素人の案ですが、サクラマスが釣れる河川と遡上する時期を指定して、その間は釣り禁止にするのはどうでしょうか(詳細は後ほど記載します)。
また、明らかに罪に問えるのはサクラマスを持ち帰った現場しかないということになりますが、斜里川などの一部河川を除けばほとんど見回りなども実施されていない様子なので、こっそり食べている人も跡を絶たないでしょう。
勝手に提言
「持ち帰ったらアウト、リリースしたらセーフ」案
現在の法律では違法の部分を広げすぎた結果、曖昧な部分まで拡大してしまっていると言えるのではないでしょうか。
その結果、違法な行為と法に則った行為との線引が曖昧になってしまい、誰もが信号無視を平気でする状況になっていると言えます。
であれば思い切って「その場でリリースしたらセーフ」「サケ・マスを持ち帰るorランディングした場所から移動させたら違法」など、「狙ったかどうか」からは切り離してルール設定をした方が良いのではないでしょうか?
ルアーやフライであればリリース後も95%程度は生き残るというデータがあり、水産資源保護と違法の線引の明確化には有効なのでは無いでしょうか。
「河川と時期を指定」案
もし「リリースしても犯罪」を前提として法整備をするのであれば、サクラマスが釣れる河川を明確に指定して、釣れる可能性が高い時期での釣り自体を禁止にするしか無いのでは無いでしょうか?
幸いにも北海道では河川での釣り人で収益を得ている漁協は少ないので(漁協にだけ配慮するという考え方も大いに疑問ですが)、不可能では無いのでは無いでしょうか。
そこまで厳しい措置を取れないのであれば、サクラマスが遡上する河川での釣りを有料にして、その収益を元に監視員を雇用し、摘発と吊し上げを繰り返すのも有効だと思います。
また同時に産卵期にあたる8~10月にヤマメを釣り禁止にすることや持ち帰りのサイズ制限も実施してはどうでしょうか。
以上が当サイトからの提言です。素人による勉強不足の戯言なので、皆様からのご意見をお待ちしております。
ちなみに福井の九頭竜川や岩手の追波川など、本州では遊漁券を支払って合法的に河川でサクラマス釣りが出来る河川があります。