2024年最初の渓流釣りは、昨年の解禁時にお座敷遊びで出オチ芸をさせられた忌まわしき熱海に向かいました。
今年最初の釣りでトラウトに出会えるだろうかとワクワクしてレンタカー屋に向かうと、衝撃的な髪型の方に鉢合わせしました。
学園祭の小道具よりもひどい作りです。
特に注目に値するのはデコのカツラに近い部分です。
もしここが完全なる不毛地帯なら、目の悪い人なら彼を「おデコが広い体質」と認めることでカツラを見逃してくれる可能性がありますが、彼は幸か不幸か、この部分にわずかに毛が生えてしまっているのです。そのため通常は毛が生えないはずのおデコから薄い胸毛のような毛が飛び出してしまっているため、
- おデコエリア
- 非常に薄い毛エリア
- 極端に毛が濃いエリア
の3つのパーツを持つ新人類として映ってしまうのです。つまりこのカツラの選択のせいで、髪の毛が薄いことを隠すというよりもむしろフィーチャーする革新的なスタイルになってしまっています。
恐らく初対面の誰もがチラチラと自分のデコを見ていることに気が付きながら、その目線の原因を考えることを封じてきた彼の精神の強靭さに感服する他ありません。
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神奈川県西部の無漁協河川へ
アクセス | 横浜市中区から1時間 静岡県静岡市から2時間弱 |
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遊漁券 | 無料 |
管轄漁協 | なし |
釣り可能期間 | 3月1日~10月14日 |
川に到着すると、降り注ぐスギ花粉を見て見ぬふりしながら水辺まで進みます。
この時期はまだ魚の活性も低いと思われるので、ゆっくり誘えるスプーンを使いたいと思います。今日のための万全の準備をしてきたルアーボックスを開いてみると・・・
スプーンが一個しか入っておらず、残りは大量に自宅に置いてきてしまったようです。自称几帳面な男らしく、ミノーばかりの詰め合わせを作ったのだと思いますが、それならなぜスプーンが一つだけ入っているのでしょうか。気持ち悪さをぬぐえませんがその不徹底に感謝し、スプーンを投げていきます。
数年前から漁協が無い川でトラウトを探し出すことに心血を注ぐことで在来種保護主義者から避難を浴びている私ですが、今回の川も漁協が管轄していない河川での鱒探しが目的です。
釣り人の中でも特殊な趣味になると思いますが、居るかわからない河川でヤマメやイワナを見つけたりしたときの感動は格別で、カメラで発見するのも楽しいですが、出来れば釣り上げることで魚の生息を確認したいものです。
しかし半年間をかけて丹念になまった釣り技術では釣る自信が湧かず、さっさとカメラを持ち出してしまうくせがこの日も顔を出してしまい、カメラを水中に沈めるとあっけなくイワナが映り込んでいました。
この映像だけでも6匹のイワナが確認できます。
ヤマメの印象が強いエリアにイワナが生息しているとは!感動と花粉で涙が出てきます。
でも・・・。映像ではなく、釣って見つけた方が嬉しかっただろうな・・・。なぜもう少し、釣りを頑張らなかったのかな。
2年くらい前に買っておいたビットコインの価格が急激に上がっているのは良いけれど、なんであんな小銭しか入れなかったのかな。3,000万円分買ったと言っていた彼は今頃ビットコインの資産だけで1億円か・・・。羨ましいな。取り返しがつかないような事故にでも遭えば良いな。
魚が居ることは確認できたのでルアーを投げてみると、何かが引っ張っています。
イワナでしょうか?
・・・枝でした。枝かよ、と思ってよく見てみると・・・。
枝であることは間違い無いのですが、刺さっていないのです。枝に針が刺さっていなくても、さらに引っかかるところが無くても、左右の均衡を保ったままでここまで無事に連れて来てしまうというのは、ニュートン力学的にはOKなのか?
おい、ニュートン。
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空中を見ると小さな虫が飛んでいるので、まだ時期が早いかなと思いながらも毛針を浮かべてみます。
半年ぶりのイワナは格別です。
今、この世で最も幸せな人類は私ではないでしょうか。
しかし世界でトラウトの発見に幸せを感じる人間などほとんど居ないでしょうし、きっと誰も、俺になんてなりたくは無いでしょう。でも俺は、勇気ある誰かになってビットコイン御殿を建てたかったぞ。
その後2匹のイワナを追加し、釣りを終わります。
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この日は熱海にある友人のご自宅で楽しい飲み会が開かれています。
皆それぞれに食べ物や飲み物を持ち込んでの参加ですが、私が持ち込んだ日本酒は見事というほか無いレベルで不味く、誰も2杯目に手を付けようとしません。
一方、宿主はウイスキーを大量に用意してくれました。昨年の秋にスコットランド北部にあるアイラ島まで出かけて買ってきたもののようで、わざとらしく「UK MARKET」と書かれたシールが貼られています。
そもそも私は正露丸のような匂いを発するアイラ系のウイスキーが好きではありません。UKスタンプなんて付けて偉そうに・・・と思いながらも試してみると・・・。
穏やかな薫香で、私が勝手にイメージしていたものよりかなりまろやかな味わいです。気がつくと値段のことなど気にせず、ガバガバと飲んでしまっています。
私は存じ上げませんでしたが、日本にどんぶらこやってきているアイラのウイスキーは極端に言えば出来の悪い粗悪品で、現地では出せないレベルのものを回してきているのだとか。
明確には忘れましたが品質が良い順番としては
- 作り手が自分で飲む
- アイラ島周辺に販売
- イギリス全土に販売
- ヨーロッパに販売
- アメリカに販売
- アフリカ&その他(中東、豪州、南米とか?)に販売
- 日本、中国、韓国に販売
という順で割り振っているそうです。アフリカと同格ではなく、我々のためにわざわざその下に追加でカテゴリを作って頂いておりました。つまり日本人はコーラ漬けの米兵はもちろん、アフリカ先輩すら手出ししない出来損ないを、中国人と悲しく分け合っているということです。
何なら一度樽からぶちまけて埃が入ったウイスキーを、謎の薬品で綺麗にして日本に出しているからあれほどの味に仕上がっているのかもしれません(冗談ですよ)。
彼らが味の分からない国民向けに瓶詰めした出来の悪い酒を、日本国民はさも大事そうに拝み倒して「好き嫌いが分かれるけど、ウイスキー好きならアイラを嗜まないと」てな感じで有難がっているのが「美しい国日本」の実体ということです。きっと僕らはアイラのウイスキーの味を頂いていたのではなく、先進国からもたらされた希少性を加えた情報として味わっていたのでしょう。
その後、野球という上意下達・気合と根性の象徴とも言えるスポーツを通じて日本国民を堕落させようとしている大谷翔平の悪口を言いながら夜は更けていきました。
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翌日は前日イワナを釣り上げたのとは別の河川を開拓します。漁協が無い川での鱒の捜索を始めて5年ほどが経過し、地図を見てそれを判断することにも慣れてきました。
この道は誰もしばらく通っていないのでしょう。道路に転がった石や木を避けながら、ガタガタの道をレンタカーで突き進み、ようやく道路が川を渡るところまで到達しました。
泥だらけのレンタカーを見ながら、店員さんの「あまりに汚れがひどい場合は追加費用を・・・」と言う言葉をかき消して橋の上から川を覗き込みます。
ここから悠々と泳ぎまわるヤマメが見えたら最高だなと橋の下を見下ろすと・・・
なんと、水が一滴も流れていませんでした。恐らく大雨が続けば川は出来上がるのでしょうが、通常時はただの谷だったようです。
地図で見ると堰堤がたくさん存在しているので水量が多い河川なのかなと思いましたが、シンプルに土木業界が「作りたいから作った」だけの模様です。
水が無い川にまで堰堤を作るとは、さすが土木立国です。だからこそ、ひっそりと生息しているヤマメやイワナが私を感動させてくれるとも言えるので、土木業界には感謝を申し上げたいと思います。