三重県から今田くん(仮)とアマゴ釣りとグルメを堪能するために高知にやってきました。
事前にマップで下調べして仕込んでおいた高知県の渓流に入ろうと準備をしていると、地元民と思われる爺さんが近づいてきました。彼はこの地域や川にも詳しいようで、土砂降りの雨の中で釣りをしようとしている我々をにこやかに話しかけてきました。
今は施設として活用されている川の隣の廃校の管理の仕事をしている彼は、子供の頃にこの廃校に通っていた模様。私が廃校やこの集落のことをあれこれ質問していると、嬉しくなったのか
「学校、見学していくか?」
と言い出しました。70年も生きて怖いものが無くなってくると、大雨にも構わず渓流釣りをしようとウェーダーを履いている人間に廃校見学を勧めることも出来るのでしょうか。軽い気持ちでちょっかいをかけてしまったことを悔いつつ、川の方に逃げ出そうとすると、この川で子供の頃から遊んでいたという彼が
「ここには、魚はおらんき」
と土佐弁で言い出しました。またお年寄りらしい構ってちゃんが出たのかと思いつつ、重要な情報が隠されているかもしれません。しかし嘘をついている可能性も踏まえて角度を変えながら質問を浴びせていきますが、彼はここにはアマゴだけでなくウグイすらも居ないことを確信しているような口ぶりです。
さらに聞きもしないのに、「アマゴを釣るならここではなく別のところが良い」と言い出したので、使い道は無いだろうと思いつつそのポイントをメモします。
「では、一応川を見てみますね」と伝えて川に入ります。
* * *
川に降り立つと、爺さんの話など一気に吹き飛んでしまうくらいの素晴らしい河川です。高低差があるので魚の隠れ家が多く、堆積岩特有のツルツルとした岩肌は、歩きにくさを無視すれば景観としても100点満点です。
ウキウキしながらルアーを投げて、カメラを沈めてを繰り返しますがどうにも魚の気配がありません。
水量も標高も十分な、この苔むした河川で魚が見つからないとは・・・。あのじいさん、本当のことを言ってくれてたのかも。わざわざ三重から高知まで来てくれた今田くんにいつまでも魚がいるのか居ないのかわからない河川で釣りをさせるわけにいかないという忖度も働き爺さんが教えてくれたポイントに移動します。
* * *
「そこは、大きいアマゴもおるき」
との言葉にルアーを通してみますが、期待していた魚の反応はありません。さらにカメラを沈めてみると、見渡す限りのアブラハヤが広がっていました。
ジジイ・・・。
大雨の中わざわざこんなところまで来てしまった・・・。きっと先程の河川にこそ大きなアマゴが居て、その情報を隠すために不毛なこの川の情報をつかませたな?高知の中でも梼原方面は文化的な深さを持つ地域と聞いていましたが、なかなかやるもんやな・・・。
などと考えていると、上流で今田君がなにやら盛り上がっています。
しかし本当にアマゴでしょうか、過去には20センチに近いようなアブラハヤも見たことがあるし、油断はなりません。
今日こそ俺も釣ってみたいと前のめりでルアーを投げていると、白い背中の魚がルアーをのそのそと追いかけてきて食いつきました。
釣り上げたのは待ち望んだアマゴでしたが、写真を見てみると典型的な水族館で見るアマゴの形をしています。尾びれの下は擦り切れ、豊富な餌に恵まれていたのか美味しそうにぷっくり太っています。
恐らく背中が白く見えたのは自然河川で生きているアマゴのように擬態が上手でなく、色が浮いて見えたのでしょう。
あのじいさん、本物だったのかも・・・。しかも私の趣味と実益まで見抜いているかのように「ここは遊漁券がいらない河川」だと言ってた。
ということで釣り場マップとして販売もできてしまうというスグレモノになりました。
その後も綺麗なアマゴを友人が釣り上げました。サイズは小さいけど、ヒレの美しさが素晴らしい。正直、羨ましい・・・。
それぞれとりあえず釣果を得たことに満足し、河川を立ち去ります。
この日の釣りは映像でもまとめています↓
高知グルメに心を踊らせながら車を走らせていると、誰かが見送ってくれています。
・・・。
僻地に行くと地域に偏り無くこのようなホラー人形に出くわしますが、田舎の方々はどういう心理なのでしょうか・・・。
気を取り直して、まずは黒尊という高知でも名高い魚料理の店に入ります。
なんとしっとりとした鯛でしょうか。上から脂でも塗ったのかと思うような照りとねっとり感です。(例えが貧弱で恐縮)
左に映っているブリには葉ニンニクが乗せられており、高知の伝統的な調味料なのだとか。なぜこの食べ方が全国に普及していないのか、不思議なくらいです。
気になるのは接客が昭和的なところで、来店するときには「必ず空腹で来て下さい」と念押しされる店です。さらに食事の合間にスマホなど触っていると「早よ食べぇ!」と客を小突くという、繊細な味わいに似合わない獰猛さを併せ持っています。斜め向かいに座った、恐らくキャバクラの同伴と思われる男女が食事の合間におしゃべりを楽しんでいたところ、大将から
「そこ、声が高いよ!」
と注意されていました。まさか声の大きさではなくキーの高さで注意されるお店があるとは・・・。皆様、このお店に伺う時には必ず空腹で、かつ音域だけは外さないように注意して下さい。
その後は高知市内の赤線地帯を散策します。
高知市街地にも赤線地帯の名残があると聞いたので歩いてみます。
赤線廃墟好きにはたまらない寂れ方です。嬢の横には彼女たちに似ている(?)当時の一流タレントの名前が書き連ねられており、倫理観の欠片もありません。
風俗店は既に廃業しているところがほとんどですが、中には現役のお店も有るようです。しかしよく見てみると・・・
ここは「Super matt heallth」という文字が踊る現役の風俗店で、なんと西田マンションの1階に入っています。
風俗店の向かいにマンションがあるところは見たことがありますが、マンションの中に風俗店が併設されているのは初めて見ました。例えばこのマンションに住人が引っ越して来た時には風俗店に菓子折りでも持って挨拶に行くのでしょうか。もし彼氏彼女の家に遊びに行った時、その1階に風俗店が入っている場合はどのようなコメントを出せば正解なのか?
最初から風俗店を入れることを想定してマンションを建てたのか、空きテナントに風俗店が入ったのか(だとすれば住民から苦情は無かったのか)など、その歴史にも大いに興味が湧きます。
さらに街を散策していると、さらに奇妙な組み合わせを見せるマンションを発見しました。
これほど酒樽が積み上がっている景色は神社でしか見たことがありませんでしたが、まさかマンションの一角で拝めるとは思いませんでした。
高知には不動産オーナーが己の欲求を隠すこと無く見せつけることが良しとされる気風が存在しているのでしょうか。
* * *
2日目は高知市の漁協が管轄しているポイントでの釣りです。
鏡川源流憩いの広場の上流
放流されているポイントでアマゴを釣るなどいとたやすきこと・・・などと油断していると痛い目に遭うことをよく知っているので期待せずに川に入ります。
しかし先に竿を出している友人がルアーを投げるたびにアマゴらしき魚がチェイスしてきます。釣れない人生を長くやりすぎて心配性になっておりますが、ここでは杞憂だったようです。
今日は何匹釣れるかなと私もルアーを投げてみると、先ほどまでのアマゴの濃い魚影が幻かのように、パタリと反応がなくなりました。私という渓流釣り業界の大物を前に、メジャーリーグのサイレントトリートメントのマネごとでしょうか?
ということはこの後盛大に祝ってくれるのだろうと思いきや、永い永いサイレント期間が続きます。それから1時間ほど経過した時、ようやく同行者がアマゴを釣り上げました。
久々に見る、放流魚らしい放流魚です。死んだような目に汚れた肌はまるで自分自身を見ているようで嫌悪感を覚えますが、それ以上に余裕を見せながら全く魚を釣り上げられない自分自身の方に苛立ちを覚えます。
友「毛針で釣ってみたら?」
渓流釣り経験はわずかに数回の友人からも私の下手なルアーフィッシングをたしなめられますが、頑として動きません。人間が隠れる場所が少ないこのような河川は、私のチョウチン毛針釣りには不向きなのです。
友「ルアーマンとしてのプライドか・・・」
さらには小さいプライドにこだわっていることもバレていました。塩を塗りたくるのをやめたまえ・・・。
しかし私の方はルアーを投げるたびに
「毛針なら釣れるかも」
という考えに傾いていき、こだわったプライドはわずか5分で崩壊し、毛針竿に持ち替えます。友人が見ていないスキに毛針竿に持ち替えたのは、彼に指摘されたことがきっかけで変更したとバレたくなかったからです。
その後も友人はルアーで釣果を重ねていきますが、私は毛針に変えてもルアーと変わらず全く釣れません。
釣れないと不機嫌を活火山のように爆発させる九州代表の武藤くんのようにはなるまいと思いつつ、理性が剥がれ落ちていくちていく自分にさらに焦りが増します。そろそろ更年期なのでしょうか。
その後ようやくアマゴが釣れましたが、絵に書いたような8センチで写真を撮影する気力も湧きません。私が小さいアマゴでウジウジしている間も今田くんは釣果を重ねていた気がしますが、白目だったので情報が脳に届いていません。
育ち、資産、収入、見た目など全ての能力で劣っていても「川の前に出れば同じ人間」という私の格言(?)はふみにじられ、川にも地上の格差は持ち込まれ得るということを確認し、高知を後にしました。


















